02-22 魔物侵攻
デル・ドゥンクレ・ヴァルト 闇の森、魔物が多い
オッフェンブリュッケン 中心の町、アイヒェンドルフの館がある
デル・ドゥンクレ・ヴァルトでは伐採作業が継続して行われていた。約百八十五ヘクタールほど伐採され、東京ドーム約三十九.六個分の広さになる。
夕暮れまであと二時間くらいで終業の時間が近づいていた。木こりよりも森の奥に進んで警戒していた兵士は、森の様子に異変を感じる。鳥が一斉に飛び立ち、鹿やイノシシ、兎などの動物がこちらに向かって走ってくるのが見える。
「なんだ? 動物がこっちに向かって走ってくるなんて」
「おかしいな」
「そういえば…、逃げるぞ! 魔物だ! 前と同じだろ」
兵士の一人が前回の狼襲来の状況に似ていると感じ取り、直ぐに逃げるように指示を出した。兵士たちは大声で叫びながら、木こりや兵士たちに警告を行い全員砦に向かって一目散に逃げだす。
石壁の上で歩哨をしている兵士が砦に向かって走ってくる動物達や兵士や木こりを見て、何事かと思い始めた。
「なお、おい、あれ何だ?」
「どうみても、砦に避難しようとしているだろ! 鐘を鳴らせ!」
慌てて警戒の鐘をカンカンと鳴らし続ける。その鳴らす音を聞いて、砦の内側でも同様にカンカンという音が響始めた。砦や村の中では人が慌ただしく動き、伝令の兵士が馬に乗り石壁に向かって走りだした。石壁にたどり着いた伝令は石壁の歩廊まで登り、状況を確認する。
「敵か!? 何だ!」
「分からん! まだ見えてないが、木こりや兵達が逃げてこちらに戻ってきている」
歩哨と伝令が石壁に向かって走ってくる兵士達に視線を移すと逃げている兵士達が何やら叫んでいるのが聞こえてきた。
「魔物が! 魔物が来るかも!」
息を切らしながらも、魔物の襲撃に警戒を促す。
「来るかもって何だよ」
歩哨の兵士は慌てたことに少し苛立った。伝令は壁を降りて逃げ帰ってきた兵士や木こりに状況を聞きに向かう。そこで動物たちの異常な行動から前回の狼襲撃を関連付けて急いで戻ってきた旨の報告を受けた。伝令は馬に乗って砦にいる守備隊長の所に向かう。
「なるほど状況は分かった。念のため非常招集をかける。敵が見えたらオッフェンブリュッケンや隣村に伝令を出すので待機させておけ」
守備隊長は村人達にも防衛に参加するよう指示をだしたため、村の倉庫から火縄銃を取り出し、受け取った者は石壁に向かって走り出す。村人達も普段から能力が向上する装備を装着しているが、警戒の鐘が鳴ったことで皆フル装備で防御を固めていた。
石壁では魔物がいつ来ても良いように大砲の近くに火薬やぶどう弾、投擲用の槍や矢束などを置いていく。走ってきた村人達は、兵士の指示に従って狭間の近くで待機する。
目の良い兵士が何かを見つける。距離にして二.五キロほど離れているが、何かが動いているのが見えた。
「魔物だ! 何かは遠すぎて分からん。数も分からん! ただ物凄く多そう!」
少しずつ近づいて来ているのが分かる。最初は点のようにしか見えなかったが、だんだんと魔物の種類などが判別できるようになってきた。
「オークとゴブリン、灰色狼、スパイダーが居る。なんで一緒にいるんだ? あっ茶色狼も居るぞ。数は分からん、見えている範囲だとざっくり千以上だ!」
「複数の魔物による攻撃だと? でも数が千ならなんとかなるんじゃないか? 前回よりも全然少ない」
「何言っているんだ、マティアス様は居ないんだぞ! 油断したらヤバいことになる」
さらにだんだんと近づいてきて、数も大体分かるようになってきた。
「数え切れない。でも千以上、五千未満くらい?」
「いや三千程度じゃないか?」
「よし分かった。三千~五千の魔物の大群に襲撃を受けている。種類はオーク、ゴブリン、ラージスパイダー、灰色狼、茶色狼だ。これで伝令をだせ!
早ければ三日で援軍がくるぞ! みんなそれまで持ちこたえるぞ。俺達は死線をくぐり抜けたんだ。素晴らしい装備も揃っている勝てるぞ!」
守備隊長は指示をだし、守備兵の士気を鼓舞する。
「火縄銃に弾を込めろ! ぶどう弾も発射準備しろ!」
「まだ撃つなよ! 距離が二百mくらいに近づいてからだ」
兵士たちは村人達に指示を出し、自分たちも準備を行う。オークは伐採後乾燥させていた木材を脇に抱えているのが見える。
魔物との距離はまだ一キロ以上離れている、魔物は歩いてこちらに向かってくる。そのため近づくまでの時間が異常に長く、五分が十分にも二十分にも感じていた。所々に設けている距離を示す棒の側を魔物たちが通り過ぎた。
「三百mを切った。ぶどう弾発射しろ! 撃て!」
石壁の上や側面の狭間から、二十門の大砲が轟音を出してぶどう弾を発射した。発射されたぶどう弾は直ぐに散らばって、百~三百mのあたりに広がって着弾する。多くの魔物に当たり負傷するものも出るが、それがきっかけで一斉に石壁に向かって突進してきた。
「次弾を込めろ。準備できたら任意に撃て!」
「火縄銃狙え! 撃て! 撃て!」
兵士の射撃命令が下り、村人や兵士達が一斉に火縄銃を放つ。五十を超える弾が放たれたが、当たったのは十匹程度であった。まだ距離が遠かったこと以前と比べれば密集しておらず、しかも動いているため当てるのは難しかった。
オーク達は木材を石壁に立てかける。その木材を伝って別のオークが登っていく。ラージスパイダーは直接石壁の側面を上に向かって登る。
兵士達は立てかけられた木材を横に倒して、オークたちが上がってこれないようにする。しかし、石壁に近づいたゴブリン達から一斉に魔法攻撃が行われた。
「うああ」
「燃える! 誰か消してくれ!」
「やれれた」
「マジかよ! 魔法を使ってくるぞ」
兵士たちが魔法攻撃によって怯んだ隙を付いて、ラージスパイダーが壁の上に到達し始めた。兵士や村人達とスパイダーの間で接近戦が開始された。
「おりゃー!」
兵士が斬りかかるとラージスパイダーは真っ二つに切り裂かれる。個々の兵士は強く、かつ、攻撃力と剣術LVが高くなる装備をしており、ラージスパイダー程度では相手にならない。しかし数が圧倒的に多すぎて、一匹を始末している間に他のラージスパイダーから攻撃を受けたり、糸を吐いて動きが阻害されたりし始める。
「数が多すぎる!」
「くそ!」
「煙玉を下に落とせ!」
歩廊の上は混戦となり、まとまった守備は出来ず、個々の戦いとなっていた。
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