02-18 魔族
デル・ドゥンクレ・ヴァルト 闇の森
~狼の魔物侵攻の一週間程前、2ー15の話の四か月以上前~
「あったぞ、ギギギ」
「やっとか、ギギギ」
会話をしている先頭の二匹は全身真っ黒な体に背中には小さな羽が生えており、パタパタと羽ばたいている。頭の上には小さな角、瞳は赤色、口からは小さな牙が生えていた。この生き物はインプと呼ばれており下級の魔族である。
鬱蒼とした森の中で砦のような建物を見つけその中にインプ達が入っていった。
「死んでる」
「なんてことだ」
「ギギギ」
魔族の白骨化した死体が幾つも見つかった。デル・ドゥンクレ・ヴァルトのほぼ中心にその砦があり、そこは人間に対して破壊活動をするための魔族の拠点であった。
「魔物生成装置の魔素が満タンになっている」
「消費しないと無駄になるぞ」
「勝手に使ったらまずいだろ」
「国に帰って報告してからまたここに戻るとしても半年後になるぞ」
「その間に溜まる魔素が無駄になる」
インプ達は魔素の取り扱いに対して議論をし始めた。魔物は繁殖によって増えるか、あるいは魔素が溜まると魔物が発生する。本来は自然に発生するものであるが、魔族は魔素を集めて任意の魔物を作り出す装置を開発していた。デル・ドゥンクレ・ヴァルトで育つ木々には魔素を多く排出する性質があるため、ここに魔素を収集して魔物に変換する装置を配備していた。
どのような理由かは不明であるが、制御していた魔族の者たちは全員死んでいたため魔素が溜まったまま装置が放置されていた。
「よし魔物を生み出すぞ」
「勝手にそんな事をしていいのか?」
「いや、このままだと勿体ない、使えばいい」
「判断を仰ぐにしても半年も放置したら、結局また魔素満タンになるくらいまで溜まるんじゃ? だったら使ったほうが良い」
この隊を指揮していたインプの一匹が管理用コンソールに手をかざすと装置が反応した。
「新しい管理者を登録。権限LVは1。ゴブリンまたは灰色狼が生成可能」
「じゃあ全て灰色狼で生成しろ」
「了解」
「全て狼で良かったのか? ゴブリンも居たほうがいいのではないか?」
「ゴブリンと狼が共喰いとかしたらどうするんだ。速度も違うし制御するなら単一のほうが楽だ」
狼が十匹生まれ、直ぐにまた十匹生まれる。そしてそれがどんどんと繰り返される。
「おいこれどうするんだ。直ぐにここは一杯になっちまうぞ」
「狼ども、北東に進め! 五キロくらい進んだら全員が揃うまで待機。全員揃ったら北東に進め! 人間の居住するところを見つけたらそこに侵攻しろ。そこの人間を倒し終わったら更に北東に進め。全滅するまで繰り返せ」
指揮官インプが指示を出すと生まれてきた狼達は北東に向かって進み始めた。定期的に生まれてくる狼達が出るたびに同様の指示を出すので、対応するインプ達も大変な作業であった。
休憩も挟みながら四日間掛けて溜まっていた全ての魔素を使い切って魔物の生産は終わった。
「俺はここで魔物を生成し続けるから、お前とお前は俺と残れ。他の者は国に帰って指示を仰げ」
インプ達は国に帰る組と残留組に別れた。国に帰る組は三か月ほど掛けて自国に向かった。
「本当に全部狼にして良かったのか?」
残留組の一匹が指揮官インプに語りかける。
「戦いは数が多いほうが有利だ。十匹の狼に十回襲われるよりも、百匹の狼に一回に襲われたほうが相手に被害を与える。もしかしたら大半の人間は死んでしまうかも知れんな。そしたら大手柄だ。
新たな指示が来るまでに魔素は溜まるだろうし、あとは魔素が溜まるまでここで待機していれば良い。仮にまた魔素が溜まったら新たな魔物を生み出す。楽な仕事だ。行って帰るなんて面倒だからな」
インプ達は直ぐに溜まるであろうと楽観視していたが、魔素が溜まる速度は想定よりも遥かに遅く、満タンになるまでは約三年程かかる。仕様、性能を把握していなかったため全ての魔素を使ってしまった。
ギギギ。毎回付けてたら冗長になりすぎるギギギ。
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