02-15 一家団らん
父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)
姓アイヒェンドルフ
一家五人揃って初めての夕飯となった。テーブルの上にはハム、ソーセージ、鶏の香草焼き、ピタパン、ザワークラウト、コンソメスープ、ワイン、ミルクなどが並んでいる。
「なんでこんなに豪華なのお祭りでも無いのに」
ニコラスは今まで食べたことのないほどのメニューに驚きを隠せなかった。
「兄さん、これほとんどマティーが出したんだよ。凄いよね」
「はっ? 何を言っているんだい。こんなに小さな子が全部作ったとでも?」
ニコラスはミアの言っていることが理解出来なかった。マティアスと目があうと、マティアスは何もないところからパウンドケーキを出して見せた。
「え? 一体どこから?」
「ねっ凄いでしょマティーって」
「これは食後のデザートにするので一旦しまいますね。こうやって出したんです。ちなみにこのパウンドケーキには疲労度をー10する効果があるから、鶏の香草焼きにも同じような効果があるよ、ピタパンには疲労度回復効果は無いけど行動力が若干回復、じゃなくて魔力が若干回復するよ。長旅疲れているでしょ」
「すッ凄いなマティーは、ははは」
ニコラスは驚き過ぎて乾いた笑いを出すのが精一杯であった。そもそも疲労度-10の効果ってなんだよ魔力が回復するとか意味不明、とも思っていた。
食事はどれも美味しく、今まで食べたものの中でも最上といえるものばかりであった。そしてデザートを食べる頃になってマティアスは切り出した。
「みんな聞いて欲しい。先日の魔物討伐で自分はかなり強くなったみたい。そこで本格的に修行を開始したいんだ。まだまだ弱い存在だけど、もっともっと強くなって最終的には魔王を討伐したいんだ」
「マティーそんなに慌てなくても良いんじゃないのか?」
「そうよマティーまだ一歳じゃない。そんな小さな体で。もっと大きくなってからでも」
「マティー危ないよ! 魔王なんてお伽噺の存在でしょ? いつまでもここにいなよ」
ティーモ、ハンナ、ミアはそれぞれ反対の意見を出したが、ニコラスはなんと言って良いのか分からず、そもそも魔王討伐なんて出来るのか、理解が追いつかなかった。
「分かっている、直ぐに討伐に向かう訳じゃないんだ。まずは剣術を学んだりり、魔物を倒して経験を積みたいんだ。護衛の兵士達と訓練をさせて欲しい」
マティーは訓練を始めることを懇願していた。
ニコラスはこんな小さな子が魔王討伐のために自らを鍛えたいと申し出ていることや護衛の兵士が居ることも驚いてた。それほどマティーは重要だと思われているという事の現れだからだ。
「分かった。まずは訓練を認めよう。魔物討伐は訓練の成果を見てからになる」
ティーモはよく考えたうえで決断をした。みなもティーモが決断した事であれば従うしか無く、マティアスの訓練を認めることとなった。
「それと魔王討伐のために出立するなら少なくても成人、十五歳からになってからだ」
「分かったよ。それまでは自分を高める事に注力する。ただ、自分がこの地を安心して離れられるようにもっとこの地域を発展させたい。必要なのは住民、そのためにももっと人が必要だと思う」
「マティー人は直ぐには増えないぞ」
「まずは子供を産まないと、そしてその子が更に成人して多くの人を産まないと増えないのは分かるよ。時間が掛かるからこそ今から始めないと」
「子供を生むというのは簡単な話ではないんだ。母体にもリスクがあるし、そもそも子供を育てるためには多くの食糧やお金が必要になるんだ。また大きくなっても就ける仕事が必要だ」
「母体のリスクについては、治癒魔法と傷薬を使って欲しい。食糧は僕がいる間は毎日百樽を超える食糧を出すことが出来るけど、それだと僕がこの地に居続ける必要が出てくるから農地を増やしたい。それと僕が出した小麦や大麦などがこの地で育つのか試して欲しい。味が良いし他領に売り込めばお金になるかも。同じ作付面積でも価値が高くなるでしょ。
お金は…例えば税金を下げたらどうだろう、成人したら人頭税を取っているよね? 成人してから何年間は人頭税は取らない、子どもの数に応じて大人の人頭税を減税する。そしたら子供を増やす人が増えるんじゃないかな。
仕事は開拓や兵士になって欲しい、森を開拓すれば魔物の数が減って、人の数が増える。だからこの国でも東の地域を開拓しているんでしょ? それを西の地域でもやりたいんだ」
「うーん、税金の一部は国に納める必要があるんだ。いまは免除してもらって無税だけど一生じゃない。十年は人頭税を徴収しなくても良いが、それ以降の人頭税は俺等が代わりに支払う事になるぞ」
「払えばいいと思う」
マティアスは十kgの金塊と銀塊を取り出して机の上に置いた。
「すごい、これ本物の金と銀なのか? でもマティアスがいる間は良いけど、マティアスが居なくなったら支払えなくなるぞ」
「僕が不慮の事故で死んでしまう事に備えて、これと同じ物を一万個ほど保管しよう。そしたら何百年分くらいの支払いに使えるでしょ。将来的に途中で方針を変えるにしてもそれくらいの余裕代があれば何とかなるよね」
「治癒魔法を使えるものは少ないぞ。一村で一人くらいだ」
「今でも出産時には立ち会っているんでしょ? でも足りないなら増やそう。先日の戦闘で何人も魔法使いが増えたし鍛えれば魔法は使えるようになる。魔法が使えれば更に色々出来ることが増えるし」
「魔物と戦うのは危険が伴うんだ。全員が同じ様に戦えるわけではないぞ」
「火縄銃があれば遠くから戦えるし、村の塀の裏からでも攻撃出来るんだから、魔物が来たらラッキーだと思って戦ってもらう。強い人が増えたらその人に弱い人をサポートしてもらえば良い」
「仕事はどうするんだ、開拓と兵士はあまり人気がある職業ではないぞ」
「でも食べるためには働く必要があるんでしょ? 兵士や開拓民しか仕事がなければそれに就く人も多くなるんじゃない? なんで人気がないの? 危険だから? メリットが少ないから? じゃあ危険を減らす方針を取ろうよ、僕の出す防具や武具には守備力や攻撃力をブーストする効果があるからより安全になる。村人全員に支給したっていい。
現行の村では人が多くなりすぎて住む場所が足りなくなるんだから、自然と開拓に向かうしか無くなると思うけど、それはそれとして開拓中は無税で、成功したら減税を数年間するとかやりたくなるような施策をすればいいと思う。
もし就職の不安があるなら人頭税免除の発表と一緒に伝えたら良いと思う。それを聞いて子供を増やしたく無い人は増やさないと思うし。
それに人が増えれば必要な物が増えるでしょ? 今までは第二次産業は少なかったと思うけど需要が増えればそれに伴って増えると思うよ」
「人の気持ちはそう簡単に効率だけで考えるものではないぞ」
「父さん、僕たちの役割は何? 方針を定めて民衆を導くことじゃないの? より良い生活が行えるように考えて検討して、実践して、問題があるなら是正して、それを繰り返しながら少しでも良い環境を作り出すこと、皆が飢えずに身の危険なく生活出来ることだと思っている。
魔物の優位が続くから人口も増えないし発展が阻害されている。僕がいる間なら発展にブーストが掛けられる。確かに効率だけを考えたら駄目かもしれないけど、僕たちが考えている未来も共有して共感出来る人が増えたら子供生んでくれる人も増えると思う。
慎重論は大事だと思うけど僕は問題があるなら問題を解決するための案を考えたい」
「そうだな、マティーの言う通りなのかも知れない。明日副官も含めて方針を練ろう」
ティーモは腹をくくり、人口を増やす方針に向けて動き出すことにした。
「(一体僕は何を見ているんだ? これが一歳の子どもの考えることなのか? 神様から使命を与えられた人間ってこんな感じになるのか…)」
ニコラスはマティアスに対して得体が知れないと気味悪い気持ちをいだいていた。
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