02-14 王都04
父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)
姓アイヒェンドルフ
ベシュッツァー 砦のある村の名前
ティーモは王立学院に向かっていた。ニコラスは学習を終えて今日からは自領でティーモの手伝いをすることになる。例年帰省や卒業の時期であるため、同様に自領に帰宅する者が多かった。
学院につくと既に数台の馬車が迎えに来ており、荷物の運び込みなどを行っていた。そんななかニコラスの荷物は両手の鞄と背嚢、木箱一つのみで、他と比較するとかなり少ない量であった。
「久しぶりだな、元気だったか?」
ティーモはニコラスに向かって歩きながら話しかけた。
「はい父さん。会いたかった。凄い活躍ですね。話を聞かせて下さい! みんなに話をせがまれていたんだけど全然知らなくて困っていんだんですよ」
ニコラスは鞄を置いてティーモに抱きついた。ティーモも優しく抱き返す。
「おい、あれってもしかしてアイヒェンドルフ卿じゃない?」
「ニコラスが抱きついているんだからそうだろ、まじか自慢しよう」
「どこどこ? 本当だすげー」
ティーモたちにも聞こえる距離であったため、ティーモは軽く手を降って応えた。
「いつもニコラスに良くしてくれてありがとう! お世話になったね。今後ともニコラスをよろしく頼む!」
「「「「おおおお」」」」
「はい」
「ニコラスまたな!」
「頼まれちゃった、おれ頼まれちゃったよ」
子供たちは大興奮し、場が一気に湧いた。皆家に帰ったらアイヒェンドルフに会ったことを自慢することになるであろう。
護衛の兵士と共に荷物を馬車に積み込み、カウフマンの店に向かった。
カウフマンの店では矢千本を調達し馬車に積み込んだが、もう一台馬車が加わった事にニコラスは疑問を抱いた。
「ねえ父さん、後ろの馬車も家のなの?」
「ああ、王様から褒美として貰った」
「凄いね! 結構色々積まれているみたいだけど何が積んであるの?」
店の近くには褒美として授与された馬と荷馬車が止めてあり、矢六千本、絵、花瓶、絨毯、酒なども積み込まれていた。
ニコラスとティーモは他愛もない会話を続けながら帰路についた。一年ぶりであったので普段の学院生活や王都での日常を話したが、やっぱり聞きたいのは魔物討伐の話しであった。
「…、この件は誰にも話してはいけない内容がある。その秘密を守れるなら詳細に話そう」
「えっ? なに父さん、急にそんなにかしこまって怖いよ」
「それほど重要なことなんだ。家に着く前には伝えるつもりであったが、秘密を守って欲しい。良いか?」
「分かったよ、秘密を守る」
「では話そう。狼の魔物が三十万匹攻めてきた。丁度俺とマティーがベシュッツァーに滞在しているときに起きたんだ」
「マティーは大丈夫だったの? 怖かっただろうに」
「問題ない。魔物討伐にはマティーの力が大いに役立った。というかマティーなしでは砦はもちろん、領内は全滅していたかも知れん」
「は? 何を言っているの父さん。マティーは一歳でしょ? そんな幼児に何が出来るっていうのさ」
「マティーは生まれる前に神様に会っていたんだ。そして魔王討伐をするための使命を与えられていた。そのために特別な技能も与えられていたんだ」
「神様? 魔王? 技能? 何を言っているの?」
「理解出来ないのは分かる。家についたらその技能を見せよう。事を公にしないのは物凄い力であるため、王家に目をつけられて国に連れ去られてしまうことを危惧しているんだ」
ティーモはマティアスの能力や活躍を淡々と伝えていく。ニコラスの頭では理解出来ない事象が幾つも説明されて、話の途中で何度も事実確認を繰り返すが、返ってくるのはそれらが全て真実という内容であった。
「一体マティーって何者なの?」
「俺等の家族であり、お前の弟だ。ただ特別な力を授けられており、今後無事に成長すれば、この国を出て魔王を討伐に向かうかも知れんな」
「…信じられないよ。そんな話し」
ニコラスはあまりにも突拍子もない話を受け入れられず、悶々としていた。やっと父さんの英雄譚を聞けるかと楽しみに思っていたのに、実際の英雄は一歳のマティーだったと聞いて平静では居られなかった。
八日後、ティーモ一行は無事に館に帰宅した。
「おかえりなさい。大きくなって」
「ただいま母さん」
三年ぶりの再会に二人とも涙が堪えなくなっていた。しっかりとした抱擁がしばらく続いた。
「兄さんおかえり」
「ただいまミア。見ない間に大きくなったね」
ニコラスとミアもしっかりと抱き合った。その後ろではティーモとハンナも抱擁の挨拶をしている。
「おかえりなさい、はじめましてマティアスです」
「…。んん、ああ、ただいま。はじめまして兄のニコラスだ。よろしく」
「なんでそんなにたどたどしいのよ兄さん」
ニコラスとマティーは初対面であり、嬉しさのあまりに抱擁するようなことはなかった。ミアに言われて、はっと我に返り、やさしくマティアスの頭を撫でた。マティアスも応えてニコラスに抱きついた。ただニコラスはマティアスを受けいられるかどうか不安があった。
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