02-13 王都03
父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)
姓アイヒェンドルフ
フランク王国第三王子タビー
謁見の間には約百五十人が並んでいた。五十人を超える貴族と、文官武官護衛の兵士である。中央は通り道して開けておりその道をティーモがゆっくりと王の前まで進み王の前で跪いた。
「アイヒェンドルフよ、先日の狼の魔物討伐での働き、まことに見事であった。国への侵入を許せば被害は計り知れないほどの脅威であった。それを寡兵を持って討伐成功せしめたこと、まさに王国貴族の模範となる働きであった。その功績に対し子爵に進爵する。また合わせて金貨千枚及び馬四頭をはじめ褒美の品を与える」
「ありがたき幸せ」
ティーモは子爵となり、参加者から盛大な拍手で祝福された。立場は子爵になったが他の子爵の規模と比較すると圧倒的に所領が少なかった。約二十分の一程度しかないため名ばかり子爵となる。
なお金貨千枚はアイヒェンドルフ領の一年分の税収にあたるため、ティーモとしては大変ありがたかった。
その後忘年会を兼ねた晩餐会が開かれた。ダンスなどは無く、ただただ食事と歓談を目的している。一人毎に用意された食事以外にも色々な料理が用意されており、それぞれ自分で好きな料理と酒を取って割り当てられた席で食べる。肉も一口大に切り分けられているので基本手掴みである。
ティーモの席には入れ替わり立ち替わり多くの貴族が挨拶に回って来た。身分の上下はあるものの、皆英雄であるティーモと懇意にしたいという思いがあった。
「アイヒェンドルフ卿、子爵への進爵おめでとう。これからは気軽に話せなくなってしまうな」
アイヒェンドルフ領の隣にあるウェーバー男爵が挨拶に回ってきた。
「おおウェーバー卿ありがとう。いやいや今まで通りでよろしく頼む、まだまだ貴族になったばかりで色々と教えてもらわなければ。それと先日は矢と綿生地ありがとう助かるよ」
「こちらこそだよ、お礼の意味も込めて渡したのに魔石や毛皮までいただいてしまって。でも此度の件本当に助かった。もし狼の大群が攻めてきたら、幾つかの村は滅んでいたかも知れぬ。また矢が用意出来たら持っていくから」
ウェーバー男爵以外にも周辺の貴族からは矢と特産品をアイヒェンドルフに献上していた。魔石や毛皮を返礼したが、ただ貰った特産品をそのまま他領に転売するのも気が引けるので、一部を自領の村々で領民や兵士に配布した。それにより生活の質が若干向上していた。
少し離れた席では第一王子に挨拶するための行列が出来ていた。
「エドワード様、開拓の手際まことに感服致します」
「がははは。まあ当然の結果だよ」
エドワード王子に取り入ろうと多くの貴族がおべっかをつかっていた。
「ランハート様の開拓と比較しても数倍以上の成果ですよね」
第二王子のランハートとの差を明確に伝えて媚を売るものもいた。実際にランハートが主導して東南の地域よりも、エドワードが主導している東北の方が数倍開拓が進んでいた。
それを少し離れた席で苦々しく見ているのは第二王子派閥の貴族達であった。
「すんなり開拓して当然だろ。こっちは沼地や湿地帯を割り当てられて、木を切れば開発出来るところとは環境が違うんだからな」
「そういうな、国として開拓が進むのは良いことだし、第一王子が優秀であることも良いことなのだからお前らも第一王子を褒めてこい」
ランハートは兄を慕っており軋轢を生みたくなかった。文句を言っている自身の派閥のメンバーにも第一王子に従うように事ある毎に伝えている。
自分が開拓に困難な場所を割り当てられても不満を漏らすことはせず、黙々と少しずつではあるが開拓を進めている。まずは水の流れを制限するために治水工事を行い、沼地や湿地帯に流れ込む水の量を減らすことから着手しており、五年程かけてやっと水の流れを制限することに成功している。
また沼地にはリザードマンの繁殖地になっていたが、水の流れ込みが減少したことで繁殖に制限がかかると見込んでいた。ランハートは数年経過すれば更に開拓しやい環境になると確信していた。
補給計画の格子もランハート自身が行い、物資の廃棄量はエドワードの軍よりも少なくなっていた。多くの人員が移動すればどうしても余裕を持って物資を確保するため、物資の廃棄は大なり小なり当然発生する。食物の総量が少ないこの国では食べ物を大事に扱うランハートの方が評価が高くなるのは自然な流れであった。
水辺の魔物は食糧として向いている物も多く、ワニ、ネズミ、ウナギ、どじょう、なまず、などは良く食べられていた事も補給物資の余裕を少なく出来た要因となっていた。
ランハートの派閥にいる者達はランハートの方が優秀であり、かつ人格者であるため、ランハートが国を収めたほうがより良い国になると考えていた。ランハート自身は国を継ぐつもりはなく、エドワードを支えて行こうと昔から決めていた。
ただランハートは兵士達からも人気があった。開拓は既に六年経過しているが、ランハートは開拓の兵と補給の兵を輪番で回して、定期的に故郷に帰れるように配慮していた。逆にエドワードの兵士達は殆ど故郷に帰れていなかった。そのためエドワードの兵士達はランハートの兵士たちの待遇を聞いてエドワードに対して不満を持つようになった。
その対策のために後からエドワードも兵士の配置転換のローテーションを組むようになったが、結果開拓の速度が若干遅くなった。余計なことを計画したランハートに対して不満を持っていた。
また沼地や湿地帯ではスライムが多く繁殖しており、その新しい活用法がランハートの陣営で確立した事で王の中でランハート評価が上がっていることもエドワードは面白くなかった。
「アイヒェンドルフ卿は凄い人気だな。二位が父さん、三位がエドワード兄さんか」
タビーは少し離れた場所で人だかりを見ながら、一人ぽつんと食事をしていた。数人が話しかけてくれたものの積極的に関与してくる貴族は居なかった。
アイヒェンドルフ領の一年分の税収が金貨千枚とありますが、
全ての現金として集まる訳では無いです。
お金の代わりに物納だったり、労働だったりします。
なので金貨千枚ってアイヒェンドルフ領としては結構な金額です。
国としたらそうでもない。冬になって税が集まってきている。来年度の支出を減らすんだと思う。
この国の文化度はあまり高くないという脳内設定です。
だって魔物がうろつくんですよ、村は防衛するための囲いを設けなければならないし、
貴族だけがのほほんと過ごせるほど余裕のある世界じゃないと思う。




