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ユニークスキル<ゲームにログイン>で魔王退治  作者: ぐわじん
2章

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23/55

02-01 猜疑

父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)

姓アイヒェンドルフ

~~狼が侵攻してきてから五日後の話~~

 アイヒェンドルフ領の隣にあるウェーバー男爵の館に早馬によって書状が届いた。


「二十万を超える魔物の群れ! 数え切れない程の狼だと…」

 ウェーバー男爵は、書状を読んで驚きの声を上げた。書状には最低でも二十万、最大で四十万と思われる灰色狼の群れがベシュッツァー(闇の森の側の砦がある村)を襲っていて、四万以上の狼を倒した事、守備を固める事、王家に報告して欲しい事が書かれていた。


「しかし本当にそんな大群が? 今までも数万の大群は聞いたことがあるが十万を超えるような大群など有り得ない」

 ウェーバー男爵はそのような報告を信じることが出来なかった。


「本当です。ベシュッツァーから伝令を伝えてきた兵士から何度も確認しました。一刻も早く王家や近隣の方に伝える必要があります」

 伝令を持ってきた兵士は近隣の領主や住民に伝えるように訴えた。


「虚偽の報告であった場合ただでは済まされないぞ。理解した上での報告で良いんだな?」

 ウェーバー男爵は伝令に再度確認した後、隣の領地に書状を送ることを決断した。あわせて自身の管理している村にも籠城と戦の備えについて指示をだした。

 このような事象が発生した場合、基本的な対応は村に籠城することであった。危険だからと言って他の村や街に移動したとしても、避難先では食料が不足し、住むことも難しかった。自分たちの畑や家、それらを放置して逃げてもその先が無く、手に負えない緊急時は王家の対応を待つしかなかった。



 その後も使者のリレーが続き、王城に狼襲撃の報告が届いた。王、宰相、将軍、第三王子、武官、文官などを集めて書状の内容を精査していた。


「信じられん。四十万の狼の群れなど聞いたことが無い。一番多かった魔物、魔族の攻撃はどれくらいだったか?」

 王の問いに文官の一人が応える。


「はっ、我が国の歴史の中ではキラーラビット六万、ゴブリン四万、オーク二万の例があります。他国であればキャタピラー二十万が最大で、歴史の中であれば複数の魔族と魔物が攻めてきた百万という記述がありますが、真偽の程は分かりかねます」


「んー、しかしアイヒェンドルフが嘘をつくとも思えん」

 王はアイヒェンドルフに一定の信頼をおいていた。アイヒェンドルフは五千のゴブリンの大群を討伐した実績があった。元々アイヒェンドルフ家の家臣であったが、ゴブリンの大群によって当主含めて全ての血縁者が亡くなっており、戦功により家督を継がせた経緯がある。

 そして闇の森(デル・ドゥンクレ・ヴァルト)から侵攻してくる魔物の群れを討伐し続けている実績もあった。アイヒェンドルフに西を任せることで、現在は東の開拓に注力することが出来ていた。会議に参加している者も、アイヒェンドルフに対してある程度の信頼をおいているため数の正確性はともかく、一定の魔物が攻めてきていると考えていた。


「仮に四十万の狼の群れだとして、対応は可能なのか?」

 王の問いに将軍が応える。


「甚大な損害は出ますが殲滅は出来ると思います。普通の村では撃退することが難しいでしょう。砦や城に相手が来てくれれば弓で一方的に攻撃することが可能でしょうが、態々こちらの思惑通りに攻めてくるとも思えません。

 そうなれば開けた平野で戦うしかありません。徴兵一人で二、三匹の狼を倒せたとしても十三~二十万人、兵士一人が五匹倒せるとしたら八万人必要です。ですが、国の全ての兵力を集めても九万です。ましてや今は東部での開拓作業に五万の兵士を割り当てている現状では対応が出来ません。

 なので対応するためには、東部での開拓を一旦中止して西部に向かわせる必要があります。兵士が西部の闇の森に移動するには少なく見積もっても二十日間は掛かるかと。五万の兵士を食わせるためには補給計画を見直し、今は東部に送っている食料を西部に送る必要があります」


「それはいつ可能になる?」


「まずは試算に三日、手配に三日、その後輸送が始まりますが五月雨式に物資が送られるので…まあ、まとめて十日程で兵を動かすことが可能になるかと」

 将軍の試算では、闇の森に着くには最低でも三十日かかると考えていた。


「そんなにか。今残っている兵士や近隣の兵士をかき集めて送ったら、どうなる?」


「王都の守備を放棄するとして全兵力を集めて二千、近隣の守備兵を集めて更に二千、近隣の住民を徴兵して一万。王都の守備兵二千だけなら明日にでも移動することは可能です。移動に必要な物資込で移動させられます。

 近隣の守備兵を集めたり、徴兵には、領主との調整が必要になります。正直どれくらい協力してくれるかも読めません。連絡や移動にも時間がかかります。仮に強力を得られたとしても、人数が増えれば増えるほど兵站の計画が大変になり、簡単にはいかないかと」


「はあ、じゃあどうすれば良いのか」


「アイヒェンドルフは切り捨て。王都からウェーバー領までの領民の殆どを徴兵、食料や水、馬、牛も徴発し、王都の守備隊二千に指揮させてぶつけます。どれくらい数を減らすことが出来るかは分かりませんが、ある程度数を減らすことが出来るでしょう。その間に東部に割り当てた兵士を西部に移動させるのはいかがでしょうか」


「その場合、集めた民や兵はどうなるのか?」


「全員死にます。どちらにせよ放置すれば被害は同じです。ある程度数をまとめることで一定の損害を与えることは可能でしょう」

 議論は数時間続いたが良案は無く、王都の守備兵二千をウェーバーの領都に送り、そこの籠城を支援することにして、その間に東部の兵士を西部に割り当てる準備を進めることになった。

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