01-18 進化再び
父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)
まだ日は暮れておらず森までの視界は問題ない状況であった。そのため数人の兵士が砦から出てとどめを刺しに向かった。更に数十人の兵士が砦から出て、同様に止めを刺して回っていた。
その間ティーモ、副官、マティアス達は、今後の方針を検討していた。
「大分減ったな。あと一日あれば数を大分減らす事が出来るだろう。そうなると狼の死体が問題だ。前回は狼の死体や共食いで進化されて危険な状況になった。
あと一日耐えきれば何とかなりそうではあるが、死体を食べられてまた進化したら、それこそどうなるか分からない。非常に危険だ」
「でも、回収できる死体の数なんてたかが知れてますよ。近くの死体を回収しても数百くらいか関の山じゃないですかね。数万の死体が散乱しているのに、その程度しか回収出来ないのであれば、リスクを犯して回収するメリットが無いです」
ティーモは死体回収の重要性を伝えたが、副官はその程度の回収では意味がないと考えて反対である旨を伝えた。
「狼が走ってきたら、一目散に砦に逃げ込んだら何とかならないか?」
「父さん、狼が時速六十キロで走ってきたとしたら約一分で砦まで到着するけど、一分以内に砦に戻れる距離じゃないと危険だよ」
「そんなに余裕が無いのか? どうして一分で砦まで来れると計算したのかは分からないけど、マティーが言うならそうなんだろうな。確かに狼の接近速度はそれくらい早かった気もする」
「僕も回収に向かうよ。そしたら数千から一万位回収できると思う。死体が細かく飛散しているから、簡単には回収できなさそうだけど」
「マティー、それは危険だ。お前が居なくなったら今回のような事が起きたときに対応が出来なくなる。それは住民達、いや人類の損失だ。仮に一万回収しても数万残るから効果が薄い」
死体を残すことで進化される恐れはあるが、現状では回収しきれないため、リスクを犯してまで回収する必要は無いと判断し、外に出していた兵士達を砦の中に戻らせた。
「死体回収しないのか?」
「危険じゃないの?」
村人達は不安を口にして、知り合いの兵士たちに詰め寄った。
「狼達の足は早い。森から砦まで一分で接近してくるから回収者の命が危ないんだ。数万の死体があるが全ては回収できないし、皆の命が大事なんだ。納得して欲しい」
ティーモは村人と兵士の会話が聞こえたため、間に入って説明する。領主に言われたため村人達は直ぐに引き下がった。
「死体は回収しないんだと」
家に帰った村人が家族に結果を共有した。
「なんで? また進化したら危険なんじゃないの?」
子供が疑問を口にする。
「回収作業中に狼が来たら危ないし、全部は回収しきれないだと」
「えーちょっとでも回収すればいいのに。少しでも減らしたらその分危険が減るんじゃないの? 俺でもそんなの分かるのに」
「領主様がそう判断されたんじゃ。仕方ないさ」
リスク判断の細かい事情までは理解されず、伝聞されていくなかで話はシンプルになって、あるいは余計な考えが付与されてティーモの思いは正しく村人達には伝わっていなかった。
翌朝、日の出とともに狼達が砦に接近してきた。ただ砦の前までは接近せず、狼の死体がある場所、砦から七十~百m離れたところで止まって死体を食べ始めた。
「狼が来たぞ! 銃を構えろ!」
「死体を喰ってる! また進化するぞ!」
兵士が叫び火縄銃を撃つが茶色狼の防御力ではあまり効果が出ていなかった。火薬樽は三十m位まで接近されないと効果が薄く、この距離では攻撃が出来なかった。そして狼達は食べながら少しずつ接近してくる。五十m位まで接近してきた狼の中には体が黒色に変化する物が出始めた。
「進化したぞ! 黒色だ!」
「黒いやつを狙え!」
黒い狼に火縄銃の弾が当たるが、傷ついたようには見えず、砦の門に向かって突進してくる。ドシンと大きな音がして、小さな木材の破片が周囲に舞い散った。煙玉が多数投げ込まれるが狼達の突進は続いた。
「くそ、このままだと門が壊される」
兵士は思わず声に出さずには居られなかった。
「なんで死体を放置したんだ。回収しておけばこんな事にならなかったのに」
「そうだ。回収すれば良かったんだ」
村人達はこの自体の責任は領主にあると思っていた。ただ、今こんな事を言っても仕方無いことではあったが、言わずには居られなかった。
ほとんどの狼達が砦に接近して来た。狼達が地面に引かれたマストの上に乗ったところで火魔法が放たれた。すると大きな炎が発生して狼達は激しく燃え始めた。黒煙があがりその煙は歩廊の上まで漂って来る。
「槍を投げ込め! 酒をばらまけ!」
「ゴッホ、苦しい! ゴッホ」
「死ぬ!」
「目が! 痛てー」
煙に巻き込まれた兵士や村人達にも大きな被害が出始めた。昨晩の内に砦の周辺に交易品の石油をばら撒いてその上にマストを被せておいた。品目は石油となっているが実際には原油のような黒い液体であった。
原油が燃えたときに発生する煙の危険性までは把握出来ておらず、味方にも大きな被害を及ぼしてしまった。
「下がれ! 歩廊の下まで降りてこい!」
「水を出したから使って! あと布! これを口に巻いて! 状態がひどい人は解毒剤を使って」
ティーモは下に下がるように指示し、マティアスは大量の水と布を出した。目を洗ったり、口をすすいで吐き出したりしている。
「ゴッホ、ゴッホ」
非常に苦しんでいる人に解毒剤を振りかけると一瞬で咳が止まり、症状がピタッと止まったことに本人も周りの人も驚いていた。
「解毒剤を置いたから使って! そこに人にも使って」
マティアスは解毒剤を全て取り出した、大量に買っていなかったので在庫が直ぐに無くなった。
「父さん! 解毒剤を買ってくる」
「分かった。こっちは大丈夫だ行ってこい!」
マティアスは原油が燃えたときの影響に考えが及んでいなかったことを後悔していた。急いで買付に向かう。
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次の話待っている間、少し時間を持て余しているよという方は、以下も読んでくれると嬉しい。
遭難から始まる国造り 魔法が使えるのは私たちだけ? 遭難して言葉も通じないけど何とかなりそう 120話保証




