01-11 打開策
父ティーモ、母ハンナ、兄ニコラス、姉ミア、主人公マティアス(マティー)
「困ったな。窓を開けると狼が入ってくる。砦からも攻撃しているが、大砲が使えないのは痛い。あと船尾楼の方は水と食料も置いてこなかったから何日もこんな状況が続いたら死ぬぞ。こちらはマティーがいるから良かったが」
船首楼側は攻撃もできなくなったため、マティーがアイテムボックスからパンやソーセージ、水を取り出して休憩を行っていた。マティーがいる限り何日でも立て籠もることは可能であった。
マティーは船の側面に張り付き、しばらくして振り返って言った。
「死体が格納出来た。もう少し続けてみる」
マティーは船側面の死体をアイテムボックスに格納し続ける。死体の数が千を超えたところで格納しにくくなってきた。
「多分二mは死体が無くなったとと思う」
「よし開けるぞ! 皆準備は良いか? 一、二、三!」
ティーモの掛け声で窓が開いた、警戒するが狼が入ってくる気配がなかった。砲身を外に出して大砲を放つ、ぶどう弾は広がって周囲の狼たちをなぎ倒していった。
マティーは狼の死体を定期的に収納することで船首楼側は攻撃を続けることが出来た。船尾楼側は船首側の大砲の音を聞いて、決死の覚悟で窓を開けて攻撃したが狼に入られて多数の負傷者が出ていた。
「くそう!」「うわぁ」「死ねえ!」「早く閉めろ」
船尾楼側から、右往左往している状況が船首楼側にも伝わってきた。かろうじて窓を閉じる事が出来たが攻撃するのは難しい状況であった。
「船尾楼側! 攻撃するな! 閉じこもってろ! こっちは死体が片付いたので攻撃されることもない。無理するな!」
「了解しました!」
ティーモが大声で指示を出すと、了解した旨の返事が聞こえた。
攻撃が始まってから十時間が経過し守備兵の多くは疲労が溜まっていた。村人も攻撃に加わっているものの、狼の数が多すぎてこの状況をどうやって打開すれば良いのか分からなくなっていた。狼は五万匹ほど倒されているが、まだ二十五万匹は残っており、大半が砦の前に集まり一部の狼は砦の周囲をぐるぐると回っていた。しかし高い壁に阻まれて攻め込むことは出来なかった。
「このままだと埒が明かないな」
ティーモは開いた窓から見える狼の数を見て、思わず愚痴をこぼしていた。
「父さん、どれくらい狼が残っていたの?」
「分からん、数万、いや十万、いやそれ以上かもな。数えられん」
「そんなに!」
マティーは数に驚いたが打開する方法を考え始めた。しばらく考えた後、案を告げる。
「火薬をばら撒いて、それで攻撃しよう」
「マティー、近くで爆発したらこちらも被害を受ける。どうやって遠くに飛ばせるのか? 方法はあるのか?」
「うん、多分なんとか」
マティーは砲撃用の窓に向けて交易品の木材を取り出した。そしてそれを兵士やティーモが支えて、板と板を釘で接合していく。底板と側面を五mくらい接合したら一旦格納して反対側も釘で接合していった。
そこにソーセージが入った樽を置いて、角度をつけて転がしていった。板は三十mほどの長さがあり、船から離れた場所に樽が転がり落ちた。落ちた樽から肉の匂いがするため、狼たちは齧ったり体当たりして樽を破壊し、中から出たソーセージを貪り食っていた。
何樽か転がしてみたが問題なく転がって行った。樽の周りには狼たちがひしめき合い、我先にとソーセージを奪いあっていた。
そこに十kgほどの火薬を入れた樽を三樽転がした。また肉が来たと思った狼たちはその樽を壊すが、それは肉ではなく火薬であった。そこに火魔法を使える兵士がファイヤアローで攻撃を行うと、火薬に引火して轟音とともに一度に三百を超える狼が吹き飛んだ。被害は十数m先にも及び爆発の衝撃波が船にも伝わってきた。即死した数は三百匹ほどだか、被害は千匹以上にも及んだ。
狼の数が多いため、開けた空間には狼が押し出されてその開いた場所に雪崩込んでくる。そして再度樽を転がしては、火魔法での攻撃を繰り返した。
一時間程で日が落ちてあたりが暗くなってきた。狼の一部が森に引き返し始めたが、砦の側にいる狼達は引き続き船に攻撃を繰り返していた。とはいえ、一晩中起きていたこともあり、狼たちも疲労が蓄積していたため、更に二時間を経過したところでほとんどの狼たちは森に引き返した。
残っていた狼を始末したところで、ティーモ達も船首楼から外に出た。瀕死の狼にはトドメを刺し、狼の死体を回収しながら船尾楼に向かった。中の兵士達は傷薬を使うことで死者はなく、負傷した兵士も傷薬の不思議な力で怪我もなく五体満足な状態であった。
船の上と船の周囲の狼の死体を格納した数は四万を超えていた。まだ離れた場所には数万の死体があったが一旦砦の中に戻ることにした。
砦に戻ったティーモ達は歩廊の上にいた守備兵から話を聞いた。その結果まだとんでもない数の狼が残っている事が分かった。とはいえ守備兵、村人ともに疲労困憊であり、最低限の守りを置いて、地面の上で死んだように眠りについた。




