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次の日、起きてキッチンへ行くと、子供たちが集まっていた。
朝からパンを焼いたらしく、良い香りが漂っている。
「あ、おはよう、ケビン」
「おっはよー」
「……おはよ。お前ら飯は自分ちで食ってこいよ……」
「だって、ここのジャムとかペーストとか美味しいんだもん」
ジェナがそう言って、焼き立てのパンにオレンジのジャムの載せる。
テーブルの上には、ステアがいろんな国から持ち帰って来たジャムやペーストの瓶が並んでいた。
クレイはそれほど多くは食べれないのに、大きな籠いっぱいにジャム類を買いこんできたのだ。ステア自身は、小さじ一杯程度の味見で満足している。
日持ちはするものだが、年単位でもつわけではない。なので、時々こうして、子供たちに消費してもらっている。
ステアはそんな子供たちに、目玉焼きやスープやサラダを配り、「甘いものばかり食べるなよ。さあ、卵を食べるのだ。卵には素晴らしい栄養素がたっぷりと入っていて……」と朝から蘊蓄を垂れている。
子供たちは元気いっぱいで、笑顔でパンを頬張っている。昨日の恐怖体験を引きずっている様子は無い。
「ねえ、ステアさん。昨日の吸血鬼さんたちは、今日も来るの?」
「メーラって子も、学校に通うの?」
怖がっているどころか、彼らに興味津々のようだ。
「後で連絡をしてみる。早いうちに、隣村に謝罪に行きたいとも言っていたし……メーラは……どうだろうな。行きたいと言うだろうか……」
ステアはコーヒーを啜りながら、子供たちの問いに答えた。
「なあ、母ちゃんや父ちゃんたちは何て言ってた?怖がってなかったのか?」
オレは気になって子供たちに聞く。
昨日の様子を見る限り、怖がってはいるが、命の危機を感じている様子は無かった。
「うん、まあ、不安そうなところはあったけど……」
ジェナが子供たちを見る。
「面白そうな人がいたんでしょう?じいちゃんが言ってたよ」
「吸血鬼もいろいろだなって、言ってた」
「すっごい怖い顔の人がいたって聞いた。どんな顔?怖い?」
子供たちの口調には怯えが無い。それはすなわち、大人たちが怖がっていないという事だと思われる。
(でもなあ……アレを見て、怖がらずにいられるか?)
昨日の、コウモリの群れをバックに従えた吸血鬼三人の姿を思いだすと、いまだに腹の底が震える。
「まあ、ちょっとは不安っぽかったけど……」
マーテルがスープを飲みながら言った。
「でも、ステアさんとケビンが何とかしてくれるでしょう?無理やり、村に入ってこようとはしないでしょう?」
「……なんで、そう信じられるんだ?」
「だって……ちゃんと話し合いしてくれたじゃない」
マーテルが笑顔でそう言った。
「そうそう。うちの母さんたちも、ステアさんの知り合いなら、大丈夫よねって言ってたわよ」
ジェナが言った。
オレとステアは顔を見合わせる。
「ステアさんとケビンのおかげで、吸血鬼をそれほど怖がらずにいられたって、じいちゃんが言ってたよ」
ミックが言った。
「そうそう。昔だったら怖くてパニックになってただろうって」
「ステアさんが信用できるから、助かるって」
ジャックとローワンが言った。
「…………そうか」
そう呟いたステアの声には、少しだけ喜びが垣間見えた。オレも同じ気持ちだった。
あの話し合いは、無駄ではなかった。
自分たちがやってきたことには、意味があった。
村の皆は、オレとステアの事を信用してくれている。吸血鬼に関しては、任せても大丈夫だと感じてくれているのだ。
「良かったな」
「ああ」
オレとステアは微笑みあった。




