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 二日目の話し合いは、驚きの連続で終わった。村の皆は新しい情報に驚き、戸惑っているようだ。今夜一晩ゆっくり考えて、噛みくだいてほしい。

 明日もまた、話し合いが行われることになった。

 (もしかしたら、しばらく続くかもな……)

 話し合いに教会の人間であるマックスが参加すると聞いて、ステアに不利な話が飛び出てくるのではないかと不安になったが、そんなことは無かった。ステアの事をどう思っているのかはわからないが、少なくとも、彼は正しい情報を伝えてくれた。政府や王や魔法学校の関係者たちが、あえてばらまく魔獣を悪者にする話は一切しなかった。

 (教会の人間も奴らの一派だと思ってたんだけど、違うのかな?)

 魔の者から人々を守るため、というお題目を掲げ、魔獣を殺すための白魔術を発展させてきたのは、教会関係者たちだ。

 教会にお祈りに来る信者たちにも、説教と称して、魔獣は殺さなくてはならないもの、魔法は魔獣と闘うために神がくれた聖なるものと教えている。

 オレは首を傾げながら、ステアと集会場を出る。

 入口の傍に、マックスが待っていた。

 「先日のお礼がまだでしたね。婚約者を救っていただき、本当にありがとうございました」

 マックスはそう言って頭を下げた。

 「ミッシェルさんの事?あ、そういう関係だったの?」

 「ええ。婚約したのはつい、先日ですけどね」

 「……婚約とは、結婚の約束だな?」

 ステアが聞いてきたので、頷く。

 「ふむ……これをミッシェル嬢に。私からの祝いの品だ。彼女には私の元教え子が迷惑をかけた」

 ステアは魔法で花束を出した。

 見たことのない、薄いピンクの花だった。可愛らしい小さな花びらが集まるようにして咲いている。

 マックスが、その花を見て驚く。

 「おや、これは……こんなにも良いものを。ありがとうございます」

 「お前のものじゃないぞ。これは未来の花嫁にだ。お前はこっちだ」

 そう言って、今度は黒い石を出した。

 「石?祝いの品に石?」

 オレは首を傾げる。

 「これはただの石じゃない。人間の世界では『不老長寿の石』と呼ばれているもので、将来家族を守るべき人間に贈るものだ」

 ステアはそう言って、布袋を取り出し、黒い石をそこに収めた。

 花束と石をマックスに手渡す。

 「……『不老長寿の石』って、まさか……」

 マックスは渡された布袋を見ながら、強張った顔をして呟いた。

 「もしかして、黒の魔法石か?魔法石の中では最高ランクで、魔法学校の校長の杖に使われているって奴?」

 オレが聞くと、ステアは「たぶん、それだな」と頷いた

 「ちなみに、そっちの花は、魔力をたっぷりと含んだ土壌でしか生えないものだ。杖の一部にしても良し、薬としても使える。出産のときに妊婦が飲めば安産を約束してくれるし、子供のお守りとしても有効だ」

 「……もしかして、『幸運の桃花』か?」

 「ええ、そうです。魔獣ハンターたちが血眼になって探し回っているという、アレです」

 マックスが呆れたような声でそう言った。

 呆れるのも分かる。人間の世界でこれを売れば、一生遊んで暮らせるだけの金になる。裏ルートで売れば、もっと高く買ってもらえる。

 さすが、質の良いお宝をため込んでいた奴は、祝いの品も桁違いだ。

 「こんな貴重なものを……どういうつもりです?賄賂ですか?村の皆さんに、あなたの事を安全だと言ってほしいと?」

 ステアはマックスの言葉を聞いて、ぽかんとした。

 最近、ステアのこんな顔をよく見る。

 「我々魔族を敵とみるお前たちに、賄賂を贈ったところで、何になると言うのだ?」

 ステアは本気でわからないという顔で、マックスを見る。

 「それとも、なにか?教会の自称聖人たちの中には、賄賂で心を売る人間がいるのか?」

 「います」

 マックスは、こともなげに頷いた。

 「いるのか!?」

 ステアは目を剥いて驚く。

 「ええ、いますよ。金と欲に目がくらむ人間は、どこにでもいる。多くの人に称えられるような人でも、その裏で人を傷つけていたという話は珍しくありません。たとえ、教会に属する人間でも、です」

 「…………私は、まだ、多くの事を知らないようだな……」

 ステアは困惑したように腕を組み、マックスを見る。

 「マックス……と言ったな。これから時間はあるか?」

 「何故です?」

 「お前は人間の悪い部分に詳しそうだ。私に教えてくれないか?お茶とお菓子をごちそうする」

 「……それを知ってどうします?言っておきますが、魔獣の、いえ、失礼、吸血鬼のあなたにとっては、気分が悪くなるような話がありますよ」

 「お前も知っている通り、私にはクレイという弟子がいる。人間の子供だ。私はクレイを魔法使いとして育てるつもりだ」

 「ええ、聞いています」

 「私はクレイの親代わりとして、人間の知識が必要なのだ。良い面だけでなく、悪い面も」

 「…………」

 マックスは手元の花に目を落とす。

 薄いピンクの花は、見る者の目を和ませる。

 「わかりました。今日はダメですが、そのうち……」

 「明日か?明後日か?」  

 「……明日で」

 マックスは苦笑しながら、そう言った。

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