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 「そんな言葉信用できるか!」

 「クレイは魔法使いかもしれないが、オレたちは違うじゃないか!」

 「結局、お前たちがオレ達の事を家畜と同等に見ていることに変わりはないだろうが!」

 「絶対に襲いに来ないという保証があんたにできるのか!?」

 村人たちからの反撃に、ステアはぽかんとした顔をした。

 「今の説明のどこからそんな疑問がわいてくるんだ?」

 ステアは本気でわからないらしく、首を傾げている。

 「どうして、それほど信用できないのだ?私の事は信用しているくせに」

 「し、信用って……」

 「このように、私と同席してもまるで怖がっていないじゃないか。今日のケビンは剣など持っていないぞ。剣を持たないこいつが、暴れだした私を止められると思っているのか?それは無理だ」

 ステアの言葉に、オレは頷く。

 だからと言って、顔色を変える村人はいなかった。

 「……だって、あんたは……まあ……」

 「ステアさんは、まあ、ねえ……」

 「ほら、私の事は信じてくれているだろう?ならば、メーラの家族の事も信じてくれ。彼らとは古い付き合いなのだ。同じ魔法の探求を志す者なのだ。新し魔法使いの成長を邪魔するような事はしない」

 「……メーラってガキはしてたぞ」

 「あれは邪魔ではない。手合わせのようなものだ。人間の弱さをわかっていなかったせいでやりすぎただけだ。もうそんなことはしない」

 ステアの言葉に、村人たちは困ったように顔を見合わせる。

 「吸血鬼は確かに人間を家畜と同等に見てはいるが、それは、人間全般を見渡した時の事だ。今のように顔を突き合わせ、話をして、一緒に暮らせばそんな認識は吹っ飛ぶ」

 「…………」

 「私はこの村の者たちを家畜と同じには見れない。それぞれの名前を知り、沢山の事を教えてもらった。これからも教わりたいと思っている。私の方からも、力を貸すことができる。そちらとて、同じだろう?人間にとって、吸血鬼は家畜と同等ではないか」

 ステアは何のことは無い、当然の事と言うように、さらりと言ってのけた。

 村人たちはぎょっとする。

 「な、なにを言って……」

 「そんなこと……」

 「ふむ、家畜と言うよりは害獣か。我々を飼育して得られる利益は無いからな。冒険者のように、宝を盗み出す力があれば別だが」

 ステアがにやりと笑ってオレを見る。

 オレは思わず目を逸らす。

 「ここにいる者たちにとっても、私と話をする前は、吸血鬼とは害獣だったはずだ。だが、我々はとても平和的に交わることができた。言葉を交わし、共に暮らせば、垣根は低くなる。たとえ、言葉を交わしていなくとも、信用する者から話を聞けば無視する存在ではなくなる。そうだろう?メーラの家族の事は、すでに村の皆にとっては、ただの害獣ではなくなったはずだ」

 「…………」

 「あとは、お互いに闘う理由が有るか無いかだ。メーラの家族には無い。彼らは私の話を聞き、この場所が私にとって大切な場所だと理解してくれた。彼らがこの地を襲う事は無い。そして、それが無ければ、村の皆がメーラの家族を襲う事も無いだろう」



 「……もう襲うことは無いから、許せってか?」

 ジェロームさんが低い声で言った。

 「いいや。それとこれとは話が別だ」

 ステアはまっすぐにジェロームさんを見て言った。

 「子供のいたずらだとしても、村の皆の命を危険にさらしたことに違いは無い。咎は受ける」

 ジェロームさんは「はっ」と笑った。

 「咎って、なんだよ?うちの娘は怖がってる。今日はここにも来てねえ。ミックはあんたになついているようだが、本当は行かせたくないと思っている」

 「そうか……」

 「あんたは話し合えばお互いに理解できると思っているようだが、そう簡単にはいかねえこともわかってるだろう?俺達とあんたたちじゃあ、力が違うんだ」

 ステアはジェロームさんの言葉に頷く。

 「どうしたって、あんたたちは強い。魔法も使える。人間を襲う吸血鬼だ。俺達人間はあんたたちに脅されれば従うよりほかない。俺達はいつ襲ってくるかわからないあんたたちの機嫌を伺わなきゃならねえ。そんな状態でお互いの事を話しあって理解しましょうなんざ、聖人様みたいなことできるわけもねえ」

 ステアはジェロームさんの言葉に頷く。

 ジェロームさんはそんなステアを見て、オレを見た。

 「ただ……あんたが出て行けば、ケビンが出て行っちまう」

 苦虫を噛み潰したような顔だ。

 「だから、俺達は妥協点を見つけなきゃなんねえ」

 ジェロームさんの言葉に、少しだけその場の空気が和らいだ。

 この場の誰もが、この話し合いの行く末がどうなるのかと不安だったはずだ。

 オレもどうなるのか、予想が立たずに、どこでどう口を出していいのかもわからなかった。

 だが、ジェロームさんのおかげで、行く先が少しだけ見えた。

 オレも、ステアも、村人たちも譲れないものがある。それを守るためにも、譲れるものを出しあわねばならない。

 「さて、そろそろ時間だね」

 ウォルバートン先生がそう言って手を叩いた。

 この話し合いは、大体、一時間ほどと時間を決めていた。だらだらと長引かせたって結論が出るはずも無く、村人たちには仕事もあるのだ。

 「とりあえず、今日のまとめをしようか。といっても、結論は出てないけどね。何かお互い、これだけは……というお願い事はあるかな?」

 「明日も話し合いをしたい」

 ステアが申し出た。

 村人たちは頷いた。

 「あの……」

 村人の一人が手を上げた。

 「子供たちの事なんですが、あまり暗くならないうちに帰して欲しいんですが……」

 彼女はクレイと同じ学校に通う子供を持つ母親だ。子供の方は、時々古城に遊びに来る。

 「わかった。そうしよう」

 「早めに帰すように気を付けるよ」

 ステアとオレが請け負うと、村人たちの間から、ほっとした声が漏れた。   

 今日の話し合いは、それでお開きとなった。


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