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 次の日から、村人たちとの話し合いが始まった。

 オレ(=ケビン)は、ステアと一緒に、村の集会場に乗り込んで行った。

 みんな、かなり緊張している顔をしていた。これから、この話し合いがどうなるのか、吸血鬼がこの村に定住することになるのか、かなり心配しているようだった。

 そして、オレがこの村から出て行くのかどうか、ということも。

 (案外頼りにされてたんだなあ、オレ……)

 ステアに色々叱られて、あんまり気にしていなかったが、集会場に行くと、村の皆から次々に声をかけられた。

 「出て行くなんて考えないでくれよ」

 「あんたがいなくなったら心配だよ、ケビン」

 「ここにはお前の親御さんが残してくれた土地があるんだろう?なにも出て行くことは無いじゃないか」

 主に年寄りから懇願されるように、口々に言われた。

 マーテルの言う通り、オレはこの村ではそこそこ役に立つ人間だったようだ。これまで意識したことが無かったので、少しうれしい。

 (ステアもオレ以上に色々できるやつなんだから、村に馴染めば絶対にうまくいくと思うんだけどなあ……)

 オレはそんな事を考え、ため息をつく。

 しかし、「色々できるやつ」でも、村の皆に信用されなかったら、そこでアウトだ。

 ステアの場合、為人を見定める以前の問題で躓いている。

 人を襲う可能性のある存在。

 人間とは異なる存在。

 ステア自身が人を襲わない事は、村人たちも知っている。血を吸う相手はオレかウォルバートン先生のどちらかで、他の人間を襲わないという約束を、ステアはきっちりと守って来た。

 問題は、ステアの仲間たちの事だ。

 あの、子供吸血鬼のように、突然村人が襲われるような事が、二度と起きないという約束ができるのが一番良いのだろうが……

 (そんな約束できるわけないよなあ……ステアは色々できるけど、何でもできるわけじゃない)

 オレは、どんな話し合いになるのかと緊張しながら、集会場の席に着いた。


 一番に聞かれたのは、あの子供吸血鬼のことだった。

 どうしてあの子が突然現れて、あんなことをしたのかを、村人たちは聞きたがった。

 ステアは説明した。

 いつも通り、静かな声で、理路整然と。

 「……なるほどねえ、クレイ君に嫉妬か。吸血鬼の子供も人間の子供と変わらないところがあるんだねえ」

 ウォルバートン先生が、何やら感心したように、面白がっているようにそう言った。

 「子供のしたことだからって、許されることじゃねえよ」

 村の中でも、一番の年寄りであるジェロームさんが言った。その表情は厳しく、子供吸血鬼のしたことを笑って許そうなどと微塵も思っていない様子だった。彼はその時、襲われた場所にはいなかったが、彼の娘とその子供がいて、恐ろしい思いをしていた。

 「わかっている。メーラの……あの子のしたことはとても危険な事だった。本当に申し訳ない」

 ステアは、その場にいた村人全員に頭を下げる。

 「あの子とその両親には、私からきちんと話をつけてきた。メーラの事は叱り、ご両親もメーラのしたことを恥ずかしく思っている」

 「……でも、あんたたちは吸血鬼だろうが。俺達人間に死人やけが人が出たところで、なんとも思っていないんじゃないのか?」

 「……そうかもしれない」

 「なんだと!?」

 村人数人がいきり立つ。

 ステアは全く動じず、彼らを見る。

 「一般の吸血鬼にとって人間とは、人間にとっての家畜と同じようなものだ。傷つこうが死のうが、どうでもよいのだ。我々の腹を満たすだけの数が生きていれば良い」

 ステアの言葉に、その場の空気が一気に張り詰める。

 (おいおいおい、なんでそんな言い方を……)

 乱闘でも始まりそうな状況に、オレは思わず腰を浮かした。

 そんな中でも、ステアは静かな声で続ける。 

 「しかし、私は違う。クレイがいるからだ。私はクレイを家畜としては見ていない。同じ魔法使いとして、魔法を探求する同士として見ている。メーラとメーラの両親にもクレイの事を教えた。彼らもまた魔法使いであり、新しい魔法使いの誕生を心から祝ってくれた」

 「…………」

 「吸血鬼にとって人間は取るに足らない生き物だ。しかし、同士は違う。同じ道を究めようとしている存在は、たとえそれが人間だろうとも、我々は対等の存在としてみる。メーラも同様だ。だから、クレイを攻撃しに来た」

 「……ライバルと感じたんですね」

 ミルドレッド先生が言った。ステアは頷く。

 「家畜としてみていたら、あんなことはしない。メーラはクレイを魔法使いとして見ている。メーラの両親もまた、クレイを認めた。なにせ、メーラの攻撃を防ぐほどの実力をもっているのだからな」

 「……何が言いたいんだ?あんた」

 話の方向が見えず、ジェロームさんがステアをじろりと睨む。

 「メーラとメーラの両親が、この村を襲いに来る心配は絶対に無い、という事だ。この村は新たな魔法使いを育てる土壌だと、私は彼らに話して聞かせた。人間の子供にとって、他の人間たちと平和に暮らすことが、何よりも大切だと。だから、この村の平和は保たれる」

 ステアは、完璧な説明だとでもいうように満足そうににっこりと微笑んだ。


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