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 「どうしてあんなこと言ったのよ!!」

 マーテルはオレに怒鳴った。

 村人たちが古城から去り、城にはステアとクレイ、そして、子供たちが残った。

 マーテルは怒りまくっていた。

 「あれじゃあ、これからどうなるかわからないじゃない!せっかくステアさんとクレイのことを、村の皆に納得させるチャンスだったのに!」

 「ああ、わかってる」

 「わかってる!?本当にわかってるの!?みんなが冷静になって、やっぱりステアさんがいるのは良くないって結果になったら、クレイたちは出て行かなきゃいけないのよ?」

 「……ああ、そうだな」

 「それでいいの!?」

 マーテルは目に涙を浮かべてオレを睨みあげてきた。

 「……それは仕方ない」

 「仕方ないって何よ!クレイの事が心配じゃないの?」

 「クレイの事は心配だ。この村にいてほしい。でも、村の人たちの事も蔑ろにしたくない」

 「……蔑ろってなによ?どういう意味?」

 マーテルは戸惑ったような声で言った。

 「……今、マーテルは「納得させる」って言ったよな?でも、違うだろう?オレが出て行かない代わりに……なんて言い方は、納得させてるんじゃなくて、脅迫だ」

 「それは……」

 「わかってる。マーテルがステアとクレイの事を考えているのはわかってるんだ。でも、ああいうふうに無理やり了承させるのは……だめだ。結局、吸血鬼が怖いっていう不安は全然消えない。だろう?腹に抱え込んだままになっちまう。不安や恐怖を抑え込むのは……良くない」

 「……でも、ステアさんは怖い人じゃないわ。最初は怖いかもしれないけど、皆だって、そのうち……」

 「そうだ。ステアは悪い奴じゃないし、怖いこともしないだろう。時間が経つにつれてみんな絶対にわかってくれると思う。でもさ、始まりにしこりを作っちまうと、残るんだよ。いつまでも」

 オレはステアを見る。

 ステアは椅子に腰かけ、オレとマーテルの会話をじっと聞いていた。

 「ステア、お前には悪いことをするけど、村の皆の不安を聞いてほしい。今、すっげーチャンスなんだよ」

 「チャンス?」

 「そう!つい昨日まで、吸血鬼とは一緒に暮らせないっていう意見でガチガチに固まって、説得どころか、話すら聞いてもらえない状況だったんだぞ。それが、今はどうだ?村の人たちが集まって話し合いをしてくれてる。これはチャンスなんだよ」

 「しかし……話しあいをしたところで、彼らの意見が変わるのか?」

 「それはわからない!でも、マーテルとジェナの両親はわかってくれたんだろう?」

 オレが二人を振り返ると、「まあね」という返事が返って来た。

 「それに、今日、ここに集まった人たちは、それほどお前の事を怖がっちゃいない。子供たちがお前にべったりしてても、誰も止めようとはしなかっただろう?お前の事を怖がってる人は少ないんだよ。お前が出したお茶もお菓子もみんな食べた、だろう?」

 「……まあ、そうだな」

 「今なら話ができるんだ。説得ができる。お前にも参加してほしい、ステア。頼む、もう一度この村に住みなおすことを考えてくれ」

 ステアはオレから視線を外し、クレイを見た。

 クレイは緊張した顔で、ステアの視線を受ける。

 「クレイ、この村にいたいのだな?」

 「はい」

 「それは、なぜだ?」

 「それは……俺、この村が好きなんです。友達ができたし、村の皆も良い人で……ここにいたいって思いました」

 「……次に住むと考えていたのは、ここよりも大きな街だ。ここよりも人がたくさんいて、子供も多い。そこでならもっとたくさん友達が作れるぞ」

 「…………でも……」

 「でも?」

 「そこには、ローワン達はいないし……マーテルもジェナも、ケビンも、ミルドレッド先生も……」

 「……ふむ……」

 ステアはクレイの言葉を聞き、考え込んだ。

 クレイは不安そうな顔で、ステアを見る。

 「お、怒ってますか?師匠」

 「怒る?なぜ怒るんだ?」

 「だ、だって、師匠がせっかく新しい場所を探してきてくれたのに、俺、行きたくないなんて……」

 「そんなことでは怒らないぞ。住む前に、クレイの意見も聞くべきだと思っていたからな。お前が気に入らなければ、もう二つ三つ、候補となる町は考えてあったのだ。大事なのはお前の意見なのだ。どこでなら、お前が集中して勉強できるかと……」

 ステアはそこで言葉を切った。

 「……ふむ、私にももう少し考える時間が必要だな……ケビン、ちょっと来い」

 ステアは立ち上がり、オレの襟首を掴んで歩き出した。

 「え?なんだよ?」

 「腹が減った。この一週間、誰の血も吸っていないんだ。食わせろ」

 「あ、ああ……はい」

 オレはステアに引きずられるように、歩き出した。

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