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吸血鬼がこの村を去った次の日、オレはクレイと一緒に学校へと向かった。
今日登校している子供は半数ほどだったが、ミルドレッド先生はいつも通りの笑顔で出迎えてくれた。
「おはようございます、クレイ君、ケビンさん」
「おはようございます」
「……おはようございます」
クレイは元気のない声で挨拶した。
クレイは今日、学校へ行くのを嫌がっていた、ように見えた。口には出さなかったが、起きてくるのも遅かったし、朝食はミルクしか飲まなかった。口数も少なく、城の中にいる間はステアを探すように視線をさまよわせていた。
オレが一緒に学校に行くと言うと、少しだけ安心したように、ほっとした顔をしていた。
森から出て、村に入るときは一番緊張していたようだ。村人たちの視線を恐れていたのだろう。しかし、村人たちはいつも通りに挨拶してくれた。それどころか、「昨日はありがとう」「君は強い魔法使いだねえ」と口々に言われた。クレイは面食らったように驚いていたが、素直には喜べていなかった。
大人たちと別れ、二人きりになった時にクレイはぽつりとつぶやいた。
「みんなを助けたのは師匠だ。俺は何もできなかった」
クレイの言葉には、もやもやした思いがあふれていた。
どうして、何もできなかった自分が褒められ、吸血鬼の子供を止めたステアが追い出されるのか。
どうして皆、助けてくれたはずのステアを追い出すことになったことを疑問に思わないのか。
騒ぎを起こしたのは吸血鬼だが、それを止めたのも吸血鬼だ。
村人たちにそう訴えられなかった自分の弱さ。
ステアと言葉すら交わせなかった、あの時の緊張状態。
そして何より、あの騒ぎを起こした吸血鬼に対する怒り。
納得できない事、自分を許せない事が山ほどあるだろう。
「……そうだな」
オレがそう呟くと、クレイは顔をくしゃくしゃにして、今にも泣きだしそうになった。
学校でも、クレイはヒーローとして迎えられた。子供たちに囲まれるクレイを見て、オレは少しだけ安堵する。
「昨日、何があったかを話してくれませんか?」
オレはミルドレッド先生にお願いした。
事のあらましはクレイから聞いている。村長からも聞いたし、子供たちからも聞いた。その場にいた村人たちの話も聞いた。
しかし、それぞれ着眼点が偏っているせいで、全体的な話を聞けなかった。
クレイはステアの心配ばかりしているし、子供たちは魔法での戦いを初めて見て興奮しているか、恐怖しているかのどちらかだ。村人たちも似たようなもの。村長に至っては吸血鬼を村に受け入れる決断をしたことに、かなりの責任感を感じているようで、オレは少しだけ責められた。
ミルドレッド先生ならば、第三者の視点で、冷静に話をしてくれると思ったのだ。
彼女はとても強い。
あんなことがあった次の日でも、子供たちを安心さえる笑顔を作れるような人だ。クレイの事も気にかけてくれている。ステアという保護者を失ってしまったクレイを、安易に誉めそやすことも無い。
「いいですよ。今日の授業が終わってからでもいいですか?」
オレはミルドレッド先生と約束をとりつけ、公民館を出た。




