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 「クレイ!」

 オレが叫びながら駆け込んでいくと、村人たちが涙を浮かべた目でオレを見た。中にはミルドレッド先生やローワン達やジェナ達もいた。

 クレイも真っ青な顔で、オレを見た。

 オレは吸血鬼の子供に斬りかかる。

 「お前、なにやってやがる!」

 吸血鬼の子供は、オレの剣を避けて天井へと舞い上がった。

 「なんだ、お前?」

 吸血鬼はちょっと驚いた顔をしたが、すぐに余裕の笑みを浮かべて、杖を振りかぶった。

 「ケビン!雷が来る!避けて!!」

 クレイが叫んだ。

 オレは剣を頭上に構える。

 吸血鬼が呪文を唱えると、室内に稲妻が起きた。

 剣に衝撃が落ち、手がびりびりと震える。しかし、雷の衝撃が体に伝わることは無かった。

 「なにそれ、魔術がかけられてるの?」

 吸血鬼が目を丸くしてオレを見る。

 オレはびりびりと震える剣を、横なぎに振りきる。

 剣が吸収した雷の魔力が、オレの腕力で飛び出していくのが手に伝わった。

 大振りに振りかぶったが、狙いは正確で、雷の魔力は吸血鬼の子供にまっすぐに飛んで行った。

 「うわっ!!」

 吸血鬼は大慌てで雷をよける。

 頭上ギリギリで雷を避けた吸血鬼は、足元が疎かになっていた。

 オレはそこを狙って、吸血鬼へ飛びかかる。

 子供の足を掴み、思いっきり引っ張って床に引き倒す。と同時に、杖を奪い取り、クレイたちの方へ向けて放り投げた。

 「放せ!人間!!」

 「黙れ!このクソガキ!」

 オレは呪文を唱えさせまいと、吸血鬼の口に布を突っ込んだ。

 「んぐう!?」

 「手伝ってくれ!呪文さえ唱えさせなきゃ、こっちの……」

 オレは村人の男たちにむかって叫んだ。

 何人かが、慌てて結界から飛び出してきてくれたが、彼らが来る前に、オレは強い力で弾き飛ばされた。

 「ふざけるなよ!この人間が!!」

 吸血鬼の子供はオレを蹴り飛ばすと、宙に舞い上がった。

 両手を天に掲げ、呪文を唱えだす。

 バチッという音がして、これまでと比べ物にならないほど大きな雷鳴が轟く。

 村人たちが悲鳴を上げ、クレイが恐怖に凍り付くのが目の端に見えた。 

 あの結界がクレイの力なのか、ステアが残しておいた魔法なのかわからないが、この力に対抗できるかどうか判断ができない。

 オレは剣を手にみんなの元に駆け出す。

 「クレイ!皆を守ってくれ!」

 オレの言葉に、クレイが震えながらも杖を掲げる。

 「できるだけ固まれ!」

 オレの言葉に、村人たちがお互いに固まる。結界の外に出た男たちも、中に駆け込む。

 オレは剣を掲げ、雷の衝撃を受けられないかと目をこらす。

 しかし、吸血鬼の子供が作り出している雷の大きさを見ると、受け止めきれそうにはない。

 (助けられない?駄目か?)

 オレは絶望に襲われながら、吸血鬼の子供を見る。

 オレの所業に怒り、こちらの制止など聞きもしないだろう。

 「くそっ!!」

 オレは剣の刃を握り、投擲の構えをとった。

 「クレイ!目を……」

 閉じろ、と言いかけた時、城の壁に穴が開き、そこから何かが飛び込んできた。

 それがステアで、飛び込むと同時に、吸血鬼の子供を魔法の縄で捕獲したのだと気づいた時は、雷の魔法は消えてなくなっていた。

 ステアは厳しい顔で吸血鬼の子供を睨みつけ、固まり震える村人たちを見た。クレイを見て、オレを見た。

 「すまなかった。私の不手際だ」

 そう言って、頭を下げた。

 オレは剣から手を離し、ほっと息をつく。

 村人の前で、クレイの前で、吸血鬼の子供を刺し殺さずに済んだことに、安堵した。  

 

  

 「申し訳ないが、出て行ってくれないか?」

 村長がステアと吸血鬼の子供を前に、重苦しい声でそう告げた。

 吸血鬼二人から距離を取り、村人たちがそれの様子を固唾をのんでみていた。彼らの表情は恐怖と怒りに染まっていた。

 ステアは「本当に申し訳なかった」と頭を下げ、縛り上げた吸血鬼の子供を抱き上げると翼を広げて空へと飛びあがった。

 オレの右手が、強く握られる。

 オレと手を繋ぎ、全てを見ていたクレイは、静かに涙を流しながらステアの姿を目で追いかけている。

 別れの言葉を交わすこともできなかった。

 ステアがクレイを遠ざけたのだ。

 この状況で、ステアと吸血鬼の子供に味方するようなそぶりをみせれば、クレイは村人たちから嫌厭される。

 ステアはそれを恐れた。

 一度だけオレの目を強く見つめた後、ステアがオレとクレイと目を合わせることは無かった。

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