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ステアはウォルバートン先生の助言に従い、古城に村人たちを集め、パーティーを開いた。
庭にテーブルと敷物を広げ、自由に飲み食いできるラフなパーティーだ。
その日は朝からお客が入れ代わり立ち代わり、古城へとやって来た。特に時間は決めず、好きな時に遊びに来てくれと言ってあったので、村人たちは各々時間のある時に顔を出してくれた。子供たちは綺麗に修繕された城を見て、大喜びで走り回っていた。
酒や食材は村の店から仕入れ、当日の手伝いも何人か雇った。
そのおかげで、ステアの羽振りの良さが伝わったようで、当日は近くの村の商人たちもパーティーに来てくれた。
「ウォルバートン先生は策士だな。こうやって仲良くなればいいのか」
ステアは挨拶に来てくれる村人たちを見ながら、そう呟いた。
ステアを怖がるような村人は一人もいなかった。むしろ、積極的にステアと話をしたいと思っているようで、入れ代わり立ち代わりステアの元に人が集まる。おかげでステアは大忙しだ。
ステアの美しい姿も、一役買っているのだろう。村の若者たちが頬を赤くしてステアと話しているのに気付く。村長や領主も、普段は絶対に身に着けないような立派な服装をして現れた。
(吸血鬼だってわかってるくせに、男って……)
オレは少し呆れながら、そんな村の男たちを見ていた。
クレイは、今日は一日お客様をもてなす勉強をしろとステアに言われていて、小さなお客さんたちと一緒に、城の中を走り回っている。
城の中ならステアの目も届くので、魔法を何度か披露しているようだ。
つまり、料理や酒の準備諸々の仕切りは、すべてオレに任されることになったという訳だ。
「くっそー!忙しい!」
酒や料理の追加の指示を出しながら、オレは忙しく働いていた。
昼も過ぎ、客たちもまばらになった頃、馬が地を蹴る音が聞こえてきた。
早馬に乗って現れたのは、領主宅に勤める若者で、その様子から、何かが起きたのだと察せられた。
若者は領主の元へ走り、何かを耳打ちする。
領主の顔色が変わり、ステアを見る。
「こちらへ。私の部屋でお話をしましょう」
ステアが立ち上がり、そう言った。
「ウォルバートン先生、村長、あと……ケビン君、来てくれ」
領主の言葉に、オレも立ち上がる。
飲み食いしている村人たちは、オレ達の様子に気付き、不思議そうな目を向けている。
「皆様、ご自由にお食事を続けてくださいな」
ステアは微笑んでそう言い、先に立って歩き出した。
領主の顔は、少し強張って見える。
(なんだ?何があった?)
オレは悪い予感を抱きつつ、ステアについていった。
「吸血鬼が現れたと?」
ステアの私室に入り、鍵をかけてすぐステアが口を開いた。
「え!?知っているのですか?」
領主が驚く。
「耳打ちが聞こえたのだ。私は耳が良い。誰かが血を吸われたのか?」
ステアは知らせに来てくれた若者を見て、尋ねる。
「は、はい。先ほど隣村からの伝令が来まして、女性が一人、吸血鬼に襲われたと……」
若者が不安そうな目でステアを見る。
「ステアじゃない!」
オレは思わず叫んでいた。
その言葉に、その場にいた全員がオレを見る。
「そいつじゃない。絶対に」
ステアはオレを見て微笑み、若者に向き直る。
「それはいつの話だ?」
「今朝がた、女性の異変に気付いた家族が村の警備隊に知らせたそうで……おそらく、昨夜から未明にかけての事だと……」
「ふむ……女性は無事か?」
「はい、意識はあるようです。ただ……」
若者は言いよどんだ。
「ただ?」
「ただ、少し様子がおかしいと。医者に診せたそうなのですが、混乱していると……」
ステアは驚いたように目を開いた。
「貧血気味とか、寝たまま起きないとかではないのか?」
「いいえ。ずっと呻いていて、訳の分からない事を口走っているようで、毒でも与えられたのではないかと……」
「……まずい」
ステアの顔色が変わった。
「その女性の場所を教えてくれ。行かねばならない」
ステアは若者に詰め寄った。
「え、いや、しかし……」
「その女性は我々の魔法を受けて混乱している可能性がある。魔法を解いてやらないと、一生そのままだ」
ステアの言葉に、領主と村長が驚きの声を上げる。
「どういうことですか?吸血鬼はただ血を吸うだけではないのですか?」
「そうだ、だが、魔法に慣れていない子供の場合、このような事が起きる」
「子供?」
オレも驚きの声を上げる。
「そうだ。吸血対象をおとなしくさせるため、また、吸血鬼が出たと騒ぎを起こさせないために、催眠術をかけることがある。しかし、魔法が下手な吸血鬼の子供が時に、失敗してしまうことがあるのだ」
「それで、混乱しているっていうのか?」
「そうだ。もしかしたら、その女性は魔法使いの素質があるのかもしれん。魔法使いに魔法をかけるのは難しいからな」
ステアの言葉に、オレ達は「そうなのか……」と驚く。
「私が行って、女性の混乱を解く。頼む、女性の場所を教えてくれ」
「私も行こう。医者であると言えば、通してくれるだろうから」
ウォルバートン先生がそう言った。
「ステア君、今は人間に化けるときだ。その村では今、吸血鬼への恐怖が蔓延している。そんな場所に君が乗り込んでいったら、大騒ぎになる。助けるものも助けられなくなる」
「……そうだな、従おう」
ステアは呪文を呟き、その姿を変える。
見た目はそれほど変わりはないが、とがっていた耳が丸くなり、牙が消え、体つきが少しふっくらとした。
人間の姿になった。




