無題
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
断末魔。
声にすらならない絶叫が、しかし僕と洞木の中に響く。
我ながら«罪悪»を大分カッコよく誇張してしまった感がどうにも否めないが、そこはそれ、人間など元より脚色だらけだということで処理しよう。
まあ、僕はもう人間じゃないのだけれどね。
なんて自虐的に笑ってから、改めて目の前の光景に視線を向ける。
脳天をぶち抜かれた«簓木 鶫»はと言うと、金切り声のような自身の悲鳴に潰されそうになりながら足掻いていた。
«悪魔の部品»による攻撃だからだろうか?
その負傷は回復する気配を一向に見せず、ただ頭部が膿のようにどろどろに溶解した醜穢な様相でそこに這いつくばっている。
「■■■」
「■■■■■」
「■■■■■■■■」
「──────っ、させるかよッ!」
洞木が何かを見越した様子で、屍となりかけの化物へ駆け寄る。
「▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓」
響き渡る怪異の咆哮。
「うおおおおおおおお!」
それに劣らない狂人の叫び。
両者の覚悟を耳にしながら、僕はその終幕を眺めているしかなかった。
・
夏休み明け。
始業式を無事に終えた僕と彼女は、酷暑の残り続ける帰路を並んで歩いていた。
「ふーん。それで?その洞木クンって人は、最終的にはどうやって勝ったわけ?」
菱森 希心は、僕の語った話に対してそう相槌を打った。
「«札»だよ。«簓木 鶫»は奥の手をまだ隠し持っていたらしいんだ。まさか回復もしない内に相打ちを狙うとは思わなかったけれど──そこはそれ、洞木が兆候を見切って、無理矢理«呪符»を呑ませたんだ。」
「へえええ。なんていうか、呆気ないっていうのかな。案外在り来りなオチなんだねえ。」
事も無げに、素直な感想を漏らす彼女だが、しかしそう言われれば全くのその通りだ。
散々苦戦した割には、思いの外すっと終わってしまった感も否めない。
「まあな。別に何かあるって期待を寄せていたわけじゃあないし。」
「それよりお前。大丈夫なのか?──ほら、その・・・・・・。」
「あーあーあー。«大虚鳥»でしょー?へーきへーき。寧ろ体調崩すこともなくなったし。いろいろ重宝してるよ。」
慎重を期して言葉を選んでいると、菱森は快活に笑った。
そう。
あれ以来、いろいろなことに上手く一区切りがついた。
菱森が自身の決意をもって己に憑くその怪異を受け入れたというのも大きな変化の一つである。
分類としては«悪魔の体»を有している僕と近いのだが、まあ、本人が受け入れたものに、今更僕が口出しするべきではないよな。
「そんなことはないよ。君はいつも私を助けてくれていたもんねー?」
返答に窮するなあ。
以前より性格が悪くなってない?
「でもまあ、そうかもな」
素っ気なく口にしてみる。
そうだよ。
たまにはこんなのも悪くない。
そしてきっと、これからも。
この物語は、終わらない。




