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ジルバーン公爵邸で行われたバルディウス殿下のためのお見合いパーティーは殿下がお相手を見つけることができずに失敗に終わってしまった。殿下の結婚活動は振出しに戻ってしまった。
「父上が開いてくれたパーティーでは結婚相手は見つけることができませんでした。次はどうやって結婚相手を探すかですが、何かいい手はありませんか?」
「それでは、今きているお茶会の招待を受ければよいのではないのですか?建前はお茶会でも実際は確実に公爵家と縁戚になりたがっている政略結婚のためのお見合いであると思われます。公爵様の面子を立てるまでお見合いパーティーが終わるまでは招待を受けるのをお断りしていましたが、お見合いパーティーが失敗に終わった今なら招待を受けてもよいのではありませんか?」
「なるほど、そうですね。それでは今招待がきている中から悪いうわさなどがなく結婚しても問題のない人からの招待を吟味してください。結婚すれば公爵家本家と縁戚になるのです。本家には迷惑をかけられません。よく吟味してください」
そういうわけで、殿下へお茶会などの招待を送ってきた貴族様達について調べるといろいろなことがわかった。借金で首が回らなくなった貴族様達や、あからさまに権力志向で公爵家の縁戚の名を借りて好き勝手なことをやりたがっている者達で、評判があまりよろしくない貴族様達からの招待ばかりだった。やはり、信頼できる人からの紹介が必要であると思われる。
殿下が結婚相手を探すためには、まずは結婚相手を紹介する人を探さなければならない、そういう状況になっていた。
殿下がまず頼ったのは父親であるジルバーン公爵様であったが、それはうまくいかなかった。そこで、次に頼る相手を決めなくてはならない。殿下はエルドリッチ子爵様に頼ることにした。
「殿下のためのお見合いパーティーが開かれるといううわさは耳にしていましたが、失敗に終わったのですか。公爵派の派閥の者から選りすぐってダメだったとなると、他を当たるしかありませんね。ドラゴンレース実行委員会のメンバーの中から殿下の結婚相手にふさわしい年頃のご令嬢に心当たりがある者がいないか確認してみましょう」
「エルドリッチ子爵様、お手数ですがよろしくおねがいします」
「ええ、わかりました。だが、必ずしも殿下の期待に沿えるようなご令嬢が見つかるとは限りませんのでそれは覚悟しておいてください」
それから数日後エルドリッチ子爵様から連絡があった。王都軍の兵士を束ねているブロンクス様のご令嬢が殿下と会ってもいいということらしかった。
「殿下、早速お見合い相手が見つかりましたね。相手はブロンクス様のご令嬢だそうですよ」
「ブロンクス様のご令嬢ですか。ブロンクス様の家は代々軍閥の家系でしたね、いったいどのようなことを話せばいいのでしょう?」
「別に普通に他のご令嬢とお話する時と同じようにすればよろしいのではありませんか?」
「そうですか。うむう、今から緊張してきました」
「まだ、お見合いの日まで3日もあります。今から緊張していてどうするのですか、初めてのお見合いでもないでしょうに……」
「そうんですけどね。なぜだか緊張してしまうのです。お茶をください」
殿下は緊張をごまかすようにお茶を飲んだ。
3日後、殿下とブロンクス様のご令嬢ソフィア様とのお見合いの日となった。場所はエルドリッチ子爵様がお屋敷を提供してくださった。
「はじめまして、殿下。ブロンクスの娘のソフィアと申します。父がいつもお世話になっております」
「はじめまして、ソフィア殿。ジルバーン公爵が3男バルディウスです。こちらこそブロンクス様にはお世話になっています」
こうして殿下のお見合いはまずは互いの自己紹介から始まった。ソフィア様は優しそうな面差しでとてもかわいらしい方だった。
「ソフィア殿のご趣味は何ですか?」
「私の趣味は庭の花壇の手入れですわ。流石にエルドリッチ子爵様のお屋敷ような立派な花壇ではないのですけど、色とりどりの花が咲く自慢の花壇ですのよ」
「それは素晴らしいですね。一度見てみたいものです」
「ぜひ一度お出でくださいませ。歓迎いたしますわ。ところで殿下のご趣味は何ですの?」
「そうですね、休みの日はよくリバーシをしていますね」
「リバーシですか。うちにもあります。そういえばあれは殿下が考案なさったとか?」
「いえ、あれは私の家臣であるそこにいるアルベルト君が考えたものです」
殿下は僕のほうを指し示してそう言った。家臣の手柄は主の手柄だ。別に殿下が考えたことにすればよいと思うが、殿下は正直者で、本当のことを話してしまう。
「そうだったのですか。リバーシはルールが簡単な割に面白くてうちでもよく遊んでいます」
「そうですか、それはうれしいですね。作って販売したかいがあります」
殿下とソフィア様の会話は弾んでいる。殿下はソフィア様のことを気に入ったのだろうか?僕が疑問に思いながら殿下の側で控えている。基本こういう場では殿下の側で控えていることが仕事なのだ。側に控えながらも、殿下たちの会話の様子を窺う。会話は順調に進んでいると思われる。お互いにこやかに微笑みながらなおも会話が弾んでいく。そして、殿下から決定的な質問が出た。
「こうしてお話してまいりましたが、私は結婚相手としてはどうでしょうか?」
「殿下は頼りがいがあり、素敵な男性だと思っています。ただ、私は軍閥系の貴族の家で育ち、その環境を当たり前として育ってきました。今日殿下とお話してみて私はそれに気がつき、自分は軍閥系貴族の環境ではないと生きていけないと実感しました。私では殿下を支えるのにはきっと不足しております」
「そうですか。それは残念です。ソフィア殿は素晴らしい女性なので、きっと良い伴侶に巡り合えることでしょう」
「殿下もきっと素敵な女性と巡りあえますわ」
そういうわけで、殿下とソフィア様とのお見合いはうまくいかずに終わった。途中の会話は弾んでいて、一見うまくいっていると思っていたのに、残念なことである。きっと縁がなかったのであろう。こうして殿下のお見合いは次へと持ち越されるのであった。次こそうまくいきますようにと僕は願うのであった。




