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バルディウス殿下のお見合いパーティーが開かれることが社交界へうわさとして流れるようになったようだった。自分の娘を売りこみたい貴族がお見合いパーティーが開かれるより先に自分の娘に合わせようと企み、お茶会などを開いて殿下を招待しようとしたのだった。殿下はジルバーン公爵様の面子を立てるため、お見合いパーティーが開かれるまではそれらのお茶会などに参加しないように決めたらしく、すべてお断りしていた。そして、殿下がお断りのために東奔西走しているうちに、お見合いパーティーが開かれることになった。
「殿下、ついにパーティーの日がやってきましたね。今日殿下の結婚相手が決まるかと思うと俺はうれしくてたまりません」
サモンドさんがパーティーのため身なりを整え準備した殿下に声をかける。
「ええ、ついにこの日がやってきました。私と結婚する相手がうまく見つかるでしょうか?」
殿下は不安と緊張を隠せない様子で若干声を震わせつつもそう言った。
「殿下、平常心です。落ち着いてください」
僕がそう言うと、使用人がパーティーの準備ができたと呼びに来た。そしてそのままパーティー会場へと案内された。そこには公爵様がすでにいた。
「父上、今日はこのような場を用意していただきまことにありがとうございます」
「うむ。今日は年ごろの令嬢がいる貴族だけでなく、年頃の令息のいる貴族も参加している。我が派閥内で子供の結婚相手が決まってない貴族をこの際集めて大お見合いパーティーを開くことになった。バルディウスよ、お前のほかにも結婚相手を探すライバルがいることになるが、後れをとらぬよう心してかかれ」
「父上、わかりました。他の者に負けぬよう頑張ります」
殿下と公爵様が話しているうちに招待された今日のパーティーの参加者が姿を現し始めた。どのご令嬢、ご令息も精一杯着飾っている。このパーティーで結婚相手を見つけようという気合が見えてくるかのようだ。中にはガチガチに緊張している者もいる。結婚相手を見つけるという自分の将来に大きく関わる一大イベントだ。緊張してない者の方が少ないといっていい。そんな緊張感漂う雰囲気の中パーティーは始まった。
パーティーの始まりは招待された貴族様達が主催者であるジルバーン公爵様に挨拶するところから始まった。父親である貴族が自分の娘を連れてきては名乗り、招待のお礼を言ってから自分御子供を紹介をする。そんな感じで何人もの貴族様達が挨拶に訪れた。自分の娘を連れてきている貴族様達は、この機会に公爵家と親戚になろうと必死でギラギラとした目をしていた。反対に連れてこられたご令嬢達は、殿下に気にいられるよう言い含められているのか、ガチガチに緊張してその笑顔もこわばったものとなっていた。
挨拶は終わり、後は若い者同士でという流れになった。ところが、みんなお互いにけん制しあっているのかまたは様子を見ているのか膠着状態に陥ってしまっていた。
「殿下、まずは殿下から声をかけていきませんと始まりませんよ」
「そうですね、では私から声をかけましょう」
殿下は近くにいたご令嬢に声をかけた。
「バビンドン卿のご令嬢のトリーシャさんでしたよね?」
「は、はい。そうでございます、殿下」
「トリーシャさんは普段どのようにして過ごされているのですか?」
「わたくしですか?わたくしは普段刺繍などをして過ごしております。他にはですね……」
殿下とトリーシャ様の会話が始まると、お互いにけん制しあっていた他のご令嬢、ご令息達も動き出し、それぞれ会話に花を咲かせ始めた。
そして殿下は次々と新たな令嬢に話しかけてはお互いのことを知ろうとして話題をふっては自分は笑顔で応えるというのを繰り返していた。とりとめのない世間話ばかりで、あまり深い話をしないことから、殿下がお気に召すご令嬢はいなかったのだろう。殿下の後ろに控えながら僕はそう思った。せっかくのお見合いパーティーの場ではあるが、殿下がお気に召すご令嬢がいないのなら仕方がない。とりあえずどこにも角が立たないようにつつがなくパーティーが終わるように努力しよう。
殿下はやはり気に言った女性が見つからなかったのか、気のない態度でご令嬢達と話していた。相手をしていたご令嬢も殿下が自分に気がないことを悟ったのだろう。早々に殿下のもとを去り、このパーティーに参加しているほかのご令息のところへと行ってしまった。
「殿下、お気に召すようなご令嬢はいなかったのですか?」
小声でサモンドさんが尋ねる。
「ええ、どうも誰もピンと来ることがなかったのです。うまく結婚した後のイメージを描けるご令嬢はいませんでした」
「それは残念でしたね。せっかくのパーティーですのに」
「今日は終始無難な態度で過ごします。とりあえずご令嬢達に失礼がないように、かつ余計な期待を持たせないようにしなくてはいけません。サモンド、アルベルト君協力をお願いします」
「わかりました。といっても、今のような態度で問題ないのでは?しつこく食い下がるご令嬢もいないことですし」
「そうですね。幸いなことにみんな聞き分けが良くて強行的な態度に出る者はいません。このままでパーティーを終わらせたいですね」
結果から言うと殿下の望み通りパーティーは無難に終わることができた。ついでにめでたいことに何組かのカップルもできたらしい。だが、肝心の殿下のお相手は見つからなかった。
「バルディウスよ、どうやら気に入った令嬢はいなかったようだな」
「はい、父上。せっかくパーティーを開いていただいたにもかかわらず申し訳ないのですが、どうも結婚相手にふさわしいと思えるご令嬢はいなかったもので……」
「そうか、気にるものがいなかったのは仕方のないことだが、私にはこれ以上すぐにお前の結婚相手として紹介できる者はいないぞ。結婚したいならば自分で探すのだな」
「はい、父上。わかりました。しばらくは自分で探してみようと思います」
「うむ。それではパーティーも終わったことだし帰るがよい」
こうして殿下のお見合いパーティーは相手を見つけられず失敗に終わった。僕は殿下が良い結婚相手を見つけられることを切に願ったのだった。




