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 朝が来て、僕は目を覚ます。今日はドラゴンレース実行委員会の活動がない日だった。殿下はゆっくりと一日を過ごす予定だといっていた。最近はドラゴンレースを行うためにいろいろと働いていて、忙しい日々が続いていた。今日はちょうど良い骨休めの日になるだろうと僕は思った。


 朝起きて着替えをし、まずは殿下を起こしに行く。そして殿下の着替えを手伝い、次は日課である剣の稽古を庭で行う。この剣の稽古はよほどのことが起きない限り毎日行っているものだった。貴族は人の先頭に立ち困難に立ち向かわなければならない。戦闘技能もそのためには必要だということらしい。今日は特に予定のないお休みの日ということで、いつもより時間をかけて剣の稽古を行った。僕は息が切れ、腕もなえて力が入らないくらい疲れてしまった。殿下とサモンドさんは長年剣の稽古を続けているせいか平気そうだった。僕の様子を見て殿下が尋ねてきた。

 「アルベルト君、辛そうですが大丈夫ですか?」

 「はい、殿下少し休めば大丈夫です。お二人は平気そうですね?」

 「おう、鍛えてるからな。お前ももうちょっと鍛えなきゃだめだな。何かあった際に殿下の身も自分の身も守れなくてはだめだ」

 「はい、頑張ります」

 「それでは、汗の始末をして朝食にいたしましょう」


 殿下の一声で今日の剣の稽古は終わった。僕はとても疲れていたので正直助かったと思った。汗を濡れた布でふいてきれいにし、朝食を食べに部屋へと戻った。朝食は公爵邸から借りてきている侍女のアンジュさんが作ってくれていた。やはり、侍女がいるのは助かる。もし、いないとなると、僕かサモンドさんが朝食の支度をしなければならない。剣の稽古が終わってから支度するとなるとだいぶ時間がかかることになる。朝食を食べるのが遅くなってしまうのだ。そういうわけで今日はアンジュさんのおかげですぐに朝食を食べることができる。ただし僕とサモンドさんは主人である殿下が食べた後に食べることになるが。

 「今日の朝食もおいしいですね。アンジュさん、ありがとうございます。本来なら公爵家の本邸のほうで働かなくてはならないのに、すみませんね」

 「いえ、殿下のために働けることは大変光栄なことです」

 「これからもよろしくお願いします。お給金は出しますので」

 「はい、ありがとうございます。これからも勤めさせていただきます」

 殿下は最近はリバーシの利益が入ってきているので殿下の金回りは良くなっている。そのおかげで僕らのお給金もちょっと上がったのである。リバーシがうまく売れて本当に良かった。

 

 殿下が朝食を食べ終わり、食後のお茶を楽しんでいる間に僕らは朝食を食べていた。殿下の言った通りおいしい朝食だった。アンジュさんは若いのに家事がかなり上手だ。流石公爵家で働いて散るだけのことはある。おいしい朝食を食べた後は僕らもお茶を楽しんだ。

 

 「殿下、本日の予定はないとのことですが、いったい何をしますか?」

 「特にすることはないのですが、部屋の中でゴロゴロしているのもつまらないですね」

 「街にでも行ってみますか?」

 「そうですね。それではたまには街に出てみましょうか。昼食も外食ですませましょうか。アンジュさんもたまには一緒に出掛けましょう」

 「よろしいのですか?ではご一緒させていただきます」


 こうして僕らは街へと繰り出すことになった。王都の街をゆっくりと散策するのはいつ以来だろうか?僕らはそこらのお店をのぞいては商品を手に取ってみるといったことをしてウィンドウショッピングを楽しんだ。いろいろなお店を見てまわると、いつの間にかお昼になっていた。僕らは昼食をどこかのお店でとろうということになった。せっかくだからおいしいお店で昼食を食べたい。僕らはどのお店で昼食をとるべきか悩んでいると、アンジュさんがお勧めお店の教えてくれた。侍女の仕事でよく街に出るアンジュさんはおいしい料理を作ってくれるお店の情報にも詳しかった。つくづく有能な侍女だなあと思う。早速アンジュさんお勧めのお店に行くと、そこは上品な雰囲気のあるいかにも高級そうなお店ではなく、大勢の庶民でにぎわう大衆食堂であった。本来なら殿下がお食事するのだからそれなりの格のあるお店に行かなければならない。だが、殿下はそれを望まれなかった。僕らと一緒の食事がしたいと言ったのだった。もの好きである。

 「随分と混んでますね」

 殿下が言った。

 「こんでいるということはそれだけ客に評価されているということです。味は期待できそうですね」

 「なるほど、確かに道理ですね、食事するのが楽しみです」

 「殿下、残念ながら4人用の席は空いてないそうです。席が空くまで少しばかりお待ちください」

 「わかりました。席が空くまで待ちましょう」

 しばし待った後席が空き僕らは席に着いた。

 「何にいたしましょう」

 店員が注文を聞いてくる。この店には何があるんだ?メニュー表など見当たらない。僕は困った時の助けとなる呪文を唱えた。

 「店長のお勧めで」

 すると殿下たちも同じものを頼んだ。そしてお金を払う。どうやら先払いのシステムらしい。待つことしばしの間僕は周りの様子を窺っていた。みんなおいしそうに料理を頬張っている。どうやら本当にこの店の料理はうまいらしい。そして料理が運ばれてくる。パンとスープと衣をつけて油で揚げられた肉が出てきた。揚げ物なんて転生してから初めて見た。この世界に揚げ物文化なんてあったのか?それともこのメニューを考えたのは僕と同じ世界から来た人なのだろうか?疑問に思いながらも肉にかぶりつく。久しぶりの揚げ物はとてもおいしかった。

 「これはおいしいですね」

 殿下が言った。

 「待った甲斐があったな」

 サモンドさんも満足したようだ。

 「食後はどうしますか?」

 僕は殿下に聞いた。

 「市場をのぞいてから帰るとしますか」

 「わかりました、そうしましょう」

 

 僕らはおいしい昼食を食べ終わり、市場へと繰り出した。いろいろな露店が並んでいて、見ているだけでも面白い。僕らはしばらく露店をひやかした。その後夕食用の食材をアンジュさんが買って、僕らは公爵邸の離れに帰ることにした。


 こうして僕らの休日は穏やかに過ぎたのだった。 


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