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一時の休みも終わり、ブレウワルド王国ドラゴンレース実行委員会の活動は続いていた。今日も会議が行われる。
「それでは会議を始めようか。まずは各人の進捗状況を確認しようか?」
エルドリッチ子爵の発言で会議が始まった。
ウェスカー様が発言する。
「ドラゴンの血統登録料とレース登録料を決定した。これらを公布し、登録者を公募しようと思う。どのくらいの登録者が集まるかは未知数だね」
「うむ、登録者は早めに募集しておいた方がいいな。数によっては本番前に予選のレースを行う必要がある。時間に余裕を持っておきたい」
「それでは登録の締め切り日を余裕を持った日取りで設定しておきますね」
「うむ、そうしてくれ。次はハミルトン殿の方はどうだね?」
「ドラゴンレース開催のための関係法令は大筋は出来上がってきております。後ほど確認していただき、意見があればお願いします。ドラゴンレース実行委員会の会則の方は、先日提出したもので異論がなかったため決定とします。もしそれで不都合が出たならその都度修正することになります」
「うむ、わかった。後ほど確認しておこう。では、ブロンクス殿からは何かあるかね?」
「はい、王族や貴族のための特別観覧席の外装工事が終了しました。現在は内装を整えるための専門の職人が作業を行っています。また、王都軍が所有しているドラゴンを用いて模擬レースを行うための準備をしているところです」
「うむ、順調だな。模擬レースが行えるようになったら連絡をくれたまえ。まずは一度ドラゴンたちを走らせてみないとな。どんな問題があるかわからん。」
「そうですね、実際にドラゴンを走らせてみることは大切です。準備ができ次第連絡します」
「他に何かないかな?なければ本日の会議はこれで終了とする」
本日の会議が終了して解散する。僕は会議の様子を見ながら、いよいよ模擬レースができるところまで準備が整ったことを大いに喜んでいた。これでついにドラゴンが走るところを見られるのだ。ここまで来るのは本当に長かった。転生してからは大好きな競馬をもう見ることはできないと諦めていた。7歳の時に初めて人を乗せて走るドラゴンを見て、これならドラゴンでレースができるんじゃないかと考えた。そしてそれから文字の読み書きを身に着け少しでもいい地位に立てるよう勉強をした。そして運よく殿下の家臣にしてもらい、懸命に努力した。その成果がもうすぐ形になる。こんなに嬉しいことはないと僕は浮かれていた。
それから数日後、ついに王都軍のドラゴンを集めて模擬レースを行う日がやってきた。集めてきたドラゴンは10頭で、普段は遠方への伝令などの任務をこなしているそうだ。10頭のドラゴンをスタート位置に並べる。競馬のようなスタートと同時に開くゲートなどない。その代わりにワイヤーを張ってそれを上に高く持ち上げた時スタートすることになっている。そしてコースを一回りしたらゴールである。
ワイヤーが持ち上げられ、レースがスタートする。ドラゴンの集団が一斉に飛び出した。走りだしたドラゴンの集団はひとかたまりになったまま走り続ける。そしてひとかたまりのままゴールに飛び込んだ。こうして初めての模擬レースはあっという間に終わったのだった。
僕は頭を抱える。先ほどの模擬レースはただ集団ひとかたまりになったドラゴンがそのままゴールしたというだけで、まるでレースには見えなかった。改善しなくてはならないことが山ほどある。僕はそう思った。
「ひとまず無事に走り切りましたね」
殿下がそう言った。
「さて、模擬レースをしてみたわけですが、何か気づいたことがある人はいいませんか?」
エルドリッチ子爵が言った。
「ドラゴンがかたまってゴールしたわけですが、着順がきちんと分かった人はいますか?」
殿下が言ったが誰も答えなかった。そうなのだ。手段でゴールしたわけだが、どのドラゴンが何位なのか僕にははっきりわからなかった。いや、僕だけじゃなく見ていた人全員がわからなかっただろう。ドラゴンは体表の鱗の色模様で個体差ありじっくり見れば判別できないこともないが、すごいスピードのしかも集団でゴールに飛び込まれると、とてもじゃないが判別して順位を付けることなどできない。競馬では写真判定があるがこの世界にはそんなものはない。だから僕は発言の許可をもらって言った。
「ドラゴンの個体を見分けやすくするために乗っている騎手の方の帽子を色分けするのはどうでしょう?それと着順を監視する専用の役割を持った人をおいた方がいいと思います」
「アルベルト君はそう言ってますけど何か意見のある人はいませんか?」
殿下が尋ねる。
「確かにドラゴンの模様だけだと見分けにくい。帽子で色分けをしてみるのはいいかもしれないね。それに、着順に関しても曖昧だと揉め事の種になる。権威ある人をおいて着順をはっきりさせておくのは大事かもしれないな。」
エルドリッチ子爵様が僕の意見に賛成してくれた。
「ではこの件は賛成ということで進めましょう。ウェスカー殿、次までに色分けした帽子を用意してください。ハミルトン殿は着順の判定人にふさわしい人を探しておいてください」
「「わかりました」」
二人が声をそろえて返事をする。
「他に何か気づいた人はいませんか?」
「コースを1周だけというのは短すぎませんか?もう少し走らせた方面白いんじゃないですか?」
ブロンクス様がそう言った。これには僕も同意見だった。もともと練兵場だったこのレース場はコースも短く1周だけだとドラゴン同士の駆け引きがあまりないままゴールしてしまう。
「では試しに今度はコースを2周させてみましょうか?」
そういうわけで、今度はコースを2周するレースを行うことになった。スタート位置にドラゴンを並ばせる。ワイヤーが持ち上がって2度目の模擬レースがスタートした。またしてもスタートから一団となって進むレース運びだ。競馬の作戦である『逃げ』をみんなしていて、『差し』や『追い込み』をするドラゴンはいない。レース文化がまだないのだから仕方ない。そういったものはこれからできてくるのだろう。レースは1周目が終わり少しずつ集団がばらけてくる。2周目も半ばとなったころ先頭を走っていたドラゴンが失速していく。そして先頭が入れ替わってドラゴンたちはゴールしていった。
「2周走らせてみたけれどどうでしたか?」
みんなの意見は割れた。
「ドラゴンを何週走らせるかは次回に要検討ですね。今日はもうドラゴンも疲れているでしょうし終わりにしましょう」
こうして初めての模擬レースは課題を残して終わったのだった。




