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バルディウス殿下がエルドリッチ子爵様にリバーシを披露しに行った日から数日たったある日のこと、僕らはリバーシの売れ行きを尋ねにハルボアヒル商会へと足を運んだのだった。
「バルディウスですがセヴェロさんはいらっしゃいますか?」
「これは殿下。ようこそいらっしゃってくださいました」
「お忙しいところ申し訳ありませんが、リバーシの売れ行きが気になりましてそれで尋ねにやってきたんです」
「リバーシですか。売れ行きは好調です。庶民向けの廉価品の方は買いたいという商会がいくつかあり、商談をいたしました。思ったより売れそうなので増産を計画中です。貴族様用の高級品のほうも既に何人かの貴族様から問い合わせをいただきました。こちらはゆっくりと売れ行きを伸ばしていきそうです。これに関してできれば殿下にご協力をお願いしたいのです」
「私の協力ですか?なんでしょう?」
「殿下にはお茶会や晩餐会に出席して貴族様達にリバーシを宣伝してきてほしいのです」
「先日、エルドリッチ子爵様のところへリバーシを持って行ったのですが、他の方にもそうした方がいいということですか?」
「ええ、できればそうしていただきたいのです。貴族様用の高級品の方は庶民用の廉価品と比べて利益が桁違いなのです。少しでも多くの貴族様に買っていただきたいのです」
「わかりました。父上とも相談しながらやってみましょう」
「おお、それは心強いです。是非ともお願いします」
こうしてハルボアヒル商会からリバーシの売れ行きを聞いた僕達は公爵邸の離れに帰ろうとしていた。すると帰り路の途中にある広間に人混みができていた。何事かと思い僕らが近づいてみると、エルドリッチ子爵様がおっしゃっていた建国400年目の記念の催しものの案を募集することについての布告、掲示が行われていた。布告するものが大きな声で言った。
「我らがブレウワルド王国の建国400年目を記念するにふさわしい催しものの案を広く民からも募集することになった。見事に案を採用されたものは報酬として銀貨10枚が与えられる。催しものの案は紙に詳細を記載して王城の門番に提出することとする。締め切りは今日から30日後とする。繰り返す。我らがブレウワルド王国の……」
一通り聞き終えた僕らは、人混みから離れた。そして帰り道の途中で話し合った。
「エルドリッチ子爵様のいう通りに布告、掲示されましたね」
「ええ、そうですね。エルドリッチ子爵様の耳の速さには驚きますね」
「それにしても催し物の案は紙に書いて提出ですか。字を書ける者がそんなにいますかね?」
「字を書けないものでも代書屋に頼めば書いてもらえるだろう」
「代書屋ですか?」
「字を書けないものの代わりに言葉を文字にして書類を書いてくれる商売だ」
「そんな商売が都にはあるのですか」
僕が生まれ育ったオクタウス村にはそんな商売はなかった。字の読み書きができる村長さん一家がその役目をしていた。そもそも字の読み書きが必要になることはほとんどなかったが。
「人が多い街にはあると思いますよ。それにしても報酬が銀貨10枚とは少ないですね」
「そうですか?銀貨10枚なら庶民は普通に2年は暮らせますよ?」
「確かにそうですが、実際に応募するのは貴族や大商人がほとんどでしょう。その人達にとっては少ないと感じるのではないでしょうか?」
「そうかもしれませんね?」
「それより、アルベルト君は催しものの何かいい案があったのではないですか?応募してみますか?」
「そうですね、応募したいとは思っているのですが、今のままだと採用されないと思うので、もう少し煮詰めてから提出したいですね。それでですね殿下、今日からしばらくの間この催しものについていろいろ調べたいのです。そこで時間をいただきたいのですが……」
「それは殿下に仕えないで、建国400年目の記念式典の催しものを考えたいということか?」
サモンドさんがちょっと怒ったようにそう言った。やはり殿下に仕えてる僕が何日も自由な時間を得ることは無理なお願いだっただろうか。
「まあ、待ちなさいサモンド。アルベルト君はリバーシを考えてくれた実績があります。それに免じてしばらくの間自由行動を認めましょう」
「ありがとうございます、殿下」
「まあ、殿下がそういうのなら」
サモンドさんも何とか納得してくれたようだ。
「アルベルト君がどんな案を考えてくれるのか楽しみにしてますよ」
こうして僕は建国400年目の記念式典でドラゴンレースを行うための準備に入った。他の人の案を押しのけて僕の案が採用されるための強みをドラゴンレースに盛り込まなければならない。僕は東奔西走して情報を集め、少しずつドラゴンレースの案の改善を行っていった。
僕がそうしている間、殿下のほうも忙しそうであった。既にリバーシを手に入れている王家や公爵様、子爵様からリバーシを紹介された貴族様が自分たちもと欲しがり、バルディウス殿下がリバーシを作ってると知って、お茶会や盤再開やらと社交の場にバルディウス殿下を招待したのである。社交の場に招待され貴族様の間に顔と名前が広まることは貴族として名誉なことだ。その上、リバーシの売り上げから利益も手に入るのだ。殿下は喜んで招待された社交場に顔を出し、精力的にリバーシを売っていたのだった。
「平の宮廷貴族分の年金しかもらえなったころに比べると雲泥の差ですね」
リバーシの利益からの殿下の取り分が手に入り殿下はホクホク顔でそう言った。
「うまくいかないと言われながらも商売に手を出そうとする貴族の気持ちがわかりますね」
「それよりアルベルト君。君の方の進捗具合はどうですか?」
「構想はできました。いよいよ大詰めの資料作りですねもうすぐ完成できると思います。完成しましたら殿下に読んでいただきたいと思っているのですが……」
「ええ、もちろんです。私もアルベルト君が力を入れて作った催しものの計画案を呼んでみたいと思っていましたから」
「では、殿下。完成しましたら持って行きますのでよろしくご査収ください」
僕はその日から2徹して計画案の資料を作り上げた。そして約束通り殿下へと見てもらうために渡したのだった。そしてそれを見た殿下は言った。
「こ、これを提出するのですか?」




