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サモンドさんがリバーシを取り出してテーブルの上に置く。
「この遊具はリバーシといいます。早速遊び方を説明しましょう」
そう言って殿下はリバーシの遊び方を子爵様達へ教える。一度の説明で子爵様達はルールを理解したらしく、早速実際に遊んでみようということになった。
まずは、殿下と子爵様が対局する。昨日まで行った練習の成果があったのか殿下が勝利する。子爵様はうなって言った。
「うむう、殿下の勝利ですな。しかしこのリバーシというものは簡単なルールなのに奥が深い」
「父上、面白そうです。ぜひ私にもやらせてください」
「うむ、いいだろう。バルディウス殿下、お相手をお願いできますか?」
「ええ、もちろんです。ではシュバルツ君、対局をしましょう」
今度は殿下とシュバルツ様の対局が始まった。殿下は手を抜くことなく対局し、勝負は殿下の勝利となった。シュバルツ様は負けず嫌いなのか、眉間にしわを寄せとても悔しそうにしていた。
「殿下、もう一度対局をお願いします」
「奥様がまだ対局してません。次は奥様としてみてはどうですか?」
「母上、いいですか?」
「ええ、私もルールはおぼえました。やりましょう」
シュバルツ様とアレクトラ様が対局を始める。接戦を制したのはシュバルツ様だった。
「あら、残念。負けてしまいましたわ」
「やった勝ちました」
それぞれが声を上げる。
「リバーシを実際やってみていかがでしたか?」
殿下が尋ねる。
「これは良い。実に良い遊具です。ルールは簡単でゲームとして奥が深い。これは貴族だけではなく平民の間でも流行りますぞ」
「リバーシは公爵家の専売品としてハルボアヒル商会が売りに出すことになっています」
「むう、うちの商会では扱えんませんか?」
「ハルボアヒル商会から買って売る分には構わないでしょう」
「本当ですか、殿下?」
「勝手に作られて売られると私たちの利益にはなりませんが、ハルボアヒル商会から買われるとなると別です。売れた分の利益から一定分の割合で私たちにも利益が入ってくるのです」
「なるほど、そうですか。まあ、ジルバーン公爵の紋章が刻まれたものを勝手に作って売る輩はそうはいないでしょう。私はハルボアヒル商会から買って売ることにいたしましょう」
子爵様はそう言うとお茶を手に取って飲んだ。
「そうしてくださると助かります」
「そういえば殿下こんな話はご存知ですかな?」
「どんなお話でしょう?」
「我らがブレウワルド王国は来年に建国400年目の節目の年を迎えます」
「ええ、そうでしたね」
「その建国400年目を祝う式典ですが問題がありましてね」
「問題ですか?建国300年目を祝った式典と同様にやればいいのではないのですか?資料が残っているのではないのですか?」
「それなんです。資料によると王都内を軍を率いたパレードをしたそうなのですが、陛下がそれでは面白くないとおっしゃられまして……」
「陛下なら確かに言いそうですね」
「それで宮廷会議で代案を考えたのだそうですが、それも陛下は気に入らなかったそうで……」
「では、どうするのですか?」
「陛下は宮廷会議でいい案が出ないなら一般貴族や平民から案を募集するとおっしゃったそうですよ」
「相変わらず陛下は無茶をしますね」
「一般貴族や平民からいい案が出なかった場合、前回と同様にパレードをするということで宮廷会議も認めたようですよ」
「宮廷会議で認められたのですか?驚きましたね」
「まあ、宮廷は一般貴族や平民からたいした案などでないと思っているのでしょう。それにそうでもしないと陛下をなだめられないと思ったのでしょう」
「なるほど、それもそうですね」
「間もなくこのことが王都で布告、掲示されると思います。殿下も何かいい案があったら提出してみるといいですよ。うまくいけば式典準備の役職につけるかもしれません」
「それはいいですね。貴重な情報をありがとうございます。何か考えてみましょう」
「殿下がリバーシを考えられたように、また面白い案を考えつくのを楽しみにしています」
「期待に応えられるよう頑張ってみます」
殿下と子爵が話をしている間、母子で再びリバーシをしていたらしくシュバルツ様の声が聞こえてきた。
「今度は負けました……」
しかし、僕はそれよりも先ほどの子爵の話に興味が向いていた。建国400年目の記念式典にやるイベントにドラゴンレースを行わせることはできないか。僕はそう考えていたのだ。この国は初代国王がドラゴンに乗ってこの辺りの土地を平定してできた国である。その歴史から、ドラゴンに乗ってレースを行い順位を決めるイベントを建国記念に行っても不自然ではないはずだ。僕はそう思い、何とか記念式典にドラゴンレースを行わせることができないか考えていた。
僕が自分の考えに夢中になっているうちに時間は過ぎてお暇する頃となっていた。
「それではそろそろ帰るとしましょう。本日はありがとうございました」
「いえ、こちらこそこんな面白い物をありがとうございました」
「殿下、今日は楽しかったです。またいらっしゃってください」
「はい、ありがとうございます。シュバルツ君もお元気で。それでは失礼します」
殿下は挨拶をして公爵邸の離れに帰るのだった。
「アルベルト君は子爵様から建国記念の式典の話を聞いてから考え事をしているようでしたね」
「申し訳ありません、殿下」
「いえ、それで何か面白いことでも考えついたのですか?」
「ちょっと思いついたことはあるのですが、子爵様のおっしゃっていた布告、掲示の内容を見てからでないと何とも言えませんね」
「それはそうですね。どんな条件が付けられているのかわからなければどうしようもないですからね」
「それよりも、今日のエルドリッチ子爵様へのリバーシの売り込みはうまくいきましたね」
「ええ、大成功でした。子爵様のかかわる商会でも売ってもらえそうですし、リバーシが大流行するかもしれませんね」
「そうなると殿下の経済情勢的にも良いのですが……」
「まあ、私の経済状況はともかく、せっかく作ったからには売れてほしいですね」
「バルディウス殿下、夕食の準備ができました」
アンジュさんがやってきて夕食の準備ができたことを告げる。こうして今日一日が終わるのだった。




