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ジルバーン公爵家の専売品となったリバーシが王家お墨付きの遊具となったことをバルディウス殿下は公爵様に報告に行った。
「ほう、王家のお墨付きがもらえたか。これで貴族にリバーシが広がるのが早まるな」
「はい。貴族に広まってくれるなら、いい利益が期待できます」
「うむ。バルディウスよ。時間があるならエルドリッチ子爵のところへもリバーシを持って行くがよい。彼は幅広い人脈を持っているとともに、趣味人でもある。新しい遊具であるリバーシを知れば喜んで広めてまわるだろう。リバーシの普及に大いに役立つはずだ」
「確かにエルドリッチ子爵様なら喜びそうですね。わかりました父上。貴重な助言をありがとうございます。早速子爵のところへ持って行きたいと思います」
公爵様から助言をもらい僕達は自分たちが住む離れへと帰ってきた。
「子爵様へとお目通りするための手紙を書きましょう」
殿下はそう言って手紙を書き始めた。殿下が子爵様に会うためには、まず会いたい旨の手紙を子爵様に出し、いつなら都合がいいのか返事をもらい、ようやくその日に会いに行くという迂遠な方法をとらねばならない。実に面倒なことだ。
「書き終わりました。サモンド、エルドリッチ子爵様のお屋敷の場所はわかりますね。手紙の配達を頼みます」
「了解しました。王都の地理の勉強のためにアルベルトも連れていきます。アンジュは残りますので何かありましたら彼女に頼んでください」
「わかりました。気を付けていってきてください」
こうして僕らはエルドリッチ子爵様の住むお屋敷へ手紙を届けに行くのであった。道中、見かけたお屋敷が誰のものかという説明が入りながら子爵様のお屋敷へと向かう。公爵邸からそう遠くない所に子爵様のお屋敷はあった。お屋敷につくと早速サモンドさんが口上を述べた。
「我々はジルバーン公爵が3男であるバルディウス殿下の遣いである。殿下からエルドリッチ子爵様へとしたためた手紙を持って参りました。子爵様へとお渡し願いたい」
手紙を門番へ受け渡す。
「確かにお預かりいたしました」
「それは失礼します」
そう言って屋敷へと帰る。これで殿下が書いた手紙を子爵様が読まれて、子爵様のからの返信が来るのを待てばよい。
「殿下、ただいま帰りました。手紙は無事にエルドリッチ子爵家の門番へと渡してまいりました」
「2人ともご苦労様でした。お茶でも飲んで休んでください」
アンジュさんがいれてくれたお茶はおいしかった。
翌日、早速エルドリッチ子爵様からの使者が来て子爵様にお会いする日程が決まった。
「明後日の昼過ぎに子爵邸にお伺いすればよろしいのですね」
「はい、お館様は王家のお墨付きをいただいた遊具を楽しみに待っていると申しておりました」
「王族の評判はよいものでした。きっと子爵様も楽しんでいただけるでしょう」
「それは素晴らしいですね。では、私はそろそろこれにて失礼いたします」
そう言って子爵様の使者が去った。
「エルドリッチ子爵にお会いして対局するとなった時あっさり負けてしまうと面子が立ちません。当日までにリバーシの練習をしておきましょう」
こうして僕達はリバーシの練習に励んだ。何局も何局も対局しすっかり疲れ果ててしまうほどだった。
「どうでしょうか?少しは腕があったのでしょうか?」
「これだけ対局したのですから、きっと上達したことでしょう」
「俺、しばらくはリバーシしたくない」
対局のし過ぎでサモンドさんはリバーシに飽きてきたようだ。
「まあ、明日は子爵様を尋ねに行く日ですから今日はこれくらいにして休みませんか?」
「そうですね。大分対局をこなしましたし、これくらいにしておきましょうか」
「それでは殿下、お休みの準備を整えさせていただきます」
そう言って僕とサモンドさんで殿下をパジャマに着替えさせた。
「それでは殿下、おやすみなさいませ」
「はい、2人ともおやすみ」
僕らは自分たちの部屋に下がった。
「今日は1日中リバーシをしてましたね」
「ああ、流石に参ったぜ。あんなにやるとは思わなかった」
「これだけやったのですから、明日のリバーシのお披露目はうまくいくといいですね」
「ああ、エルドリッチ子爵は貴族にも商人にも影響力があるお人だ。うまくいってリバーシがバンバン売れるといいな」
「はい、そうですね。いっぱい売れて利益をあげてほしいです」
「じゃあ、そろそろ寝るぞ。おやすみ」
「おやすみなさい、サモンドさん」
翌日、昼食をとった僕らはエルドリッチ子爵様のお屋敷へ向かった。子爵様のお屋敷にはすぐにつくことができた。
「我々はバルディウス殿下の一行です。本日はエルドリッチ子爵様とお会いする約束があるのですが……」
「はい、伺っております。ただいま案内の使用人を呼びますので少々お待ちください」
使用人が来てお屋敷の中へ通される。お屋敷は立派でそこら中に絵画を始め多くの美術品が飾られていた。僕達はこのお屋敷の主人であるエルドリッチ子爵がいる部屋へと案内された。そこには子爵様だけではなく、子爵の奥様とご子息らしき僕と同じくらいの年の子供もいた。
「エルドリッチ子爵様、本日はお招きいただきましてありがとうございます」
「ようこそお出でくださいました、殿下。紹介させていただきます。妻のアレクトラと息子のシュバルツです。さあ、殿下にご挨拶を」
「アレクトラです。殿下、お会いするのは殿下の独立記念の晩餐会以来ですわね。よろしくお願いします」
「はじめまして、バルディウス殿下。本日はなにやら王家お墨付きの新しい遊具を持ってきてくださると聞いて楽しみにしておりました。」
「奥様、お久しぶりです。はじめまして、シュバルツ君。ぜひ楽しんでくれるとうれしいです」
挨拶も終わり、まずはお茶でもということで殿下たちにお茶が用意された。お茶を飲んでる間中シュバルツ様がもう待ちきれないといった様子で目を輝かせて殿下のほうを見ていた。殿下は苦笑しながら言った。
「それではおうけからお墨付きをいただいた新たな遊具であるリバーシをご披露しましょう」
殿下はサモンドさんに目で合図を送る。するとサモンドさんはスッと前へ出てリバーシの入った包みからリバーシを取り出したのだった。




