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 今日はいよいよ王城へ行き、国王陛下に殿下がお目通りする日である。殿下はその場に僕足りも連れていくと言っていた。僕は国王陛下という国の最高責任者の前に出るなんてはじめてで、緊張してあまり眠れなかった。

 「おはようございます、サモンドさん」

 僕は眠い目をこするりながら言った。

 「おはよう、アルベルト。さあ、殿下を起こして今日も剣の稽古だ」

 サモンドさんは慣れているせいか平気そうで、いつも通りに起きて、殿下を起こしていた。そして、今日も日課である剣の稽古をみんなでした。

 「今日の稽古はここまでにしましょう」

 殿下の一声で今日の剣の稽古を終える。そのあとは汗を洗い流して朝食をとった。朝食の後片付けも終わり、いよいよ公爵様とともに登城する時間となった。


 登城するのにふさわしい服装に着替えて僕らは公爵家の本邸の前に並んで公爵様を待った。

 「バルディウスよ、王城へ行く準備はできているな」

 「はい。できております」

 「ならば、王城へ向かうぞ。車に乗れ」

 王城へは2頭のドラゴンに曳かせた車で向かうらしかった。さらに、僕らがシルバスタッドから王都へやって来ると気に同行したシモンズ様とその兵士たちが護衛としてついて歩くことになった。僕は子供で、単に歩いてついて行くのでも足手まといになるため、殿下と一緒に車へと乗ることになった。車には公爵様も乗っているためこれまた緊張する。だが、公爵様は僕なんかまるでいないように振る舞っている。貴族様の家臣の扱いなんてそんなものなんだろうか。


 「バルディウスが登城するのはいつ以来になる?」

 「確か昨年の夏に登場したのが最後でしたね」

 「では、1年ぶりくらいになるのか。王城でとるべき態度はおぼえているだろうな?」

 「はい。大丈夫です」

 「城についたらまずは国王陛下と爵位持ちである者が集まって行う定例の会議が行われる。お前が陛下に謁見できるのはそれが終わってからになるだろう。それまでは控室でおとなしくしているがよい」

 「わかりました。そうします」


 公爵様と殿下が話をしているうちに王城へと到着したようだった。車から降り、王城の入り口前へと立つ。王城は堅牢で立派なつくりをしていた。シルバスタッドの御城よりもさらにでかい。僕は思わず見とれてしまっていた。

 「中に入りますよ」

 殿下に声をかけられて慌てて殿下の後へと続く。

 「では私は会議へと行ってくる」

 「行ってらっしゃいませ、父上。私たちは控えの間に行きましょう」

 「控えの間はこちらになります。ついてきてください」

 王城の使用人がそう言って先導してくれる。僕は殿下の後に遅れないようについて行った。王城は広く複雑で、殿下とはぐれたら迷子になってしまうだろう。

 「こちらがバルディウス殿下の控えの間となっております。どうぞごゆっくりとおくつろぎください」

 そう言うと、使用人は退室していった。控えの間には高価そうな調度品が並んでいる。僕はそれ等を傷つけないよう細心の注意を払って殿下の側で控えていた。

 「のどが渇きました。お茶を飲みたいですね」

 殿下がそう言うと、サモンドさんが王城で働く侍女を呼び、お茶の用意をするよう申し付けた。侍女はティーセットを持ってくると優雅な手つきで殿下のお茶を用意した。さすが王城の侍女は教育が行き届いているなあと僕が侍女の手並みに見とれていると、侍女は一礼をして去っていった

 「会議が終わるまで大分時間がかかるでしょう。それまで暇ですね。何か面白いものでもないのでしょうか?」

 殿下はただ座っているのに飽きたのか、部屋をうろうろとしながら、辺りの物をいろいろと物色し始めた。

 「おお、チェスがあるではないですか。チェスをやりましょう」

 「チェスですか?」

 チェスとはお互い駒を動かして相手のキングをとれば勝ちというあのボードゲームのチェスだろうか?僕が疑問に思って殿下に質問すると、まさしく前世の世界にあったチェスと同じものであった。この世界で偶然前世の世界と同じチェスが生まれたとは考えにくい。きっと僕と同じような転生者か転移者がいるもしくはいたのだろう。僕だけが特別にこの世界へ転生できたと考えるよりは、他にも転生者や転移者がいると考える方が自然だ。そのうち出会うことになるのだろうか?そんなことを考えていると、チェスの盤を持った殿下が言った。

 「農村で育ったアルベルト君は知らないでしょう。私とサモンドでやってみせましょう」

 殿下たちは向かいあって席に着き。チェスの駒を並べ始めた。そして対局が始まる。僕が見たところ終始盤面は殿下がリードしていて、そのまま殿下が勝利した。

 「私は昔からチェスが得意なんです」

 殿下は自慢気にそう言った。

 「久しぶりにチェスをしましたが楽しかったですね。アルベルト君にもルールを教えますのでおぼえたら対局しましょう」

 「わかりました。よろしくお願いします」

 こうして急きょ僕に対するチェス教室が始まった。僕はチェスのルールは何となく程度でしか知らなかったので真面目に学んだ。何とかチェスのルールをおぼえて、殿下と対局する。僕はあっという間に負けてしまった。殿下は初心者が相手でも容赦がなかった。

 「負けましたね」

 「ルールはちゃんとおぼえたようですし、強くなるのはこれからですよ」


 チェスで遊び終えると、公爵様が会議を終えて戻ってきた。

 「父上、会議は無事に終わったのですか?」

 「ああ、特に何もないつまらん会議だった」

 「このまますぐに陛下に謁見するのですか?」

 「いや、謁見するのは昼食をとった後になるとのことだ」

 「そうなんですか。わかりました。私たちの昼食はどうするのですか?」

 「この部屋に運ばれてくる手はずになっている」


 公爵様のおっしゃった通り、侍女たちの手によってこの部屋に昼食が運ばれてきた。この昼食を食べ終わるといよいよ陛下との謁見である。陛下とはいったいどんな方なのだろうか?僕はまた緊張してきて手が震えるのであった。







   



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