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 王都の公爵邸の離れで僕たち3人の新たな生活が始まった。だが、食料や薪など生活するには足りていないものがある。とりあえずは本邸から融通してもらって済ませたが、これからは自分たちで足りない物を用意しなければならない。よって、王都の商店について知っておかねばならない。バルディウス殿下やサモンドさんも王都の街にはあまり詳しくないとのことだったので、王都の街並みにも詳しい本邸で侍女をしている娘に王都の案内をしてもらうことになった。

 

 「王都のジルバーン公爵邸で侍女をしておりますアンジュと申します。本日は殿下に王都の案内をさせていただきます。どうかよろしくお願いします」

 アンジュと名乗る侍女はきれいな所作で礼をして自己紹介をした。

 「私たちは王都の街並みには詳しくありませんので案内してくれるのは助かります。本来侍女の仕事でお忙しいところ申し訳ありませんがこちらこそよろしくお願いします」

 殿下も丁重に挨拶を返す。


 アンジュさんの説明では、王都もシルバスタッドの町と同じように貴族向けの高級店が並ぶエリア、庶民向けの店が並ぶエリア、露店が並ぶ市場と別れているようだった。


 まずは公爵邸から近い高級店のエリアへと案内してもらう。そこはシルバスタッドの町の高級店のエリアで見たお店よりもきれいで立派なお店が並んでいた。シルバスタッドの町並みを見た時も驚いたものだが、王都はそれ以上でさらに驚かされるものであった。お店の種類も多種多様で、やはりブレウワルド王国一の賑わいのある場所だと思った。


 続いて庶民向けのお店が並んでるエリアに案内される。ここもまた、シルバスタッドの庶民向けのお店のエリアに比べ広くて賑わっていた。さすが王都と呼ばれることだけはあると思った。


 次は市場のあるエリアだが、インデラウンドの中央区、東地区、西地区、南地区のそれぞれにあるそうだ。ちなみに北地区は王城と貴族街があり、市場はないそうだ。とりあえず試しに一番近い中央区にある市場へと行ってみることにした。そこは予想を超える賑わいであった。立ち並ぶ露店に行き交う人々達。そのどれもがシルバスタッドの市場に負けていない。それがこのほかにあと3か所もあるのだ。僕は驚いて唖然とした。この世界は中世欧州のような世界だと思っていたが、それよりももう少し豊かな世界であるのかもしれなかった。そして僕は思った。これだけの人と豊かさがあれば競馬ならぬドラゴンレースの開催も可能あるのではないかと。

 僕らは露店で簡単に昼食を済ませ、市場では不足していた食料品と薪を買った。これで当面の生活はできるはずだ。


 市場の案内を終えて最後にやってきたのは高級店エリアにある1つのお店だった。そこはハルボアヒル商会という商会の支店で公爵家御用達のお店だった。大抵のものはこの商会に頼むと用意してくれるらしい。店の中に入ると、髭を蓄えた恰幅の良いおじさんが出てきた。

 「ハルボアヒル商会王都店へようこそいらっしゃいました。わたくし当商会の会頭をしておりますセヴェロと申します。お客様は本日は何をお探しでしょうか?」

 セヴェロと名乗ったおじさんはとても愛想よくそう言った。

 「私はジルバーン公爵が3男バルディウスと申します。これから王都に滞在することになりましたので、いろいろお世話になるだろうハルボアヒル商会へと挨拶に参りました。こちらは家臣のサモンドとアルベルトです。よろしくお願いします」

 殿下が挨拶すると、セヴェロは驚きながらも恐縮し言った。

 「本来ならばこちらから出向いて挨拶するところ、バルディウス殿下自らいらっしゃってくださるとは大変光栄なことです」

 「私は王都に不慣れなもので、買い物となるとこちらを頼ることも多くあると思います。今後ともよろしくお願いします」

 「私どもでよければ、できる限り殿下にお力添えさせていただきます。どうぞこちらこそよろしくお願いします」


 ハルボアヒル商会でのやり取りを終えると僕らは公爵邸へと帰ることにした。今日の王都見学はとても有意義だった。王都の地理もおぼえたし、王都が大変豊かで活気があることがわかった。後はそれを踏まえて僕のドラゴンレース開催計画を練らねばならない。何かいい案はないだろうか。僕がそう考えているうちに公爵邸へと到着していたようだ。

 

 「アンジュさん、今日は王都の案内ごくろうさまでした。おかげで王都の地理を知ることができました、どうもありがとうございます」

 「いえ、お役に立てたのなら何よりですわ。それでは私は本邸のほうへ帰らせていただきます」

 「アンジュさん、どうもありがとうございました」

 僕らは今日一日王都の案内をしてくれたアンジュさんに礼を言うと離れへと帰った。


 「無事に王都の地理を知ることができて、これからの生活は大丈夫ですね」

 殿下が朗らかにそう言った。

 「殿下、離れには侍女がいないので僕たちで炊事、掃除、洗濯などをしなくてはなりません」

 僕がそう言うと、殿下は困ったように言った。

 「侍女ですか……。これ以上人を雇うとなると私の小遣いでは厳しいのです。父上と話して本邸から侍女を借りられないか交渉してみるとしましょう。今日のところはサモンドとアルベルト君とで家事をするということでよろしくお願いします」


 そういうわけで、夕飯は僕が作ることになった。この世界に転生してからは初めてとなる料理である。僕は材料を用意し洗い、切りそして煮込んで何とか麦粥を作ったのだった。ガスコンロと違って、薪での火加減の難しさには閉口した。そうして何とか作った麦粥は普通に食べられるものだったのらしく、殿下からの文句は出なかった。なので僕はホッと胸をなでおろした。僕は食器を洗い、ついでに明日の朝食の仕込みもしておいた。

 こうして前途多難な僕らの王都生活が始まったのだった。

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