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串焼きを食べ終えた後、僕達は平民用の店が並ぶ商店街エリアにやってきた。ここら辺の平民が普段来る用の店は、貴族様向けの高級店と違って商品の品質や種類の数が悪くて値段も庶民向けとなっているそうである。僕はシルバスタッドまで来る旅で荷物を最低限しか持ってこれなかった。そこで不足している日用品をこの庶民向けの店で殿下に買ってもらった。
「とりあえずシルバスタッドの町の案内はこんなものですかね」
「商店街と市場の場所を知っていれば困ることはないだろう。平民街の奥には行くなよ。スラムがあって治安が悪いからな」
「はい、わかりました。それにしてもスラムがあるのですか?」
「取り締まってはいるんだがな。これがなかなかなくならねえ」
「そういうものですか。なるべく近寄らないよう気を付けます」
「それじゃあ、ひとまず用も済んだし城へ帰るとするか」
城下町を案内され、店の場所もおぼえて、細々とした必要なものも買いそろえた。僕らは御城へ帰ろうと道を歩いていると、どこからかともなく喧騒が聞こえてきた。聞こえてきたほうを見ると人混みができている。何があったかはわからないが、これだけ集まっている人々がもし暴動を起こしたとすると殿下の身が危険にさらされる。ここはそっとこの場を離れるべきじゃないかと殿下に進言しようとしたが、殿下は構わずに騒ぎのしている方へと歩き進んでいった。
「公爵家が治めるシルバスタッドの往来で何事ですか?」
殿下が強い口調で詰問する。殿下の態度と身なりを見て貴族様であることがわかったのだろう、みな静まりかえる。ただ、騒ぎの当事者たちは夢中になっていて殿下に気づかなかったのであろう、相変わらず殴り合っていた。殿下は素早く殴り合っている2人の間に入り込み、殴り合いを止めた。
「殴り合うのはおよしなさい。誰か騒ぎの発端となった事情を知る者はいないのですか?」
殿下がそう尋ねると、殴り合いをしていた片方の男に寄り添っていた女性が話し始めた。
「私が彼と一緒に歩いていたら急にこの男が殴り掛かってきたのです」
え?何それ怖い。と僕が思っていると、殿下がいきなり殴りかかったという男に聞いた。
「彼女はそう言ってますが本当ですか?」
「フン。知らねえよ」
男はふてぶてしくそう言った。だが、その男は身なりは汚いし、酒のにおいをさせていてあまりまっとうな人間には見えなかった。
「このままでは埒が明きませんね。誰か警備隊を呼んできてくれませんか?」
「警備隊なら既に呼びに行ったやつがいるぜ。もうすぐ来るんじゃないか?」
野次馬の中の1人がそう言った。その言葉通りすぐに警備隊はやってきた。警備隊が人込みの中心にいる殿下のほうを見る。殿下が貴族様であることに気づいたのだろう。
「どういう状況ですか?説明してください」
やってきた警備隊の1人がそう尋ねた。
「この2人が殴り合っていたので止めたのです」
殿下が警備隊の人に説明する。警備隊の人は周りにいる人にそれが本当かを確認した。
「それでなぜ殴り合っていたんだ?」
「俺が彼女を連れて歩いていたらこいつがいきなり絡んできて殴りかかってきたんだ」
女連れの男が酒臭い男を指さしながら言った。
「それは本当か?」
警備隊員が酒のにおいをさせている男に確認する。男は酔ってるらしく支離滅裂なことを言っていたが要約すると、昼間から女連れでイチャイチャしながら歩いてやがるからムカついて殴ったということらしい。酔っ払いはスラムの住人らしく、酒を飲んでふらふらと表通りまでやってきて女連れの男を見つけて絡んだそうだ。
結局警備隊は酔っ払いの男が騒ぎを起こしたとのことで連行していった。
「けがは大丈夫ですか?」
殿下が酔っ払いに絡まれた方の男に声をかける。
「はい、平気です。助けてくれてありがとうございます」
「では、これで一件落着ですね。それでは帰りましょうか」
殿下はそう言って歩き始めた。
「殿下。先ほどのようにいきなり騒ぎの場に飛び込むのは危険ではないのですか?」
僕が殿下にそういうと、サモンドさんも賛同した。
「今回は酔っ払いが暴れていただけでたいしたことはなかったですけど、御身を大事にしてください」
「シルバスタッドを治めるジルバーン公爵家の者として、騒ぎをそのままにはしておけませんでした。理解してください」
バルディウス殿下はご自身の立場に強い責任感を持っていることがわかったが、危険に飛び込むようなまねはやめてほしい。
「それなら、もう少し護衛の手の者を増やす必要があると思います」
「それは自由が減って面倒ですね。今後は気をつけますから、護衛は今まで通りあなたたちだけということで……」
「わかりました、殿下。くれぐれも危険なまねはしませんように」
そんなふうに話しているうちに御城へと到着した。酔っ払いの喧嘩以外には特に問題も起きなかった。しかし、時にはがらの悪い男が表通りに出てきて悪さを働くこともあることがわかったので、十分気を付けようと思った。
御城に入り、殿下の部屋へと着く。殿下は侍女にお茶の用意を頼むと僕に今日のことを聞いてきた。
「今日は城下町を案内しましたが、いかがでしたか?」
「僕が生まれ育ったオクタウス村とは何もかも違って驚くことばかりでした。たくさん並んでいるお店も、多くの人でにぎわっている市場も初めて見ました」
正確に言うなら前世ではそれらも見たことがある珍しい光景とは言えなかった。だが、転生してからは何もない田舎村のオクタウス村が僕の基準だ。そこに比べるとシルバスタッドの町は大都会といっていいほど発展していた。
「少しでも早くこの町に慣れてください」
殿下の言葉に僕はうなずくのであった。




