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シルバスタッド城に向かうことになった僕は少し緊張していた。なにしろ御城へ行くなんて初めてのことだ。そこには、ジルバーン公爵様をはじめたくさんの貴族様が居るのだ。僕は、文字の読み書きは勉強してきたが、行儀作法については学んでいない。大勢の貴族の前で失礼な行動をとってしまわないか心配である。そのことを殿下たちに伝えると、心配しなくていいと言われた。
「アルベルト君はまだ子供です。多少の失敗なら皆大目に見てくれるでしょう」
「俺がいろいろと教えてやるから安心しろ」
殿下たちの言葉に安心していると、シルバスタッド城が見えてきた。御城もまた石壁に囲われているが、その石壁よりもさらに御城は高くその立派な姿をのぞかせていた。城へ向かうための門に到着しサモンドさんが帰還の口上を述べる。
「我々はバルディウス殿下一行である。ただいま帰還した。入城の許可を願いたい」
「おかえりなさいませ、バルディウス殿下。どうぞお通りください」
当然の様にすんなりと通してもらえ、御城の入り口である城門まで進む。城門を警護している門番たちに乗ってきたドラゴンを預け、僕たちはいよいよシルバスタッド城の中へと入った。
「帰還の挨拶を城代であるベルゼウス兄上にしなければなりませんね。サモンド、先触れを頼みます。アルベルト君はこのまま私についていてください」
「わかりました。行ってきます」
バルディウス殿下の父君に当たるジルバーン公爵様とその妻である公爵妃様は今は王都であるインデラウンドにいるらしい。不在の公爵様の代わりに城代として領地を守っているのが、公爵様の長男でバルディウス殿下の兄君に当たるベルゼウス様であるということだ。
サモンドさんが戻ってきて、ベルゼウス様がこれからすぐに殿下と会えるとの旨を告げ、このお城の使用人に先導されてベルゼウス様がいらっしゃる部屋へと案内された。サモンドさんがドアをノックする。
「入れ」
ドアの中から入室を許可する声が聞こえた。サモンドさんがドアを開け、バルディウス殿下が入室する。僕もそのあとに続いて入室した。サモンドさんも部屋に入りドアを閉め、バルディウス殿下の後ろに控えると、バルディウス殿下が帰還の言葉を口にした。
「ただいま戻りました、ベルゼウス兄上」
「よくぞ無事に戻った、バルディウスよ。領内のあちらこちらを巡ってきたのだろう?」
「ええ。危険なこともなく無事に帰ってくることできました」
「ところで、そっちの初めて見る子供がお前の探し出してきた新しい家臣か?」
「はい。オクタウス村の農家の次男のアルベルト君です」
僕は紹介されたので一礼をする。
「農家の次男にお前の家臣が務まるのか?」
「アルベルト君はこの歳にして文字の読み書きができる優秀な子です。足りない部分はこれから学んでいけばいいのです」
「お前が良ければそれでいい。アルベルトとやら、公爵家に連なるものの家臣として精一杯励めよ」
「はい。頑張ります」
「バルディウスが無事に戻ったのだ。晩餐は豪華なものにしよう。そこで旅の詳しい様子を聞かせてくれ。」
「わかりました、兄上」
「では、晩餐で会おう」
「はい、失礼いたします」
そう殿下が言って僕たちは部屋を出た。
「晩餐までに部屋でゆっくりと休みましょう」
殿下はそう言って歩き出した。
「ここが殿下の部屋だ」
殿下の部屋についたことをサモンドさんが教えてくれた。
「僕一人だと迷子になりそうです」
「後で城の案内をしてやる」
そう言ってサモンドさんは殿下の部屋の鍵を開けてドアを開けた。殿下が部屋へと入り、僕たちも後に続いて殿下の部屋へと入ったのだった。




