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シルバスタッドの町の中へ入った僕はとても驚いた。そこには、レンガ造りの2階建ての家がびっしりと立ち並んでいた。さすがにシルバスタッドの都と呼ばれることだけはある光景だった。せいぜいそこらの村よりちょっと家や店が多いくらいの場所だと思っていた僕には衝撃的な光景だった。僕が住んでいたオクタウス村はやはりド田舎の村だったらしい。
僕が驚愕しながらキョロキョロとシルバスタッドの街並みを見ている間にも僕達を乗せたドラゴンは大通りを歩いて行く。町の中はよほどのことがない限りドラゴンを走らせてはいけない決まりらしい。大通りには僕達の他にもドラゴンに乗っている者達や、荷車をドラゴンに曳かせている者達、道の端を歩いている者達がいて大いににぎわっている。
「あの、ところで僕達はシルバスタッドのどこへ向かっているのですか?」
僕は疑問に思いそう尋ねた。答は明確だった。
「当然、バルディウス殿下のご実家であるシルバスタッド城だ」
「お城へ行くのですか。それは楽しみです」
「くれぐれも失礼のないように振る舞えよ。その前にその服装を何とかした方がいいな」
僕はツギハギだらけのボロイ服を着ていた。僕の服はすべてリカルド兄さんからのおさがりでそれはもうボロイ服だった。
「仕立ててもらうとなると時間がかかります。古着屋で買うことにしましょうか」
「サモンドさんが僕くらいの頃に着てた服は余ってないのですか?」
「家に帰ればまだあるかもな。それならお金もかからないし、ちょっと家に寄って行ってみるか」
こうして僕たちはサモンドさんの家に寄っていくことになった。
「ヴァネッサ母上に会うのも久しぶりですね」
殿下がそう言った。殿下は母上と呼んでいるが、実の母親ではない。サモンドさんが殿下の乳兄弟ということで、つまりは、サモンドさんの母親であるヴァネッサ様が殿下の乳母であり、幼い頃の殿下をお育てしたらしい。そして、サモンドさんを殿下の腹心となるように育てたということらしい。
「俺も実家に帰るのは久しぶりだな」
サモンドさんはそう言った。
サモンドさんの実家は城へ向かう途中にあるとのことだった。サモンドさんの実家は公爵家の陪臣貴族家であるが、3男のサモンドさんは貴族登録されていないとのことだった。貴族様の家に生まれれば必ずしも貴族様になれるとは限らないらしい。その家の経済力によってはすべての子を貴族様とすることができず平民にならなければいけない子がいるらしい。サモンドさんはそんな子の一人だそうだ。
しばらくすると、庭などがある立派なお屋敷が立ち並ぶ通りに出た。この辺りは、貴族様のお屋敷だったり、富裕層の方が住むお屋敷だったりがある地域らしい。その中の一軒がサモンドさんの実家らしい。
サモンドさんの実家に着くと、ヴァネッサ様が出迎えてくださった。
「ただいま戻りました」
「ご無沙汰しております、ヴァネッサ母上」
「お帰り、サモンド。殿下もようこそいらっしゃいました。さあ、まずはどうぞ、おあがりくださいませ」
僕たちは家の中に案内される。
「今お茶を入れますので少々お待ちください」
そういってヴァネッサ様は使用人にお茶の用意を頼む。
「せっかく殿下がいらしたのに主人も息子たちも仕事で出払っているのです」
「いえ、前触れもなく急に来てしまいましたので……」
「それで、本日はどのようなご用件でいらしたのですか?」
「この度こちらのアルベルト君を家臣として雇ったのですが、彼に合う服がサモンドの古着にないかと思いまして……」
「サモンドの着た服はとっておいてあります。何着かはその子に合う物もあるでしょう」
「では、俺は服を探して来ます。ついて来いアルベルト」
そう言ってサモンドさんと僕は僕に合う服を探しに行った。しばらく探して、何着か僕に合う服が見つかる。僕はそのうちの1着に着替えた。そして、殿下たちがいる部屋へ戻った。
「アルベルト君、なかなか似合ってますよ。それでは、服も見つかったことだし城へ向かいましょう」
こうして僕らはシルバスタッド城へ向かうことになった。




