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 吟遊詩人達が村を去ってから村はまた平穏を取り戻した。僕もまた単語の読み書きをする日々に戻り、3年の月日が流れて、ぼくは10歳になっていた。この3年間では、単語の読み書きの練習だけではなく、村長さんの家の騎乗用ドラゴンであるヒューイの世話もするようになった。

 騎乗用ドラゴンはまるで前世の馬のような扱いを受けているが、実際はどのような違いがあるかドラゴンレースを開催するためにも知っておきたかったからだ。そういうわけで僕はヒューイの世話をしながら騎乗用ドラゴンについて学んだ。


 まず、騎乗用ドラゴンは卵から産まれるところが馬とは違った。寿命は長くて20年ほどだが大抵はそれより早く死ぬらしい。成長期はだいたい3~5歳まででそこからは徐々に体力が衰えていくそうだ。また、馬は4本足で走るが、騎乗用ドラゴンは2本の太い後ろ足で走る。エサは大量の草や木の葉などを食べる草食性である。そして騎乗用ドラゴンは体調が良いと体表を覆う鱗が良いツヤを帯びるらしい。結構賢くて、きちんと調教すれば人間のいうことをよく聞く等々、たくさんのことを学んだ。そして、騎乗用ドラゴンの習性を考えると、十分にレースをすることができると僕は確信した。

 

 読み書きも大分こなせるようになり、騎乗用ドラゴンの世話をするようになっても、一向にドラゴンレースを開催できそうにないことに僕は焦り始めていた。どんなに教養を身に着けたとしても、僕は田舎農家の次男だ。そこが変わらない限り、ドラゴンレースの開催など夢でしかないだろう。そろそろ具体的な進路を決めた方がいいかもしれない。

 ドラゴンレースを開催するには大金持ちになるか貴族様になるか、またはそういう人達と強いコネクションを持つ必要がある。一番手っ取り早いのは転生前の知識から売れそうな物を作って売る商人になることだろうか。何か作って売るにしても元手がない。やはり、どこかでお金を稼ぐ必要がある。いっそのこと村長からオーゲンロレン商会へ紹介状を書いてもらうのはどうだろうか。 


 いろいろと悩み考えがまとまらない。こういう時はヒューイのところに行って世話をしよう。最近は僕にも懐いてきて、とてもかわいく、世話のし甲斐がある。僕にとっては何もない田舎の農村での癒しなのだ。


 僕は村長さんの家に行き、ヒューイの世話をさせてもらうよう頼んだ。頼みは了承され、ヒューイのいる厩舎へと向かう。そこには既にパーゼル兄さんがヒューイの世話をしていた。パーゼル兄さんがヒューイの世話をする係なのだ

 「こんにちは、パーゼル兄さん。手伝いに来たよ」

 「やあ、アルベルト。助かるよ」

 ヒューイにエサと水を与え、乾いた布でマッサージするように体を撫でる。そして、ヒューイの寝床である藁を新しいものと交換する。

 「それじゃあヒューイとちょっとひとっ走り行ってくるよ」

 パーゼル兄さんがそう言った。狭い厩舎の中にいるだけでは騎乗用ドラゴンはストレスがたまるし体力も落ちる。ドラゴンの健康のためにも時々村の外で走らせるのだ。

 「気を付けてね。パーゼル兄さん」

 パーゼル兄さんを見送って、道具を片付けてから厩舎を出るとターニャ姉さんがいた。

 「父さんが呼んでるわ。来なさい」

 そう言って僕を連れて歩き出す。

 「何の用かな?」

 「行けばわかるわ」

 

 まさかこの呼び出しが僕の運命を大きく変えるものだとはこの時僕は気づかなかった。


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