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呼び出されて村長のところへ行くと、そこには村長のほかに3人の男がいた。その中の1人は遠目では見たことがあったこの村のお代官様で、残りの2人は見たことのない成人したくらいの人達であった。だが、着ている服は僕が来ているようなツギハギだらけの服と違ってかなり良い物で、2人の身分の高さを表していた。
「お呼びであるとのことで、ただいま参上しました」
これはどうやら大変な場に呼び出されたと僕は考えて、畏まりながらながら挨拶をすると、お代官様が言った。
「こちらはジルバーン公爵様の第3子であらせられるバルディウス殿下である」
殿下?それって王族に対する敬称だよな?ジルバーン公爵様は国王様の弟君であらせられるから、その子であるバルディウス殿下も王位継承権がある王子様ってことか。なんでそんな偉い方がこんな村に来ているんだ?僕が困惑していると、バルディウス殿下のそばに控えていたもう一人の男がスッと前に出てきて言った。
「俺はバルディウス殿下の乳兄弟であるサモンドだ。アルベルトというのはお前でいいのか?」
「はい。お初にお目にかかります。私はオクタウス村のカイルの次男、アルベルトと申します」
僕は名乗って礼をする。すると次に告げられたのは衝撃的な言葉だった。
「アルベルト君。君は読み書きができる優秀な子と聞きました。私は独立して新たな家を興そうと思っているのですが、私の家臣になりませんか?」
僕は驚愕するとともに疑問に思った。
「少しお尋ねしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんいいですよ」
「公爵家には代々勤めている家臣がすでにいるでしょう。その方達ではダメなのですか?」
「彼等には既に公爵家の仕事があります。引き抜きをかけることはできなかったのです」
「それなら他の町や村の村長や名主の一族には尋ねてみなかったんですか?僕よりも良く教育されていると思うのですが……」
この質問は殿下にとって痛い質問であったらしく、バルディウス殿下は苦いものを飲み込んだような顔で言った。
「彼らにも声をかけてみたのですが、主だったものは長兄のベルゼウス派だったり、後継ぎで家を離れられなかったりといい返事がもらえなかったんです」
バルディウス殿下は新しく家を興すとおっしゃった。そんな先行き不透明なバルディウス殿下について行くより、次期公爵となる長兄派となる方が利益となる確実性が高いと多くの人は考えたのだろう。
「そういうわけでアルベルト君。君は僕の家臣になってみませんかね?」
バルディウス殿下は僕が断ることのできない質問をした。僕は農家の次男で、この質問を断った人達とは立場が違う。自分の家を継ぐということはないし、長兄派なら断っても派閥の長であるベルゼウス様が庇護してくださるだろうが僕にはそんなツテがない。もし僕がこの話を断ったら領主様のご子息様の申し出を断った単なる不敬な奴だということになる。
「謹んでお受けしたいと思います」
僕は頭を下げてそう言った。ある意味でこれはチャンスだと僕は思った。殿下は独立し新しい家を興すとおっしゃった。新興の家では、権力も経済力も期待できないが、殿下の血統は良く、王家や公爵家との繋がりがある。うまく立ち回れば、念願であるドラゴンレースの開催にこぎつけることができるのではないかと僕はそう思った。
「本当ですかそれは良かった」
殿下は喜び、その様子を見ていた村長とお代官様はホッとした様子だった。
「これからよろしく頼むぜ」
サモンドさんも嬉しそうに言った。
「こちらこそ、これからよろしくお願いします」
僕は少し不安に思いながらもこれからに希望を持ってそう言った。




