武器育成イベント!? 地下格納庫攻略編その十.五
ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、豚肉。その中で一つ、ジャガイモを選び、食べやすいサイズに分けてご飯と伴に口へと運ぶ。
うーん、しっとりと溶けるようにして口の中へと広がっていくジャガイモが、仄かな甘みとモチモチとした食感のご飯を包み込みながら、スパイスの効いた程良い辛みを程良く和らげながら歯と舌を喜ばせていく。
カレーの醍醐味って、これだよね。ご飯と具材とスパイスが、三位一体となって口の中を駆け巡る。めくるめく味の協奏曲。協奏曲ってどんなものが知らんけど。
とまぁ、ゲームの中で見てしまったがために食べたくなったカレーを夕飯にしつつ、共にテーブルを囲む三人の顔を回し見る。
「と、言うことがあったんだけど?」
黙りこくっていた三人に、ダメ押しとしてもう一度この台詞をお送りしよう。それが効いてくれたのか、共にパスタを食べていた桜と夢ちゃんが、私に向けて拍手を送ってくれた。
「あーあ。やっぱり色んな所に情報あるじゃん」
拍手をしながらも悔しそうな桜と。
「おめでとう!」
おそらく特に何も考えていない夢ちゃんの賛辞を受け取る。まぁ、結果的には私の予想は正しかったというわけだ。
桜達はイトコンドリアと戦っている。そして苦戦を強いられている。うふふ、そこに颯爽と現れる私と言う名のヒーロー。見事に解決するヒロインでもある私。格好良いだろうなー。陽菜はそれを嫌がっているんだろうなー。
「ねぇ、陽菜。今どんな気持ち? ヒーローが現れそうな予感、感じてる?」
私がイトコンドリアを倒した経緯も話しているため、おそらく彼女たちが現状取れる手が限られているというのは、桜のリアクションからもなんとなく感じられる。
おそらく、なんの準備もなしに件のダンジョンかなにかに突入したのだろう。富山先生が一刻も早く恋人と合流するために急かした、って理由があるだろうけどね。
「あー、もう! 私らだってもうちょっとの所まで行ったんだぜ? というか、もうちょっとの所まで行ってたんだよ。ミクさんが暴走しなければさぁ」
ずずっと一口ラーメンを啜った陽菜は、疲れたような溜息を吐き、グラスになみなみと入っていた水を飲み干した。
すかさずピッチャーからおかわりを注いであげると、何があったのかと問い掛ける。メンマのコリコリとした食感が微かに聞こえた後、ぽつりぽつりと語り始めた。
……いや、語ると言っても、起こった事態はとてもシンプルなことだったのだけどね。
先ず、イトコンドリアはボスの近くにあったりする特別な食材、もっと言うとそれを材料にした料理を与えると、攻撃性を無くして大人しくなる。つまりは無力化だね。ところがそれに気を良くしたミクさん、ゲーム内でのスラミが撫で回すなどの暴走を始め、背後から近寄ってきていた別のイトコンドリアに気が付かず襲われてしまい――。
「奪われた武器、相当強かったの?」
「無差別に範囲攻撃が出来るハンマー。近付けないし射程距離はあるし、おまけに形状も変化できるからどんな土地にも振り下ろされる。今んところ逃げるしかないんだよ」
武器や装備を奪う、それをレンチから聞いたときには嫌な予感を感じたものの、やっぱり現実となると厄介その物だよねぇ。いや、ゲームの話なのだけども。
「そんな訳だから葵、助けに来てくれるんならそこは押さえておいてよ。ダンジョン内は迷路みたいになっているから、対策しとかないと追い込まれてドボンだから」
そうアドバイスをしてくれる桜には悪いけど、逃げの一手なら私に敵う人は居ないと思うな。
「転移があるから大丈夫でしょ」
「そう思っていた時期が、私にもありました」
だがしかし、今度はニコニコと笑いながら話を聞いていた夢ちゃんが、魂でも出るんじゃないかというほどの溜息を吐いてしまった。
「みんな纏めて一緒に転移をして逃げたら、別のイトコンドリアに襲われたの。それで空さんが犠牲になって」
あぁ、そう言うこともあり得るのか。それで犠牲になるのが転移を実行した夢ちゃんではなく、空さん、つまりクイネさんだというのがなんとも、ね。
「犠牲にって、武器を奪われたわけではないの?」
「スライム化っていう特殊な状態異常にかかっちまった。スライムになってしまったんだ。だから、もう料理は作れねーんだ」
再び陽菜が溜息を吐いて、大きなチャーシューを口の中に押し込んだ。……それがイトコンドリアの作戦だとしたら、半端ない戦略だよね。こっわ。
と、言うよりもだね? そこは代わりに料理を作ろうなんていう、古の女子力を発揮したりはしないのかね。……まさか、食材もあの人しか持っていなかったとか? スライムと化してアイテムボックスも使えなくなったとか? こっわ。
「面白いのがね、スライムになった空さんをミクさんが離さなくてね。富山先生が嫉妬しちゃってさ。むふふ」
桜、楽しそうだなぁ。当人達は大変そうだけど。
「そんな訳で、私達に説明できるのはきっとここまでなの。アオイちゃん。ぜひ準備はきっちりとね」
「夢ちゃん、それは解ったけどさ。……肝心の場所は?」
「「「そいつは言えねーな!」」」
いや、助けて欲しいのか欲しくないのかどっちなのさっ!?




