武器育成イベント!? 地下格納庫攻略編その十
格納庫に聳え立つそれは、桃、と言えるような言えないような怪しい物体が先端に取り付けられた、太い筒状の胴体を持つロケットのような物だった。
桃に似た部分も筒状の部分も大きく、またスリットのような物が幾つも見える。おそらくそこが展開していくことで、人型のロボットへと変形をするのだろう。……ちょっぴり、願望が入っている推察なのだけど。
そんな疑いもあって、これが桃断王かと、ロフトのようになった場所へ繋がる階段を上りながら横に向ける目は、少し険しい物になっていただろう。
無事に電気を通すことに成功し、居住ブロックの探索に向かったタツノとウォーセ、しーちゃん。オフィスブロックの探索に向かったレンチとぬーちゃんを見送った私は、一足先に格納庫ブロックへとやってきていた。
ウォーセ達からの報告で猫面が居なくなったと聞いたから、それぞれ好きなように探索しよう、と言うことになってね。私としては一人で考えたいこともあったし、その為に目的もさっさと済ませておきたかったと言うのもある。
ロフトのような場所に桃断王の起動装置がある、それは資料室で手に入れたこの施設を紹介するような冊子により解っていた為、私はのんびりと階段を上がり、これまでのことを頭の中で整理することにした。
――先ず、鎧を身に纏っていたイトコンドリアについて。姿がスライム状になっていたのは、おそらく猫が変質した姿ではないかと、レンチは推測していた。資料にも似たような記述があったことから、それは間違いないのだと思う。それが何故鎧を身に纏っていたのか、それはレンチの解析により、装備を奪う性質があるのではないかと結論付けられた。
理由としては、傷を付けられた私の装備に、イトコンドリアとリンクするような謎の反応があったから。自分の物ではない人の装備を身に纏っていたことも合わせて、自分を強化するために武具を欲しているのだろうと考えられる。
それなら、あのイトコンドリアは鎧の持ち主である、勇者が変質した姿ではないかとも思ってしまうけれど、資料室で得た資料の中に、此処で鎧を保管していたとの記述があったために、それはないのだろう。
勇者の足跡も、調べた方が良いのかなぁ。
もう一つ大事なことは、私が猫のお面を装着したことで起きた変化。あれは解析してくれたレンチによると、武器の進化段階を変化させる機能が備わっていたらしい。
私が足に装着している武器に備わる基礎的な能力アップに加え、本来の足の裏から生み出される金属を別の物へ変化させるという機能が、金属により何らかの現象を発現させると言う風に強化されたというのだ。
イトコンドリアが球状に圧縮されたのも、付着させた金属を中心に重力が操作されたから。放電をトリガーとして利用していないし、やり込んでいけばここまでシンプルに出来る物なのかと。武器の拡張性にワクワクしている自分もいます。
まぁ、それ以上にそこに至った経緯が謎すぎて、ねぇ。
何故猫面は、私を味方するような真似をしたのだろうか。感情論から言えば、姿を変えられた同胞を解放してあげるため、かな? 此処への侵攻もそれが目的で、とも考えられる。
しかし猫面も、目的の一つ、みたいなことを言っていたし、やはり此処への侵攻はそれだけが目的だという訳ではなかったのだろう。猫のお面についてと、猫面の行動について。それらをいっぺんに解決できる方法があるとすれば――。
「テーマパーク、詳しく調べた方が良いかもしれないね」
これからの行動については、これで結論ってことで良いだろう。トンッと軽やかに最後の階段を登りきると、目の前にあった機械に近寄り、よく眺めて観察をしていく。
ふむ、起動キーの差し込み口は、分かり易い位置にあるね。起動のための準備は制御室の方からレンチがしておいてくれたから、後はここに、古戦場で手に入れた起動キーを差し込むだけ。
……なのだけど。
「これ、どう使うんだろ?」
アマテラスから貰ったのは、カード状の物。差し込み口があるから、そのままシンプルに差し込めば良いのかと思ったのだけど、どうやらサイズがあっていないようなんだよね。カードが小さいのか、はたまた差し込み口が大きすぎて、なのか。上手く填まりそうもないんだよねぇ。
他に何かないのかと、計器のような物が沢山ついたそれを隈無く、恐る恐る触ってみたりもしながら調べてみる。
えっと、――あっ! 様々な情報が映し出されるモニターがあって、その直ぐ下には入力用だろう、キーボードのような物がある。そのすぐ隣に、何かを差し込むようなスリットがある。いや、機械には疎い所為で断言できる様なものはないのだけど、これってもしかして、アニメなんかでよくあるカードをスライドさせるやつでは?
今、私はロボットを起動させ様としている。アニメでは、この手の物を使って主人公がロボットを合体させたりするんだよね。サクラの家で懐かしいロボットアニメは数多く観ているから、私は詳しいのです。
……でもまぁ、基本最終回までノンストップで見続けるチャレンジを行っているから、殆どうろ覚え状態なんだけどね。
それは兎も角として、スリットの幅は丁度カードが入りそうなサイズだし、物は試しと差し込んで、下方向にスライドさせてみよう。
「桃断王、起動承認!」
試すなどと言いながらもノリノリで決めゼリフの様に叫びながら、私は勢い良くカードをスライドさせた。するとどうだろう。――その時不思議なことが起こったのだ。
……カードが包丁に変化した。
ハイテクな機械を前にして、包丁を持って立ち尽くす私は、端から見たらどう映るのだろうか。謎だよね。むしろギャグ。でも、はぁ。包丁かぁ。これだとなんか、納得してしまうよなぁ。
何故納得してしまうのか。その理由は単純に、あれが桃だから。桃を包丁で切らないと、物語は始まらないのだから。
だからおかしな行動だと、見た目は海外の面白動画でありそうな謎の行動だと思いつつも、私はハイテクな機械に包丁を差し込んでみた。……ピッタリ填まった。てか、ハイテクって言い方古すぎない?
突っ込みが渋滞しているこの状況の中、ロケットのようなロボット? は起動されたらしく、エンジンに火がつき轟音と激しい熱を撒き散らしながら、何時の間にか開いていた天井を越えて何処かへ飛んでいくのだった。
……急な展開に、私はぼう然と立ち尽くすしかなかった。そしてふと我に返ると、おそらくは私の役目であろう仕事を始めるのである。
えっ!? 変形したりとかはしないの!? 古戦場で出会った支援メカと合体するとか、そういう胸熱展開は!? まさかあのフォルムのままでロボットなんて言わないでしょ!?
謎を解き明かす手がかりを得たのは、まぁ良かったけど、突っ込みだらけで終わるようなサブイベントってどうなのさ!? 変形したかどうかとか、そもそも何処に行ったのかとか、気になることはいくらでもあるんですけど!?
ふはは、私は手加減が下手だからね。突っ込みにも絶対に手は抜かないんだからね!
とまぁ、それは措いておくとして、だ。これってさ、露骨にテーマパークへ行くように誘導されてるよねぇ。だってあのロボットが件の戦いにおいて重要な役割を持っているのなら、それが機能しているかどうかを確認する術はテーマパークにあるサーカスのテントの中でしかない訳だし。
サブイベントの一つ一つがそれだけで完結しているわけではなく、最終的な結末まで一繋ぎになっているの、終わりが見えなくて少ししんどくなってしまうよ。
ま、それがアマテラスが頭を抱えた一番の要因、なのかもしれないね。
「レンチ、次の目的地はテーマパークだから。タツノにモフモフに期待するようにって言っておいて」
『期待させて、いいんですか?』
……私の突っ込みは終わらないっぽい!




