表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
856/929

武器育成イベント!? 地下格納庫攻略編その八

 懐中電灯の光によって、丸く切り取られた空間が四方八方へと動いていく。


 自分の傍に浮かべた光源では、どうしても照らし出せる範囲に限りがあったのだ。ならばと作ってみた懐中電灯を試してみたら、この通り。光の当たった部分だけという制限はあるものの、一通り室内を見渡すことが可能となった。


 エレベーターブロックには、何もない。無意識に足の向かう居住ブロックの扉は、電力が通っていない所為か固く閉ざされている。


 金属をヘラのように変化させて、こじ開けられないかと隙間に差し込み左右に動かしてみると、僅かに隙間が生まれたようだ。


 後は金属を操り隙間に潜り込ませ、一気に柱状の物を作れば、あっという間に扉は歯車が軋むような音と共に開け広げられた。


 此処は入浴施設だろうか。私は利用したことはないものの、テレビ番組では見慣れていた、銭湯の脱衣所を思わせる作りになっている。ロッカーが幾つか並んでいるのが見えるけど、それらを調べれば何か出てくるだろうか。


 ……一つづつは面倒だと、金属を操り一斉に開き懐中電灯の明かりを向ける。――何もない。


 私の嫌な予感、当たっているかもしれないなぁ、と。心の中で軽く溜息を吐く。と言うのも、私はある事態を恐れていたのだ。


 それは、何もないこと。首筋に当たるはずもない水滴を当てることで何かあると感じさせておいて、その実何もない。そんな拍子抜けな展開を危惧していたのだ。


 それを裏付けるようにか、浴室を調べても何かあるということはなかった。


 では、残るオフィスブロックはどうなのか、と言うところなのだけど。此方は実は、少し期待の出来る雰囲気はある。にはある。


 居住ブロックを出て視線を遮るエレベーターを避けるように歩く。そして正面のオフィスブロックを隔てる扉に光を当ててみれば、その理由は一目瞭然単純明快。


 その扉には、デカデカと『危険』だとか、『開けるな』や『封印』と言った文字がおどろおどろしい字体で書かれているのである。


 ここまでしておいて何もなかったのなら、後でアマテラスには文句の一つでも言ってやろう。そう心に決めて、先程と同じように扉をこじ開ける。


 ……のを少し待って、この先に何があるのか、少し予想しておこうかな。何もなかった場合はそれで良いの。こんなお化け屋敷はどうかと思うって、クレームを入れればいいのだから。


 私が扉に手をかけ、少し心配に思ったのは、もしもアマテラスがこの場面を、私の行動を観察できていたとしたら、と言う点だ。はっきり言おう。無様は晒したくない。


 だから、ある程度予想をしておいて、感情をコントロールする余裕を持とうってことだね。そう、余裕を持てればいいだけだから、三つぐらいあげて考えてみよう。


 先ず一つ。びっくり箱みたいに何かが飛び出してくる。これはたとえ身構えていたとしても、反射的にリアクションをしてしまうからかなり危険なものだよね。よし、これはないことを祈っておこう。


 二つ目。ゾンビ的なものが現れる。これは倒せばいいから問題ない。サーチ&デストロイは得意だからね。むしろかかってこいと言いたいよ。


 そして三つ目。問答無用でゲームオーバー。一番クソゲー的な感じに思えるけれど、アマテラスを含めランダム生成でもその手のものが好きな疑いがあるからね。これはいちばんの要注意だ。……まぁ、注意したとて、なんだけどさ。


 よし、心の準備完了。そして隙間に差し込んだヘラをグリグリと動かすのだけど……。仰々しい言葉が書かれている割に、簡単に開いてくれるなぁと、早速嫌な予感が胸に宿る。さて、三つの選択肢は当たるだろうか。開かれた扉の先を照らし出そうとしたその瞬間――。


 室内全体が明るく照らし出されるのだった。


 一瞬、急な明るさに目が眩んだ私は、尻尾が逆立つほどの猛烈な危険を感じ、エレベーターの壁へと着地するほどの距離を後退る。


 その刹那に聞こえた金属音を頼りに胸元へ視線を落とすと、防具として装備している黒い胸当てに、一筋の白い線が刻み込まれていた。


 ガチャリ、ガチャリ。金属が擦れ合うような音が前方から迫っている。上がった視線に浮かび上がるのは、近未来――いや、どちらかというと現代風であるこの場には相応しくないような、戦国時代を思わせるような鎧武者の姿。その堂々とした歩きは、まるで戦への出で立ちを思い起こすようだった。


 しかしそこに威厳のような物はなく、あるのは異形から来る悍ましさだけ。頭部に当たる部分はブヨブヨと波打ち、全ての色が溶けることもなく混ざり合っているような、気味の悪い物体が堂々と鎮座している。


 よく見れば、手や間接部なども同様の物が見て取れる。どうやら、よく解らない謎の物体が鎧を身に纏っているらしい。


 この展開は少し、予想外すぎて。油断にも似た気持ちを持っていたのだろう。背筋を流れる冷や汗を感じながら、私は壁から飛び退いた。


 制御室ブロックへと向かう廊下の前まで飛び退いた私は、直ぐに先程までいたエレベーターを確認する。側面にも、エレベーター自体にも、なんの変化もない。けれど、その直ぐ側まで距離を詰めていた鎧武者は、刀を振り抜いた状態で固まっている。


 私の姿を見失い、混乱しているのだろうか。それを察知できるような視線の動きは、あれには存在しない。


 それも厄介だけどもう一つ、あの動きは、確実に私だけを標的としていた。チラリと視線を向けた足元に光る、光沢のある私の具足、武器でもあるそれにも一筋の線が刻み込まれていることからも解る。エレベーターごとたたき斬ってやろうなんて、私みたいなことは考えていない。ただ、目標だけを斬るという行動と、その技量だけを持っている。


「レンチ、念の為こっちにはこないで、解析用のドローンか何か、こっちに送ってくれない?」


 視線を鎧武者に向けながら、左手に握っていた通信装置に声をかける。


『もう送っています。と言うか、超小型の物を幾つか仕込んでおりました。真っ暗で機能していなかったのですが、電力が通った所為か観測が出来ていましたので、このままでも解析は可能です。あれは、おそらくイトコンドリア。入手した資料とも照らし合わせながら、直ぐに状況を確認します』


 此処に入るまでの、少し気の抜けた声ではなく、緊張感が感じられる声色に此方の身も引き締まるのを感じる。


 多分、彼奴の攻撃をまともに受けると、私は簡単に倒れ伏すだろう。目の前に迫り、刀を振り上げたそれに向かって蹴りを放ちながら、どう戦えば良いかと、静かに思案を始めるのだった。


 てか、結局三つとも当たり?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ