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武器育成イベント!? 地下格納庫攻略編その六

 雑誌、漫画、実用書、紙の束が挟まるファイル。その他雑多な書物が押し込められた棚が迷路のように並ぶそこで、私はのんびりと棚に背を預けて読書に勤しんでいた。


 一度転移により地上へと戻った私は、他のプレイヤーがボスと戦っている内に卵を掠め取り、ある程度の量を確保してから地下へと戻ったのだが。


 二階層に造られたおそれのあるポータルらしき物を探すぬーちゃんは、なにやら苦戦を強いられているらしく、未だ発見の報告はない。


 合流して一気に捜索を、とも考えたものの、それよりも今後の役に立つ可能性を優先し、三階層の探索を進めることにしたのだ。


 居住ブロックにはスポーツ施設があるばかりで、特にめぼしいものは見つからなかった。後はオフィスブロックだと入り込んだ私は、――このように宝の山に目を奪われている次第。


「隠し味にサトウキビ、ね。少し甘めなのかな」


 パラパラと捲る紙の束には、数々の料理のレシピが載せられており、その中には私が気になっていたカレーの物も存在した。


 このレシピ集。紙質からしてコピーされた物に思えるから、食堂の方に元となった本なり何なりがあるのだろう。侵攻しておいて料理をする時間があるとはなぁ。鳥側の軍勢と覚しき存在もいないし、此処には猫面以外誰も居ないのかな。


 顎に手を当て考えつつも、視線は紙の束から離さない。端から見たら、片付けの最中に漫画を読みだした人、と表せることだろう。しかしながらこの行動にも、ちゃんとした意味があるのだと私は主張したい。


 それは、この迷路のような資料室――と言っても良いのだろうか――を一通り眺めて回った際、重要書類と書かれたプレートが付けられた棚を見つけたことに始まる。


 その中の一つである、〈全ての始まり〉と記されたファイルを手に取った私は、挟まった紙の束をゆっくりと読み始めた。


 ――猫は皆に愛される動物であった。人に癒やしを与え、船上や戦場(駄洒落か?)でも時計の役目を持ってくれていた。


 正しく、人類のパートナーと言うべき存在であったのだ。


 しかし人の欲望は留まることを知らず、猫に更なる能力を求めることとなる。そうして始まった研究により、あるものが生み出されてしまう。


 猫に更なる力を授ける存在『イトコンドリア』。それは遺伝子にある変化を起こし、強力な存在へと誘う物であり、猫を人を導く神へと昇華させるものであると信じられた。


 しかしその結果、生まれたものは悍ましい物体であった。人も、物も。全てを食らうカオスのような色をした物体は、最早人の手には御しきれぬ存在であり、人々はただ、神に祈るほかないのであった。


 そのカオスを討ち払い、封じた存在を、人々は太陽の化身と崇め続けることとなり、化身に付き従う十二の動物たちを、年に一度その年を見守る神と定め、祈り崇めるようになっていくのだ――。


 その中で、発端となり、人々から忘れ去られようとしていた猫が怨念と化すのも、また必然なのだろう。別のファイルにはそこから始まる資料も残されており、太陽の化身に力を授かった勇者が十二の動物たちと共に、戦いを繰り広げる様子も記録されていた。


 それらを読んだとき、私はピンときたのだ。ヨーナ達が、クイネさん達が追っているのは、このイトコンドリアなのではないかと。


 だってイトコンドリアだよ? 確実に糸蒟蒻じゃん。たぶんスライムじゃん、これ。


 そしてこの情報、おそらく歳神武器の研究をしていた四人の博士も知り得たことだろう。もしかしたら、あの時西の博士が話していたオリジナルというのは、このイトコンドリアの事を指している可能性もあるのではないか。


 猫を強化しようと生まれたイトコンドリア、私達の武器を強化してくれる歳神武器。その性質は、何処か似ているような気にもなってくるんだよね。でもまぁ、これはまだこじつけの可能性もあるのだけれど。


 けれど、それが契機となって亡くなったとされる南の博士を調べることで、その情報を得ることが出来る可能性もあり、そこでクイネさんやメニド、スラミはイトコンドリアの存在を知り探すこととなった。あの人達の行動については、そう考えるのが自然そうだね。これについては夕飯の時にでも訊いてみようか。


 そして話は今、私が読んでいるこのレシピ集のような物に戻るのだけど、このイベント中で料理のレシピを知り得たのはこの時限りではないのだ。


 まず最初に洋館で得た、美味しい羊羹の作り方。そして古戦場の養豚場で、生ハムの切り分け作業中にお爺さんから様々なレシピを伝え聞いた。


 三度も続くというのなら、流石に怪しいとしか思えないだろう。それにログアウトした際にヨーナから聞いた言葉。確かボスが関係しているかもしれないと言っていたよね。となると、それに付属する食材を使った料理も、と言う訳だ。


 此処に来て、ランダムに生み出された数々のサブイベントが、一本の線に繋がり始めたのを感じた。おそらく、これをベースとしてランダムにサブイベントを作っていったのだろう。そん考えると――。


 やはり、この迷路はその物が宝の山と考えて良いのだろうね。いや、迷路とは比喩であって、ゴールなどないのだけど。


「レンチ、聞こえる? ちょっと、いや、かなり重要なお願いがあるから、私の所まで来てくれないかな」


 思ったのなら即行動。直ぐに事前に手渡されていた専用の通信端末に向かい、言葉を発する。これは通信関係が猫面に傍受される危険性を考え、事前に用意されていた物なのだけど、見た目がトランシーバーなのは雰囲気重視なのだろうかと、私にはそのセンスが解らないでいた。


 私としてはこう、腕時計とかボールペンに向かって喋りたい。そう言うスパイが格好良いと思う。


「読書がそんなに重要ですか?」


 現れたレンチの目が冷たかったのは、おそらく私の行動も監視していたからだろう。それはまぁ、指示役なのだから仕方のないことなのだけれど、勝手な行動ばかりしている私にも、当然非はあるのだろうけれど。


 そこは軽く誤魔化しながらも、私が得た情報をそのままレンチに伝えると、彼女は私の意図をしっかりと掴んでくれたようだ。


「……なる程、つまり此処にある資料を全てスキャンしてコピーすればいいわけですね。ついでに専用の端末を造り、データベース化してキーワードでも検索できるようにしておきましょう」 


 訂正、意図以上の事をしてくれるらしい。となれば、此処で私が出来ることはもうないし、ぬーちゃんの手伝いでもしていた方が良いだろう。


 ……この状況、正しく棚からぼた餅と言ったところかな。まぁ、目に付いたのは蒟蒻だけれど。 

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