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いまここ新世界  作者: アリエス


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.6 上綺ルカ

上綺かみきはジンに近づき、値踏みするようにジンを見る、そして、


「うーん……」


上から見下ろすようにジンを眺める。

「顔、72点」


「72?」


「対魔部、プラス3点」


「プラス3…」


「将来性、プラス5点」

そして上綺かみきは頷くと、ジンを指差した。


「きみ、私の彼氏候補にしてあげます」


あまりにも突然の宣言に、ジンの思考が一瞬止まる。

「……うん?」


ジンは一度瞬きをすると、改めて上綺かみきの顔を見た。


すると、そのやり取りを見ていたアヤカの鋭い声が、後ろから飛ぶ。

「ジン! 次元移動は使うな! わかったな!」


ジンは後ろを振り向かず、わずかに頷き、前を見た。


「……そうですね、わかりました」


(使うと、また色々とあるからな……)


視線は上綺かみきの方に戻っている、そして小さく息を吐く。


(一応、先読み……)


そんなジンをよそに、上綺かみきは、得意げに胸を張った。


「感謝してください!」


「ん?ありがとう……」

反射的に言ってしまうジン。


「……え?」


上綺かみきがぱちりと目を瞬かせた。


少し離れた場所にいた田中やメイたちからも、


「なにお礼言ってんだ……」


「先輩かっこいいです!」

などと小さなツッコミが飛んでくる。


一方の上綺かみきは少し、表情が止まっていた。


「……変な人ですね」


その時だった。


すると後方から少し苛立った声が飛ぶ。

「ルカ! 早く始めろ!」


条列じょうれつ高校の男子部員だ。


上綺かみきルカ、条列じょうれつ高校1年生。


ルカは後ろから飛んできた声を聞き流しながら、ジンへ視線を向ける。


「じゃあ、今度、私のフォローしてください」


「フォロー?」


「応援は義務です」


その直後、また背中に刺さるような視線をルカは感じた。


すると、ポケットへ手を入れ、素早く携帯を取り出す。


「あっ、今日まだ上げてないんで、これだけ(パシャッ)」


言うや否や、慣れた動きでカメラを自分へ向けた。


そのルカを見据え、ジンは意識を集中させる。


先読み


視界の奥で、世界が幾重にも同時に並ぶ。

無数の並行世界。

今この瞬間から移動する可能性の世界。


この世界、自分、ルカのエネルギー。


潜在の領域。


その帯域を追うように、ジンは静かに未来を覗く。


その間も、ルカは携帯を操作し続けていた。

何かを打ち込み、画面を確認し──


満足そうに頷く。


そして。


「それ、持っといて」


慣れた調子で携帯を後ろへ放った。


後方にいた条列じょうれつ高校の部員が慌てた様子で受け取る。


その瞬間だった。


空気が弾ける。


ドンッ!!


迷いのない、実戦的な踏み込み。


ルカが屋根を蹴る。


ルカの姿が、一気に目前まで迫る。

さっきまでの雰囲気は消えていた。


腰に差した木刀を一瞬で抜き放つ。


右足を軸に踏み込み、


肩。


腰。


腕。


全身の力を一本の軌道へ乗せる。


その切っ先が、ジンの目の前へ容赦なく迫った。


「っ!!!」


(いきなりかっ!!)


ジンの目が見開かれる。


木刀が鼻先をかすめる。


ビュオッ!!


木刀が風を裂く。


横薙ぎの一閃。


ジンは反射的に体をかがめ、屋根を蹴る。


ドンッ!!


ジンは体を後方へ持っていく。


そのまま今いた屋根から、隣家の屋根へ飛び移る。


空中で体勢を整え、


ガッ!!


瓦の上へ着地。


わずかに瓦が鳴るが、体勢は崩れない。


すぐに顔を上げる。


視線の先。


先ほどまで立っていた場所には、木刀を振り抜いたままのルカがいた。

「あーダメかー、いい動きですね!」


残念そうな声を出しつつ、その表情はどこか楽しそうでもあった。


少し離れた屋根では、先ほどから腕を組んでいる条列じょうれつ高校の男子生徒が無言で二人を見つめている。

口は出さない。


ただ、その目だけが試合の流れを追っていた。


ルカは木刀を手に持ち下げながら、視線を上げる。


「それじゃー……つかっちゃいますか」


そう呟くと、右手に持った木刀を前にして左手を添えた。


屋根の上を吹く風。

揺れる髪。


その中心で、ルカは静かに集中した。


ジンは屋根の上で目を細める。


(さっきの先読み……)


辺りに少し視線を移す。


(この辺りがめちゃくちゃになっていた……なにが……)


今の世界と周波数が近い世界。


先読みで見た世界は、絶対確定の世界ではない、どの世界に行くかは、今が決める。

変わる瞬間。


ジンは視線はルカに、声をアヤカへ向ける。


「先輩! 本当に次元移動はなしですか!?」


突然の確認に、アヤカが怪訝そうな顔をした。

「どうした?」


「えっと、ですねー……」

説明しようとした、その時。


「さっさと終わらせちゃいましょう」

ルカを中心に、静かに空気が流れ始めている。


そして、ジンを見ながら、わずかに口元を上げた。

「このあともスケジュールあるので」

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