.4 アフタースクール
「ん? どうした? 夜乃、ジン」
一条がすぐに二人の様子に気付き、視線を向ける。
それにつられるように近くにいた生徒たちの視線もジン達の方に集まった。
突然注目を浴びたジンだったが、
特に慌てる様子もなく肩の力を抜いたまま一歩前へ出た。
「えっと、そうですね……その時の人たちが生きるためだと思います」
周囲が自然と静かになる。
「最初は外から身を守るため。次は人をまとめるため。
そして、経済や効率を重視する時代となり、今はまた自然との接し方を探している感じでしょうか」
「おぉ……」
誰かの声が思わず小さく聞こえた。
そして、他の生徒も。
「なんかそれっぽい」
「いや、普通に分かりやすいな」
一条も改めてジンを見て。
「なるほど。大まかな流れとしては、かなり本質を捉えているね」
その横では、アサが満足そうに何度も頷いていた。
そして、一条は楽しそうに口元を緩めた。
「じゃあ、さらにこれからはどうなると思う?」
何人かの生徒は姿勢を崩しているが、関心はそのままジンへ向いていた。
少し考えるようにジンは空を見上げると、
「これからは? そうですね......
さらに人と地球との距離が近くなるんじゃないでしょうか。たぶん」
今度は周囲が少しだけ首を傾げる。
「距離?」
「どういう意味?」
そんな反応を見ながら、一条はどこか面白そうに笑った。
「人と地球との距離、か......なかなか面白い表現だね」
一条は腕を組みながら小さく頷いた。
「実際、近年は環境との共生や持続可能性を重視した都市づくりが世界中で進んでいる。
ジンの答えは、そうした流れにも繋がっているね」
「おぉー」
「意外とちゃんと考えてるんだな」
「それアサに教えられたの?」
その場にに小さな笑いが起きる。
一方のアサはというと、先ほどよりもさらに身を乗り出していた。
「ねぇねぇ、ジン。その『人と地球との距離』って、具体的にはどういう感じなの?」
興味津々で目を輝かせる。
その後もアサを中心に、しばらく都市談義が続いた。
そして昼休み。
(焼きそばパン!)
ジンは軽い足取りで購買に向かっていた――。
そこに、
「あっ、いた!」
ジンがその声に気づくと、ミカと一緒にいたアサがこちらへ駆け寄ってきていた。
「ジン! 今日のお昼は、まずアサイーのジュースと、キヌアとかのスーパーフードね」
元気よくジンの目を見て言う。
ジンは思わず足を止めた。
「えっ、今から俺、購買で……」
するとアサはすぐさま首を横に振る。
「ダメダメ、せっかく私がもってきたんだから!」
その勢いに、隣のミカも思わず笑う。
「気合い入ってるー」
「うーん……そうだ!アサも一緒に焼きそばパン、食べる?」
「えっ、私も?」
「そうそう!今から一緒に購買、行こう!」
「えぇ~……焼きそばパン?」
「うん!うまいから!」
「なにそれ!」
するとジンは自然な動きでアサの腕を取り、そのまま購買へ向かった。
昼休みの学園は、生徒たちの賑やかな声で満ちていた。
そして午後の授業も終わり――。
制服から対魔部専用の特殊体操着へ着替えたジンは、
対魔部道場で対魔部専用木刀を持ち、そのまま集合場所の校門へ向かっていた。
午後の風が校門のあたりを静かに抜けていく。
そこには、すでに3人の部員の姿があった。
腕を組みながら待っている校門辺りに女子生徒が1人。
その少し前には、同じく集合していた生徒が2人、こちらに後ろを向き立っている。
ジンはその中の一人を見つけると、ぱっと顔を上げた。
「あっ、先輩!」
そう声をかけながら、そのまま駆け寄る。
呼ばれた女生徒がゆっくりと振り向いた。
東雲アヤカ、四元学園二年生、対魔部の先輩。
ジンはそのままアヤカの前まで来ると、どこか楽しそうに口を開く。
「今日は、市街での屋根走りの練習ですよね!」
アヤカはそんなジンを一度見て、
「ジン、今朝の魔物との一戦、よくやったわ」
と静かに言った。
「はい!」
反射的に返事をした、その瞬間――
ピタッ。
ジンの体が、その場で固まる。
(こ、これは……!)
まるで空気ごと押さえつけられたような感覚。
アヤカはそのまま一歩、また一歩と近づいてくる。
「そしてその時、相手の動きを見誤ったそうね......」
(み、見誤った?朝のことか......誰か見てた?先生とか......?)
ジンがそんなことを考えている間にも、アヤカは目の前までやって来ていた。
そして、
トン――
細い指がジンの胸元を軽く突く。
さらにそのまま顔を近づけると、
「宇宙は心、いつも中心にいなさい」
静かな声が耳に届いた。
その言葉が終わると同時に、
ふっと体の拘束感が消える。
「あっ......」
ようやく動けるようになったジンは、慌ててアヤカへ声をかけた。
「先輩!......」
だが、その続きを言う前に、
横から勢いのいい声が飛んできた。
「おう! 新愛! やっときたな!」




