↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いまここ新世界  作者: アリエス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/12

.10 スター

スーパーフィールド

人は普段、無意識のうちに無数の並行世界を行き来している。

その並行世界を、意識的に移動する能力。

そして、ジンたちが先ほどまで戦っていたのは、人達の意識だけが存在しない並行世界だった。


――元の世界へ戻る。

景色が切り替わると、そこはスーパーフィールドを発動した瞬間の世界だった。


ジンの背後にはアヤカたち。

そして、向かいには条列高校の部員たちが立っている。


周囲の者たちには、向かい合っていた二人の姿が、一瞬で切り替わったように見え、

次の瞬間には、気を失ったルカをジンが静かに抱きかかえている――

そんな光景にしか見えなかった。


それを見た田中が、思わず声を漏らした。

「えっ!?なにが起きた?……また、使ったってことか?…」


アヤカが、その場に腕を組み立ったまま。

「ジン! 勝負がついたのか!?」


ルカを抱えたまま前を見てジンは、少し落ち着いた様子で。

「えっと……勝負というか、とりあえず、なんとか…」


ジンは気を失ったルカを抱え、そのまま条列(じょうれつ)高校の部員たちのもとへ歩いていく。

条列(じょうれつ)高校の部員達もなにがおきたのか理解できないでいる、

そしてその二人の姿に、条列の部員たちは戸惑いながら視線を向けた。


その時だった。

後方から、誰かの声が飛ぶ。

「おーい!滝峰(たきみね)!今日はここ、世学(よがく)が使うらしいぞ!」

その声に、後ろの方の条列の部員たちが振り返る。


ジンもその声の方を見て、

先ほどルカをジンの相手として指名した条列(じょうれつ)高校の生徒を見た。


(あっ、あの人、タキミネっていうんだ…)


そして、その声を出している男子生徒が呆れたように続けた。

「お前ら、まともに話聞かずに、行くなよ」

その一言で、周囲の空気が一気に静まる。


その後、四元学園と条列高校の双方で事情を確認し合い、今日はこの訓練場を四元学園が使用することで話がまとまった。


アヤカは最後まで条列側へ文句を言い続けていたが、条列の部員たちは気まずそうに頭をかいていた。


その後は予定通り練習が行われ、夕方には部活動も終了した。

ジンたちは部室へ戻り、それぞれ着替えを済ませ、木刀や装備をしまい、帰り支度を整えた。

そして、対魔武道場から出る頃には、陽はほとんど沈みかけていた。

オレンジ色に染まる帰り道を歩いていると――


「あっ、ジン!」


聞き慣れた声が背後から飛んでくる。

振り向くと、アサが小走りで駆け寄ってきた。


「アサ……」


ジンの前まで来ると、アサは立ち止まる間もなく携帯を取り出した。

「大丈夫だった!? ほら、これ!」


そう言うなり、勢いよく腕を伸ばし、携帯の画面をジンの目の前へ突き出す。

あと少し前に出せば鼻に当たりそうなほど近い距離。


「ジンの生体反応、途中で消えるし、その後もすごい数値だよ!」


画面には心拍数や体温、脳波、魔力値などの生体データが大きく表示されている。

ジンは画面を見て、アサに視線を移し目を丸くした。


「そうかな……」


(そっか……この体操服で検知してたな……)


ジンの特殊体操服は所々、破け、身体に傷もある。


そんな反応に、アサは少し頬を膨らませる。

「ちょっと、ちゃんと見てもらわないと!」


そう言うと、アサはジンの肩を両手でつかみ、ガクガクと揺さぶった。


「う、う、うん……」


揺さぶられるたびに、ジンの声まで小刻みに震えた。


アサはなにか満足したように、ジンを見ると。


「じゃ、行こ!」


と、ジンの腕を引っ張り連れていく。


(…力…つよくなったな…)


ジンも引っ張られながら歩き出しながら、

いつもの癖で自分の携帯へ視線を落とした。


(あっ…おすすめに、ミカ達も言ってたグループあるな……)


画面には、以前ミカたちが話題にしていたグループの動画がおすすめとして表示されている。

気になったジンは、そのまま動画を開く。


「ほら! 行くよ!」

ジンの腕を引っ張っているアサが振り返り言う。


「あ、ああ……」

引っ張られながらも、ジンは左手で携帯を持ち動画を再生する。

小さく流れ始めるイントロ。


(曲もいいな……)


そして、アサは車を呼び寄せて、そのままジンを車に乗せて、

アサのグループ会社が所有する施設へ向かっていった。


それから、一週間ほどが過ぎた。

この一週間も、朝になればいつも通りアサが家へ来て、一日が始まる。

授業を受け、魔物、部活をして、また明日が来る。

そんな変わらない日々が流れていた。


そして、放課後の四元学園。

校舎を出て校門へ向かいながら、ジンは何気なく携帯へ目を落としていた。

その時だった。


「ちょっと!」


突然飛んできた声に、ジンは顔を上げる。

視線の先には、腰へ軽く手を当てたルカが立っていた。

制服姿の彼女は、少し怒っているようにも、照れているようにも見える、

不思議な表情を浮かべている。


「うん?」

突然のことに、ジンは首を傾げる。


ルカはそんな反応を見つめながら、何事もないように口を開いた。


「ここでなにしてんの?」


「えっ、今から帰ろうと……」

当たり前のように答えるジン。


ルカはその返事に小さく頷いたものの、すぐには次の言葉が出てこない。

ほんの少しだけ視線を逸らし、小さく息をつく。


普段なら相手をまっすぐ見据える彼女が、今日はどこか落ち着かない。

そんな姿に気づいた周囲の生徒たちが、小さくざわめき始める。

「あれって……ルカちゃん!?」


「えっ、かわいい……」


視線が少しずつ集まっていく。


それでもルカは周囲を気にする様子もなく、ゆっくりと校舎を見上げた。


「へー……ここが四元学園……」


その一言に、ジンは少しだけ目を丸くする。

「うん……」


短く返事をすると、ルカはもう一度小さく深呼吸した。

何度も頭の中で練習してきた言葉を、ひとつずつ確かめるように。


「あれから色々考えて……」


少しだけ間を置く。

そして、静かに続けた。


「……次はちゃんと相手の事を知って、自分の事も知りたいと思って……」


言い終えると同時に、制服のポケットへ手を入れる。

少しだけ緊張した指先で携帯を取り出し、ジンの方へ向けた。


「だから、これ私の……」


普段の堂々とした話し方とは違い、最後だけ少しだけ声が小さくなる。

ジンは画面に映るフレンド追加用のコードを見つめ、思わず聞き返した。


「これって……」


ルカは照れを隠すようにルカは軽く咳払いをする。


「ちゃんと送ってよ!」


言い方はいつも通り少し強気。

けれど、夕日に照らされた頬がわずかに赤みを帯びている。


周囲の生徒たちは、そのやり取りを見ながらまた小さくざわめく。

「えっ……ルカちゃん、自分から?」


「なんか、あの二人知り合いなの?」


そんな視線が集まる中でも、ルカはジンの返事を待つように、少しだけ期待した表情で立っていた。


ジンは画面とルカを見比べながら、小さく頷いた。

「……うん」


するとルカは、まだ何か言いたそうに口を開きかける。


「あと…」


「うん?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。