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この世界では車が巨大ロボですが、道交法は据え置きです  作者: 蒼い諒


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第16話 深夜高速、焼きおにぎりで物流の人を労っていたら聖者にされた話

「…お腹、空いたなぁ」

東名高速下り、午前二時

全高15メートルの巨大ロボ「ソリッド」のコクピットで

タクミは一人つぶやく


モニターには、漆黒の闇に浮かぶ走行レーンが映し出され

スラスターで飛ばす、時速100キロの世界

巨体が空気を切り裂く風切り音と

精密機械が奏でる微かな電子音だけが、深夜の孤独を強調していた


タクミは24歳地方の部品メーカーに勤める、ごく普通の会社員だ

今日は実家から自分のアパートへ、深夜の長距離移動中だ

「深夜なら空いている」という安易な発想

しかし現実は、深夜割引を狙う物流ロボたちの隊列に挟まれ

逃げ場のない「鉄の回廊」を ひたすら滑り続ける苦行となっていた


「ダメだ、強烈にお腹が空いた、寄ろう…」

『前方2キロ海老名サービスエリア・ロボハンガー空きあり』

そんな表示に吸い込まれるように減速レーンへと機体を向けた


深夜のサービスエリアは、まさに「巨大ロボの寝床」

15メートルの巨体たちが、整然と立体ハンガーに収まり

スリープモードの青いランプを点滅させている


タクミはハンガーにロボを停め

コクピットのハッチを全開にした


深夜の冷たい空気が、電子機器の熱がこもったコクピットに流れ込み

タクミの頬をなでる


地上10メートル

コクピットから見下ろす夜の駐車場は

様々な灯りが流れては消え

人の止まらぬ営みを実感させた


タクミは一旦地上へ降り

自販機で「焼きおにぎり」の紙箱を2つ買い込むと

再び10メートル上のコクピットへと戻った


モニターをオフにし

開いたままのハッチから直接、深夜の夜景を眺める

焼きおにぎりは、吹く風にさらさなければならない程、熱く

少しずつ食べるのが逆に美味しさを感じられた

「でも、空腹とはいえ、2つは買いすぎたな…」


その時

隣のハンガーに、一機の巨大ロボが「ズシン!」と

凄まじい音を立てて収まった


無骨な金属の塊、輸送歩行タイプの「ハイ・ヘビー」だ

機体は泥にまみれ、あちこちの装甲が凹んでいる


隣のロボも排熱のためか

ガコンと音を立ててハッチが開き

コクピットからねじり鉢巻きを巻いた

筋骨隆々のオヤジが身を乗り出した


「…お疲れ様です」タクミが隣へ呼びかけると

「兄ちゃん、それ、うまいか?」オヤジのダミ声が響く


「ええ、まあ…サービスエリアの味ですよ」

「いいなぁ、ワシも買うか」

「お仕事、お疲れ様です、長距離ですか?」

タクミはハイ・ベビーの背中に積んだ大型の荷物を眺めた


「あぁ、これから青森までミカンを運ばにゃならん

なのに、このバカロボときたら、アクチュエータが硬くてな…」

オヤジはそう言って、自分のロボを軽く叩く


「兄ちゃんの、スラスター機はいいよなぁ、スゥーと滑る

わしらの歩行機は、一歩一歩が『戦い』みたいなモンよ」


「おじさんのような物流の方が戦ってるおかげで

僕ら生きていけるのだから、本当に感謝してます!」


「そうかい、兄ちゃん、いつでもこっちに来なよ」


「そうだ…おじさん、これ食べますか? 買いすぎちゃって…」

タクミは、ロボのアームを慎重に操作し

焼きおにぎりの箱をそっと掴むと

隣のロボのハッチ前へと差し出す


「おおっ!悪いな、兄ちゃん!」

オヤジがハッチから身を乗り出し、

身を乗り出すようにして焼きおにぎりを受け取った


深夜の高速道路、地上10メートルの空中回廊で

おにぎりの手渡しが行われるシュールな光景


「…うめぇ、冷え切った体に染みるぜ」 オヤジは豪快に笑う


「さて!ありがとな兄ちゃん、焼きおにぎりパワーで踏ん張れるよ!」

オヤジは「ハイ・ヘビー」に颯爽と乗り込むと

ドスンドスンと大音響を響かせて、深夜の闇へ消えていった

タクミは、その揺れを肌で感じながら、最後の一口を飲み込んだ


「…さて、俺も行くか」


ハッチを閉め、再び深夜のレーンに進む

相変わらず、目の前には物流ロボの赤いテールランプが連なっているが

いつまでも合流が待てる気がした


アパートに着く頃には、東の空が白み始めていた

地下ハンガーにロボを格納すると

タクミは、ロボのシートに置いた

焼きおにぎりの空き箱を見つめて、小さく笑い

スマホに届いた利用料金の通知を見ながら

彼は思う「…いい夜食になったな」


明日は、少しだけロボの脚を丁寧に洗ってやろう

そんなことを考えながら、彼は自分のベッドに倒れ込んだ


翌日、昼過ぎに目が覚めたタクミが何気なくSNSを開くと

トレンドに『海老名SAの焼きおにぎり』


嫌な予感がして動画を開くと

そこには昨夜の光景がバッチリ映っていた


『【感動】令和のデコトラ野郎、15メートルの高さで焼きおにぎりを空中受領!

隣の兄ちゃん、マジで聖者すぎるwww』


動画は数百万再生を記録し

コメント欄には

「物流の方、お疲れ様!」

「ワイもおにぎり渡したい!」

という書き込みが溢れていた


「…俺、聖者じゃなくてただの腹ペコなんだけどな」

タクミは照れながら一人つぶやく


読んで頂き、ありがとうございます!

次回は、朝の通勤時に巨大ロボたちが連携する話です

評価、感想、お待ちしております!

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