第17話 朝の通勤で見かけるロボにあだ名つけてたら、そいつらとチームプレイで頑張った
第8話 朝の通勤で見かけるロボにあだ名つけてたら、そいつらとチームプレイで頑張った
朝、7時30分
地下ハンガーを地上に上昇させ
愛機「マルチ」が朝日浴びる瞬間
それが、俺の「オン」の合図だ
全天周囲モニターに、高さ15メートルの視界が広がると
隣のマンションの立体ハンガーから
向かいの家の地下ハンガーと
それぞれの住人たちの巨大ロボが次々と
朝の「歩行渋滞」へと加わっていく
俺が乗る「マルチ」は、ごく普通の機体
派手なスラスターも、お値段高めの最新センサーもない
だが、この巨体を一歩ずつ
ズシン、ズシンと着地させる振動こそが
令和サラリーマンを表している
今朝も いつもの国道16号線
ビル3階ほどの高さにある信号が「青」に変わる
俺は慣れた手つきでアクセルを踏み
そして、周囲の機体を観察し始めた
「よし、今日もいるな… 『古参のシルバー』 」
前を歩く、手入れの行き届いた銀色の一般機
このパイロットは、おそらく定年間際のベテランだ
歩行のピッチが完璧に一定で、停止時の衝撃が全くない
まるでビルの景色に溶け込んでいる
「それから…あいつは新顔の 『ふらつきレッド』 か」
右レーンを追い抜いていく、メタリックレッドの軽巨大ロボ
12メートル級の小回りを活かしているが、どうにも挙動が怪しい
重心移動が急すぎて、機体が左右に揺れている
よろけて隣のビルに肩をぶつけでもしたら
始末書の山だぞ、お前
「…おっと、お出ましだ 『ホバーの貴公子』 」
隣のスラスター走行専用レーンを
凄まじい風切り音と共に駆け抜ける高級機
維持費で俺の月収が吹き飛ぶような機体で
渋滞を「高みの見物」だ
今日はこのメンツか…
「ふんばりイエロー」
「石橋叩きゴロー」
「ポイ捨てスペシャル」
彼らは休みかな?
さて、少し走らせたところで違和感に気づく
『古参のシルバー』 は、いつもと様子が違った
駅前の大きな交差点を越えたあたり
銀色の機体が急に歩行速度を落としたのだ
故障ではない
あれは前方の状況を確認している動きだ
俺がモニターを拡大すると
二つ先の信号付近で
一機の大型輸送ロボが膝をついて停止していた
いわゆる「路上故障」だ
片側二車線の右を完全に塞いでいる
「…最悪のタイミングだな」
朝のラッシュ時の車線減少は
強引な車線変更が連鎖し
殺気立った「割り込み合戦」が始まる予感がした
案の定、右レーンからは 『ふらつきレッド』 が
急加速と急ブレーキを繰り返し
先行する 『古参のシルバー』 の隙間に
無理やり頭をねじ込もうとしている
『古参のシルバー』 は、あえて速度をさらに落とした
だが、それは譲るためではない
後続の俺に対して「ここから連携するぞ」と示すような
絶妙な機体の傾きだった
俺は直感した
「…よし合わせてやるよ、ベテランさん」
『古参のシルバー』 は 『ふらつきレッド』 に
文字通り「軽く」ふらつきブロックをする
そこからできた 「数メートルの空間」 に
俺の機体を滑り込ませる
俺と 『古参のシルバー』 は、二機セットの壁になり
流れを一時的にコントロール
そして、驚いた
隣のスラスター走行専用レーンの 『ホバーの貴公子』 が
フラッシュ・ライトを後方へ断続的に点滅させた
「注意する地点はここだ」という、後続への明快なガイド
いわゆる「交通整理」を買って出たのだ
故障機の前で立ち往生していた他のロボは
スピードを落とす俺と 『古参のシルバー』 に気づくと
一台ずつ交互に入る、完璧な「ファスナー合流」を作る
『ふらつきレッド』 も、最初は苛立っていたようだが
全員の整然とした足運びに気圧されたのか
やがて大人しくリズムに合わせ始めた
一機、また一機と
言葉を交わさない三機の連携によって
道は驚くほどスムーズに流れ始めた
故障車の脇を通り抜けると
俺は機体の腰を深く落として「会釈」をした
『古参のシルバー』 も、そして『貴公子』も
それぞれの機動でそれに応える
結局、会社近くに到着する時間は
いつもと変わらなかった
そして、それぞれの機体が
それぞれの道へ分かれる時
ただ静かに右手を少しだけ動かす
「…それぞれの、性格分析の修正が必要だな」
通勤路の巨人たちは
今日も無言のまま、それぞれの戦場へと散っていった
読んで頂き、ありがとうございます!
次回は、いったん最終回!
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