第10話 巨大ロボで頑張って娘を学校に送ったら、最後に中指を立てられた
「パパ、遅れる!早くして!」
朝の静寂を切り裂く、愛娘サキの鋭い一喝
時計の針はすでに、小学校の集団登校時間を過ぎている
「分かってる!今、システムをリブート中だ!」
急に送るとなると、俺も出勤が危うい…
ネクタイを片手に地下ハンガーへと駆け込む
家の庭先が垂直にせり上がり、地下から「ファミリヌ」が姿を現す
もちろん、ファミリータイプの巨大ロボ
独身時代は走り屋タイプの…まあ、それはいい
ダダダッ…サキは助手席に飛び乗り一声
「さあ!行くぜ!」
「行くぜ…その言葉使い、誰に似たのやら」
「いいから、行くぜ!」
駆動音と共にファミリヌが朝の住宅街へ踏み出す
アスファルトを叩く重厚な足音が響き
足元の振動で、お隣の植木鉢が震える
「パパ、あっちの近道を通って!」
「バカ言うな、あそこは生活道路だ…
この機体じゃ肩の突き出しが電柱に当るよ」
俺はいつも通り、ファミリヌを大通りへ
しかしそこには朝の絶望
「…動かないな」
見渡す限りの鉄の背中
右を見ても左を見ても15メートルの巨体
眠たげな赤い停止ランプがチカチカと目に痛い
「パパ!歩いて行ったほうが早いんじゃないの?」
ふと横を見ると、専用レーンを
スラスター機が「ぬるり」と追い抜いていく
優雅に滑っていく高級機、その姿よ…
「いいなぁ、スラスター機…あれなら学校まで一瞬なのに」
「サキ、あんなのは維持費が高いだけの贅沢品だ
家族で乗るなら、安全性の高いファミリヌが一番!」
実際は羨ましくて仕方がないが
役に立たない親の威厳を発進させる
「ププーッ!」
警告音が前方で鳴り響いた
「なんだ、接触か?」
モニターを拡大すると、12メートル級の軽ロボが
路肩の電柱に足を引っかけて立ち往生
「あちゃー、取り回しの良さに負けて無理な転回をしたな」
最近の若いドライバーはアシスト機能に頼りすぎだ
「パパ、裏道!あそこの路地なら行けるって!」
サキが指差したのは古いビルに挟まれた細い道
ファミリヌの肩幅を考えれば…
左右の隙間は20センチってとこか
「…よし、パパの腕を見せてやる」
俺はマニュアル操作に切り替え、レバーを握り直し
膝関節の制御を「ソフトモード」へ
「シュイン…シュイン…」
巨体が生き物のようにしなやかに動き出す
ビルとビルの間
肩をすぼめるようにして進む
窓越しには、オフィスビル3階の会社員
見れば大量の紙に、一心不乱にハンコを押している
「どこかにぶつけて、彼の押印をズラしたらマズい」
今度は腰をひねり、足をひねり…
独身時代、狭い道はお手の物
いろんなヤツから逃げたものよ
「ホレ、よし、抜けた!」
目の前には小学校の校門
そこには俺と同じように子供を送り届けに来たロボたち
「パパ、ここでいい!降ろして!」
「待て、二重停車は違反だ!ちゃんと停車エリアまで――」
しかしサキは聞いちゃいない
タラップの横に滑り込んだ瞬間ハッチを開ける
サキは慣れた手つきでコクピットから飛び出すと
スルスルと踊り場へと下り
そのまま簡易はしごをタタタッと降りていった
「誰に似たのやら…」
校舎に入る娘を見送り
さて、戻るか、と思いきや
助手席にはサキの上履き入れが…
俺は慌てて外部スピーカーのスイッチを入れる
「サキ!上履き入れ、忘れてるぞ!今、下に置くからな!」
すると陰から真っ赤な顔をした娘
全力でこちらに中指を立てるのが
モニターにはっきりと映し出されていた
「誰に似たのやら…」
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次回は、今晩のメニューは何か?巨大ロボと共に真剣に考える男の道中です
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