第9話 渋滞でラジオが入らないから巨大ロボでお辞儀してたら妻が酔った
日曜日の午後
行楽帰りの巨大ロボたちで、国道はひどい渋滞
私の愛機、全高15メートルの「カロラ・レガ」は
アスファルトの上でじりじりと足踏みを繰り返している
一歩進んでは止まり
また一歩進んでは止まる
「ズシン…ズシン…」
「…動かないわね」
助手席で、妻のユミが不機嫌そうにモニターを見上げる
「連休最終日だからな」
私は計器をチェックしながら、コンソールのスイッチを入れた
「……ッザー、……こちらは、FM……ピー」
スピーカーから流れてきたのは
耳を刺すような激しい砂嵐
「うーん、このあたりの山道、電波が入りにくいんだよな」
「ちょっと、早く直してよ…楽しみにしてる番組があるんだから」
巨大ロボ専用のラジオ放送「ギガ・ヘルツFM」
ユミが楽しみにしているのは
リスナーからの悩みに毒舌で答える「ギガ・人生相談」
私はアンテナの感度を上げようと、操作レバーを慎重に動かした
モニター越しに、カロラ・レガの右腕がゆっくりと上がる
「よし、この角度か…?」
右腕を斜め45度
肩のアンテナをつまみ、顔の少し上あたりで固定する
「――はい、次の相談者さんはぁ…
『隣の家のロボの足音がうるさくて、夜も眠れません』
という足立区の主婦の方ぁ…」
ノイズの向こうから、ようやくパーソナリティの声
「あ、入った」ユミが満足げに頷く
しかし、その喜びは長くは続かなかった
「…えー、そんなの、耳栓をすればいいじゃないですかぁ
だいたいね、全高12メートルの軽ロボに乗ってる分際でぇ
15メートルの普通機に文句を言うなんて……ザー、……ピピピ」
またしても激しいノイズ
どうやら腕の角度が少しズレたらしい
私は再びレバーを握った
「もうちょっと上か…?
それとも、少し指を広げたほうが受信しやすいのか?」
カロラ・レガの巨大な指先が、空中で うねうねと動く
傍から見れば、山道の途中で立ち往生している巨大ロボが
必死に手招きをしているように見えるのだろう
道路反対から向かってくる対向機が
私の近くに来ると、誰もがゆっくりとなり
こちらをジロジロ…
私は恥ずかしくなり、つい
ロボでお辞儀をしてしまった
「あ、聞こえた!」
「ピ…巨大ロボの振動っていうのはねぇ愛なんですよ!ザー…」
再び砂嵐に
「ちょっと…もう一回、ロボでお辞儀してみて」
「へ?」
「いいから!」
ガクン!
ユミの気迫に負け、反射的にロボお辞儀すると
「ザー…でも、普通機の優越感に縛られてるヤツも嫌いだぁ…ピー」
「お辞儀よ、お辞儀!繰り返して!」
更なる気迫に押され、何度もロボお辞儀する
ガクンガクン!
「…次はぁ、世田谷区のユミッペさんのメール」
「これ私よ!私が送った相談!お辞儀!お辞儀!」
鬼のような気迫に押され、ロボお辞儀をし続ける私
「ちょっと!お辞儀に集中しすぎてぶつけないでよ!」
見れば確かに前方が近い!
ユミの悲鳴、採用された歓喜の声
そしてロボのヘッドバンキングが続き…番組は終了
「私のメール選ばれるなんて!回答も面白かった!」
ユミは頭をガクンガクンしながら喜んでいる
「そう、良かった…」
私も頭をガクンガクンしながら答える
「お辞儀はもういいわ!
それより見て、前のロボ、もう結構動いてるわよ」
気づけば渋滞が解消され始めていた
私はラジオを絞り、通常運転に戻る
ふと、隣からの視線を感じると
ユミが潤んだ眼で私を見つめている
ラジオを聞くために頑張ったかいがあった
こんなに感謝されるとは
「あなた…」
「お礼はいいよ…」
「近くの薬局で酔い止め買って」
「はい…」
読んで頂き、ありがとうございます!
次回は、愛する娘のために巨大ロボ送迎を頑張るパパの話です
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