75:モーニングを出す場所へ向かう彼ら
「北の聖女のもとへ、セルジオス殿下が向かったと聞き、このシオン ハークエル馳せ参じました」
朝の練習を終え、支度を済ませたセルジオス殿下に、早朝やってきたシオン卿が連絡の挨拶を行っている。
「お前の家臣を、聖女フェリーナにはべらせておいてよく言う」
そう話すと、セルジオス殿下は『話をしよう』と言って目的地に向かって歩き始める。
朝、川の流れる音を聞きながら、王族、有数の貴族に、王の落とし子、辺境の騎士団長の四人と、護衛の近衛騎士とオリビア様。
――なぜ、風光明媚なこんな場所で、このメンバーで歩いていなければならないのか? そう自問自答するが、ここが守るべきセオラ・ノーブルの最北端の町となったのだから仕方がない。
そうマークは考える。
それに、シラフサ辺境騎士の団長と、副団長より、だいぶましな方だろう。
団長は、アークエルのいる家の警備を任され、副団長のジェームスはその娘について町を歩かされている。そんな不運な現状だった。
仕事に文句は言いたくないが、ここでの暮らしは平気で24時間勤務の場合もありえる。愚痴も出ようというものだった。
◇
「今日は苺のケーキが食べたい気分なのに、苺のケーキがなかったわ」
「苺がないから、しょうがないでしょう。 木の実のケーキが美味しいって、昨日は言ってたじゃないですか?」
「でも、今日は苺の気分なの!」
――あっ。
マーク団長は思わず、可愛そうな者みた。という顔をする。
「やー、ジェームス。木苺のケーキなら、マルルさんへ言っておけば、出して貰えるらしいぞ」と、だから思わず、ふたりにそう言葉をかけた。
セイラは腕を組み、考え込む。
「木苺を食べてもいいわ」
「いや、だからお嬢ちゃん、さっき渋々だか、木の実のケーキ食べて『これはこれで美味しいけど……』って言って食べたばっかりだろう?」
「気に利かないわ」
そう言って、セイラは歩いて行ってしまう。
「ははは……、彼女は可愛らしくなったものだね」
そうセルジオス殿下は、ジェームスに声をかけるが達観しているのか、違う意味なのか、生憎……、ここにいるメンバーにはわからない。
「恐れがら、セルジオス殿下、いったいどこかですか?」
「過去は関係ないだろう? 行った、行った!」
そういうと、先を歩いて行くセイラをおってジェームスは走って行く。それをある意味、自分を売り込む武器を持っている男たちが、見送っている。
たぶん、怪しい一名を覗き、女性に顎で使われたり、我が儘な彼女が可愛いという価値観を持ち合わせてない。
残された彼らからは、自然と哀愁や、憐憫が漂い始めるようだ。
「やはり、彼女は自らの母を拒絶してる?」
「その様です」
そうマイク団長が小さく口添えをすると、セルジオス殿下は腕を組み、首を捻って考える。
「この地へ来て、ふたりの聖女が変わろうとしている……。そんなにあの継母はふたりの聖女を蝕んでいるか、聖女であるフェリーネの言う様に、イクリオン家を守る現在の体制が原因か、どちらだろうね?」
そう心の内を、言葉にして漏らした。
「その両方でしょう?」
「とりあえず殿下が、アークエルと直接話し、真実を見極めた方がいいのではないでしょうか?」
カリオスは自分の考えを推し進めるように、言い切り。
突然の出発に不似合いな、華麗な衣装をシオンは身に付け、優し気なもののいい方で未来の王に進言した。
「そうは言ってもなぁ……。
アークエルはフェリーネや、その血のつながった者たちへの恨み言しか、今のところ言ってないではないか……。
ところで、シオン卿は……馬車で来たのだろう?
ずいぶん早かったじゃないか。
まるでですべて、お前の手の内であるかのようになっ」
セルジオス殿下は早馬を使い、兵をローリエより領地二つは離れた、
シラフサ辺境騎士団で借り受けた。
それで王都から二週間……で、ローリエへ。
しかし一度ライストファーへ訪れた事のあるシオン卿は、どちらの大回りの道を使ったのかわからないが馬車に乗り悠々とやって来た。
セルジオス殿下の出立を知ってからでは、早すぎる到着という事だろう。
「シラフサの峠を越えて来ました」
「シラフサを? 魔物溜まりを越えて来たのか?」
「はい、そうでございます」
シラフサの峠には魔物の溜まり場があり、旅人はそれを避けシラフサ峠より標高の高い、二つの山のどちらかを越えてる。
それで最北部のこの地へとやって来ると、二週間程の日数がかかってしまう。
しかしシラフサ峠を越えるなら、その時間は半分を程に短縮される。それは出来る時期はある。
シラフサ峠を越えるられる条件は二つあり。
1つ目は、魔物の活動減る個体が多い、冬、もしくは冬に近い時期である事。
2つ目が、高い山々が積もった雪で閉山する、前であること。
その時期を見計らいというか、やむを得ない事情がありジェームスが、副団長を勤めるシラフサ辺境騎士団と、王都側からの騎士団が同時に討伐を開始を始めるのが例年の習わしである。
◇◇
「フエリーネ様が王都で消えてから、山賊のねぐらで、私どもと会うまでの時間が明らかにおかしかので、もしやと思い、ふもと村で聞き込みをしました。
そしたらどうでしょう。
何者が魔物を倒し、王都へ向かったとのことでした。
そして我々はそこを、数少ない魔物を倒しつつやって来たのでございます」
そうシオンが長い髪をなびかせ、優美に笑えば、己の無知を攻められず、セルジオスは黙った。
「シラフサの魔物は、俺が倒した」
そこへマーク団長に視線を受けて、カリオスはさらっと言いのける。
そんな雑談混じりに一同は、ふたたびレストランの扉をくぐり入っていく。
セルジオス殿下は、昔の友情を温めるかのように、昔馴染みのいるレストランに熱心に足を向ける。
それで剣聖と、聖女の二人が手駒となれば、貴族を束ねる事がいくらか楽になるはず。そして辺境も磐石なものとなることだろう。
セルジオス殿下は、どこまで考えているのか?
◇
「いらしゃいませ」
そう言いマルルは抱える様に、おぼんを持って現れた。
「俺がやろう」
カリオスが持つと、ミニサイズなおぼんを受け取り、テーブルの中央に置くと、次々にコップをおろしていく。
「配っておいてくれ」
コップはマーク団長の前近くにあるが、半分以下はセルジオス殿下の前に置かれている……。
そうするとマーク団長が動くより先に、近衛騎士と、オリビエ様が前に出てきて、コップを配っていったがそれは、それでどうなのか? 幼子ではないのだから。
そしてカリオスが戻ってくれば、その様子に驚き立ち止まったようだ。もしかしたら、オリビア様がカリオスを睨んでいったのかもしれないが。
「朝食を、とるものはいるか?」
「いえ」とカリオスの問に、否定の言葉があがる中、「では、俺は食べようかな?」そうセルジオス殿下は言ったのだが……。
昨日――。
「起床時の朝食は、決められメニューが出されますが、どうなさいますか?」
「俺はいいよ。朝食はとらずに訓練をするからね」
――そうおっしゃったのに……。
「昨晩、聖女フェリーネの話しを聞かせて貰った。以前の印象からは、家族の影に隠れていた女性って印象だったが、彼女は家族と争うつもりのようだ。カリオス、君の影響が強いらしいね」
「いえ、以前から戦場での彼女はそんなそんな様子でした。そうでなければ戦場で結果は最小限になってしまいますから……」
そうフェリーネの過去を知っている、マークが口を出す。
「それにミリアが居るからだろう。彼女は数少ない家族として、あの子を大事にしているからな」
「そこにカリオスが入っているだろう。こいつはそういうのが上手くて嫌になるよ」
そう話す三人の話を、シオンはただ黙って聞いていた。
「俺の話はいい。フェリーナの話が終われば、セリファス家の残りのふたりの話をしてくれ、セイラについてどうなんだ?」
「私の見立てでは、今はただの子どもに戻っているようだ。兄貴分を見つけてくっいて歩くひな鳥のように」
「そして本当の親鳥は、ひな鳥のことをとても心配していましたよ。セルジオス殿下が王都を出発された事を話し、『付いて来るか?』と問えば、ふたつ返事で『もちろん』とおっしゃいました」
「それでシオン卿の目的はなんなのだ?」
届いた朝食のオムレツのパンを手に取り、ちぎって食べている。
「私の目的はやはり、皆様と同じ平和のためでしょうか? 自治領の平和が優先されますが、それは仕方のない事でしょうね」
そう優雅に言ってのけるシオンに、他の三人は黙る事になる。
――やはり一番わからないのは、シオン卿の様だ。素晴らしい言葉がついてでるが、セリファス夫人を連れて来た。その事実を考えると、目的の為に手段を選ばないようで、彼という人物像を隠していく。
……手段を選ばない方が素なのか?
マーク団長がそう考えている間に、話しは建設予定の兵舎に変わり、いきなり彼は頭を切り替え、手帳を片手に説明をする事になってしまった。
続く




