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辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
4:目的のためにさまよう聖女

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73:フェリーネへの尋問

 その日は、やはり普通の日と違った。

 六名ほどの騎士たちの到着だったが、そこに、この国の王子も含まれるなると、町はやはり騒めいた。


 しかし相手はやはり王族である。人々寄り添う聖女と違い、無礼討ちもあり得るためか、人々は警戒し、子どもたちは家に入れられてしまったようだ。


 そして辺境を治める騎士たちも、見かける事はなかった。



 ◇


 その時間の辺境騎士団は王都からやってきた王子と、騎士に対応をしていた。


 彼らのしばらく滞在する場所をどうするか? という問題が起っていた様だ。


 辺境騎士はツワモノ揃いで、魔物との戦いで武勲をあげ、地位もそれなりに上らしい。


 しかし今回、突然現れた集団は、王都に居る王族であり、そんな王族を守る騎士には貴族の子息も多い。


 そうなれば眠る場所について、平常時であれば特に、どこでもいいというわけにはいかない。


 現在この町には、マーク団長の計画の結果、兵舎は建設に備え、家を確保してある。


 二年の大災害の際に、商魂逞しくやって来た商人が引きあげる際に、残った家を買い取っていたらしい。

 その家が現在、この町の辺境騎士団の起点となっていた。


 そこは今は備蓄倉兼、仮の住宅になっている。


「しかし、部屋には寝袋が置かれた状態で、ベッドさえなかったのだよ……」


 そう同じテーブルを囲む、セルジオス殿下が呆れたって感じを出しつつ話をする。


「はあ……」

「それは大変でしたね」


 そう言うオリビアとフェリーネに対し、ミリアは自国の王子に興味があるが、黙って話しを聞いていた。


 そこにもう一人、夕食を食べていた自警団の誰かに聞いたのか、血相変えてやって来たカリオスが『夕食を食べに来た』という名目でメンバーになっていた。


「それで……なぜで、殿下はフェリーネたちと、食事をとっているのですか?」


「今、騎士たちは部屋決めをしていてね……。馬で来たものだから、仮設テントも建てられない有り様だよ」


「で、護衛も付けずここで、食事をしているですか?」

「そうだとも」


 彼はステーキに付けられた、温かなカップスープを飲みつつ言っている。

 突発的な移動、聖女の存在がこの地にいるためか、先程、話にあった毒見係の存在はないようだ。


「許嫁のいる女性の部屋に行くのは、はばかれる。だから食事に現れたら連絡するように、言ってあった。そしてそこに私も現れた。聞けば簡単だろう?」


「騎士たちにそんな手間をさせるくらいなら、俺のところに来てくだされば……」


「尋問は一人ずつが原則だろう? カリオス卿が来たら居座るに決まっている」


 そう殿下に言われ、すでにここへ現れてしまってるカリオスは怯む事になった。


 その様子をフエリーネは見て、『居座るんだ……』とだけ考えて料理の付け合わせのブロッコリーを見つめ、パクッと食べた。


 ――いつもの丁度良い塩加減で、美味しい……。


「あの……私もお姉ちゃんと一緒に……尋問を受けていいでしょうか? 教会のことならいっぱい話せます」


「ミリア……」

 そう勇敢にも、王位第一継承者に声をかけた彼女、その尻尾は緊張のためか、椅子の下に隠れている。ふわふわに耳も伏せてしまっていた。


「ミリアといったよね? 私は事件を捜査する騎士ではないからね。私の仕事はまだ調整役だからねー。本人たちのの希望のよっては君に聞く事もあるかもしれない。その時はよろしく頼む」


「はい、わかりました」

「ミリアありがとう」


 そうフェリーネは言い。ミリアは「うん」と答えてくれた。


 その際、彼女はちょっと心配そうにこちらを見たが、フェリーネがうなずくと静かに食事ををとる事を再開する。



 ◇◇


 幾つかのソファと、キッチン用の簡易的な魔法器具。


 結局、宿屋の二階を一時封鎖して、その中のベージュ色のソフェに、セルジオスとフェリーネは対峙することになった。


 その後ろに控えるのはセルジオス殿下、お付きの近衛騎士らしい。

 カリオスたちは部屋を開け、控えているってことになっている。


「では、まずは、質問などあるだろうか?」

「先程の事などですが、調整役というのは? セイラを誘拐したという犯人について、逮捕とかは考えていないのですか?」


「それを含めての調整役さ、セリファス家の中で誤解があるかもしてない。まず、事実を確認し、内々の済ませるところは、それ以降は相手に問わない。そうあって欲しいね」


「問う事ができない……」


 重い問いに答えなければならない。そう彼女は思った。


「やっぱり難しいか。慈悲の心で許してくれれば、全てが簡単に終わると思ったんだが……」


 彼女は顔は、目の前の人物を落ち着いた表情で見る。


「私は北の生まれですので……」

「そのようだね」


「セオラ女神教団の教えの、女神様の子孫ではないようです。神格化された、北部の治療のできるただ人間の子孫なのでしょう。きっと……。そして私自身が、まだまだ若輩者。ですので、普通の裁判ではだめでしょうか? 専門の方がいらっしゃらなければ、どう収めるかもわかりません」


「駄目だね……。

 俺が『断罪を申し渡す』と言い出したら、大体、その俺の意志は通ってしまう。俺の名誉を重んじる為にね。


 その逆に、俺を罰する為には、父や、貴族たちの力関係が重要になる。


 聖女は女神の代行者として脆くもあるけど、やはり多くの場面で君が守られ、裁く方もそれなり権力を持ち、責任が伴う。


 そして司法が、聖女を罰する前提を作るのは、好ましくない。次は俺が罰せられる可能性があるからね」


 その話は、聞いた事があった。

 社交界に薔薇、サラテート様を罰せられない理由だ。


 いつでも、その理由が立ち塞がる。


「ですが……、罰せられない理由によって、他の問題を引き起こしている時は、どうすればいいのですか?」


「そうならないように気をつけてはいるよ。今回は、父が息子を危険な北部へ送り出し、俺自身は危険な崖を飛び越え、問題を早期着手するべくしている。起った過去は変えられはしない。だから要望を聞くことにしている」


「そうですね……」

 セルジオスの顔を見ていた、彼女はテーブルの上を見る。

 王子の言っている事に、間違いがないだろう。


 祖母の死に目にあえなかった事が悲しいです。悔しく、悲しくてもどうしょうもなかったあの日。しかし、それはきっと犯罪ではない。


 家庭内の内々の事と、片付けられてしまうのだろうきっと……。


 魔物のいるこの時代、大人も、子ども問わず、苦しい思いをするこの時代に、何が犯罪なのだろう?


「こちら側としては、聖女を内密で連れて出した罪も、君が勝手に王都を抜け出した罪も問うたりしない。叙情酌量を比べている時間があれば、治療にせいを出して欲しいという理由もあるが」


 フェリーネが言い淀む隙に、どんどん外堀を埋められていくようだ。


「そうですね。王都から勝手に出たのは理由がありました。


 あの王都で、私は聖女ではありませんでした。


 私は聖女の力を隠さねばなりませんでした。そうしなければ……、ミリアと二人、怖い思いが待っていました。


 あの教会で、私と彼女はあまりも何も知らない子どもだったんです……。もし……セルジオス殿下が同じ立場なら許せますか? その環境に置かれる事を……」


「私はそんな環境に置かれはしない。私は守られていたからだ……。

 だから、君とカリオスの立場は可哀そうに思うけれど、それが事実だよ。立場だから、不運だからと比べても、人は様々だ。それはどうしょうもない事、だろ?」


 フェリーネは、さとられないように、この国で有数の尊い方を見た。


『会話がずれている』いや、ずらされているのかもしれない。


 確信へ全く近づく気配がない。相手が王族であるから余計知りたい情報へ近づけない。けれど、カリオス、そして自身の敵は不可侵の敵では決してないはずだった。


「ですが、カリオスは当初、全身毒におかされていました。毒を彼に注いだ者がいるはずですよ。不運ではなく」


「それを誰か大人には?」

「そんな事、やはり誰も教えてくれませんでした」


 フェリーネは小さく首を振った。

 それでは真実の詳細はわからず、証拠にもなりはしない事はわかていた。


 けれども、彼女はそんな事実を積み上げれる。霧散して意味を成さなくなる前に。


 ――だから、過去をを知ってくれ、優しく癒してくれるだろうカリオスに惹かれてしま……。それだけじゃない。カリオスはかっこいいですから、生き方とかいろいろ。


「けれど、これからは相談させてください」

「いいよ。現在の問題についても触れよう。どうしたら満足?」


「そうですね……。今は幸せなんです。二年前の大災害を経験して、守ってくれる人がいて……」


「そっか改めて、婚約おめでとう」

「ありがとうございます」


 フェリーネは、控えめにニコッと笑う。


「きっと……母もー不安だっただろうけれど、知らないところでこんな幸せはあったと思いたいです。そうでなければ、聖女の祖母がそれを良しとするわけありませんから……」


 そこでセルジオスは何かを感じとり、フェリーネを見つめた。


「だから、今のままでは駄目なんです。


 現状は、あの頃と何も変わっていないはずです。


 一部の有力な貴族が、ただ手の中の幸せを願う者たちの、心と幸せを壊す。そんな未来が待ち受けた過去と。


 だから、やはり白黒つける事を望みます。私が犯人となる世界では納得できません。そして母の、そしてカリオスの両親の生きた過去についても同様なのです。


 そして、この地へ逃げたのにセイラはやって来た。

 過去は、現在となって私たちを逃がしてくれないのなら、この地で静かに暮らすために、チャンスをくださいませんか?


 法も、弁護士も頼れないのなら、セルジオス殿下、貴方様縋るしかないのです」


「セイラは、俺がここまで連れ来た。だが、たしかに、あの娘は囚われていたと言って、王都より遥かにライストファーに近いローリエに居たのは確かだ……。きっとそこに何者かの思惑があるのがわかるが……」


「私の知っている知識の中では、セイラにあそこまでの聖女の力はありません。その秘密を解き明かます。そうすれば、今でている結果もきっと変わると思うのです」


 そう、フェリーネは言い終えた。


 自身は、セイラが聖女であることに、否と言っている。

 やはり、事実を表に晒す突破口は、そこにあると思えたからだ。


 続く




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