67:騎士の一行に体当たりする、セイラ 1/2
気付けば6000文字だったので、半分に割りました。後編、10分後の投稿になってます。半端な文字なので(しかし6000文字は流石に長いかな? となりました)
ローリエの森、数少ないが魔物の姿が確認されているこの森で、セイラはスカートを握りしめ怒りに震えていた。
「聖女様、待ちに待った王室の迎えがやってきますよ」
そう突然、部屋にタンクトップとショートパンツの女の方が入って来たと思ったら、引き出しに入れてあった手紙を次々取り出していく。
「何するのやめなさい!?」
女に出そうとした、その手はいつまにか入って来てた男にねじ上げられる。
「やめて!? 痛い! 痛い!」
「お前そこまでにしておけ、後でチクられて痛い目みるのはお前だぞ」
そう女が、セイラの後ろの男に話しかける。
「はぁ……面倒くさいが、それは成功したという事で良しとしよう」
「お前が決めることじゃないだろう? で、でだ、聖女様、燃やすから、手紙の数を確認して」
そう女は手紙を指さし言っている。
セイラは、その手紙の置かれた机を背にし「絶対、あんた達の事をサラテート様に言いつけてやるわ!」そう声を張り上げる。
「その手紙の内容のように、助けてー! サラテート様って?」
「ははは、面白い、面白い。うちと公爵家が大戦争か?」
そう二人はセイラをあざ笑う。
セイラは、「なっ!?」って言ったきり喋る事ができない。もちろん怒りで、こんな屈辱久しぶりだ。
――パン! と、女が手を打つ。そして頭を掻きながセイラに説明を始めた。
「いい? この手紙は全部焼却するわ。馬鹿じゃなかったら、欠片さえのこさないで、ビリビリに引き裂いて燃やすの。そして貴女はなぜここにいるの?」
「わからない」
セイラは大きく首を振った。
「食事は?」
「扉の下から入れられて……」
「では、犯人を見てないの?」
「はい、見てないわ」
そう言うと、女はうー……んと言うように首を傾げる。
「話し過ぎかしら、貴女はここに閉じ込められ、凄く臭くなっているから首を振るだけでいいわ」
そう腕を組み、手でセイラを指し示す。
「臭いは余計だわ」
「いえ、余計じゃないわ。あんまりに臭いし、無様だから若い男の邪険にされても、見かけ上はしょげててもいいけど、ハングリー精神で頑張ってね」
「わかっているわよ!」
セイラは反抗的に言うが、「ありがとう……」と、少しだけ義理で言ってみた。
「ははは、デレたわよこの子」
「お前はコイツに構い過ぎ、コイツが死んだら泣くのはお前だぞ。飼ってた犬を思い出せ」
「犬じゃないから!?」
そう、セイラの言っている横で、女は「あぁ……」ってそう言えばみたいな感じで言っている。
――だから犬じゃないから。
そう言うのは面倒なので、セイラは書いた手紙を小さくちぎり始めた。
そしてペンは取り上げられ、よくこんな所で生活していたなぁ……。
そういう感じの、見るに堪えない、不衛生だけだ残された。
その後、「これから見る物は、騎士と会えばすべて忘れて頂戴」そう言わて双眼鏡から、騎士たちの行進を見せられ、窓から脱出させられ見当だけで走らされた。
本当に散々な目にあった。
◇◇
深い森で、双眼鏡から見た風景と馬のいななきだけを頼りに、騎士の一団を見つけた。
安心からか、足元がおぼつかなくなるそれを、懸命の意志の力で奮い立たせ、目の前のそれに向かい、ただ走った。
「助けて!?」
セイラは、道行く騎士の隊列に、体当たりするような加減で走り寄る。
「危ない!?」
乗馬をしていた騎士が思わず叫べば、馬がセイラのまわりに足を上げて足踏みをする。そこへ他の騎士を乗せた馬がやって来て、立ち止まり、集まる。
馬のいななきと、人間の罵声がうるさいほどだ。
セイラは、多くの騎乗の騎士に引っ張られ、暴れる馬から遠ざけられる。
――何故、私がこんな事に!?
「危ない!」
「何を考えているんだ!?」
「なんて、匂いだ」
「鼻が曲がる!?」
彼女とそう変わらない、周りの兵が口々に彼女を罵り、彼女は唇を噛み締め、屈辱に耐えていた。
彼女は平民の着る服を着て、髪も、体も、一週間は洗われいない。
知らせを受けてから、入浴出来ないかったらどんな事になっていただろう。
それが余計、血気盛んな騎士たちの怒りを煽っていたようだった。
「いや、待て、待て」
あまりの様子にジェームスが馬から降りて、セイラと怒れる騎士たちの間に入る。
ブラウンの髪はウェーブを描き、まばらに無精ひげ生えている彼は、腰に手をやりながセイラの腕を持ち、自分の体の後ろへと隠す。
「子どもだ。それに『助けて』、と言ってやってきたんだ。そこまで怒る事はないだろう」
彼が庇っている間にセイラは、自分の腕を掴む手から、乱暴に手を引き抜いた。
「この!?」
それを見た兵は、怒りをふたたび燃え上がらせ、ジェームスは困った様にセイラを見る。
『大人しくしてろ』そう小声で彼女に伝えるが、彼女は聞くもんかという風に、腕を組み、他所を向く。
さすがの彼も肩をすくめ、彼らの周りに輪がどんどん増えていく。
その周りを後続の騎士は疲れた目で、彼らを見つめ収拾をつけに動き出した。
しかし中には、そのまま知らん顔をして、進行を止める騎士も居たほどだった。
「いい加減しろ、その子どもを何とかしろ!」
「わかった。わかった。ローリエはすぐ目と鼻先だ。先に行っててくれ」
そう、ジェームスは周りの騎士に声をかけ、セイラを切り離し収束をしようとしていた。
「そうは、いかないだろう?」
黒い馬に乗ったその騎士は、周りの騎乗している騎士たちをかき分け、彼女の前へ進み出て来た。
鋼の鎧に、白いマントを身を包み、その心臓の上に薔薇の紋章が刻まれている。
青年と言っていい、明朗快活を表す様な微笑を浮かべ淡い瞳で、セイラとジェームスの前までやって来て、彼らを見下ろし確認している。
「セルジオス様!」
その声とともに、セイラは彼に駆け寄ろうとする。
しかしその事に気付いたジェームスが、慌てて彼女の肩を掴まえた。
だが、その手さえも、すぐ彼女は払いのけようとする。
「何をなさるの!?」
「その声は……、セオラ女神教団のセイラ様では? 俺たちは聖女の噂を聞いてやって来た。妹君の方まで見つけられるとは、運がいい」
そう言うと王子は鐙に足をかけ馬から降り、セイラの元へやってくる。
その時、幾つかの剣が鞘に収まる音を聞き、セイラは血の気が引く思いを味わった。
けれど、セイラを疑うようなその視線は、尚も騎士から消えないようで、多くの騎士が馬から降り、危険人物である彼女の少し遠い場所から捉えようとしている。
そのため、一挙手一投足を、気を付け、意識することとなった。下手な動きをすれば、今度こそ剣先が自分に向かう。
セイラは生きた心地がしない修羅場に立っていた。
二週間ほど前に、王子が王都を発ったと聞いた時には、夢のようであり、安堵した思いが思い出されより一層惨めだった。。
その時も、「付け焼刃では、すぐにばれますから」二人の男女に最低の食事で、監禁されてすぐに不幸な思い出となったが。
「嬢ちゃん聞かれてるぜぇ」
後ろで、ジェームスと呼ばれていた男の声がした。
――聞いてたの? 私はあの、聖女セイラなのかーよ? お嬢ちゃんって何よ!?
セイラは振り向き、彼を思いっきり睨みつけた。
しかし、彼は振り向きざまは、目を見張り驚いていたが、すぐに頭を掻く。
「俺が言っているのは、セルジオス殿下の事なんだかな……」
困り果て、どしたもんかと考えいる声色だった。
――知っているわよ!?
ふつふつと、腹が立つ。こんなに怒りが沸いたのはさっきぶりだが、怒りに上限が無い事を知る事が出来ていた。
――なんて厄日なの!?……。
「どうした? セイラ嬢、ジェームスが気に障ったか?」
可笑しそうにそう言う王子と、狼狽えるジェームス
「えっ、いえ、そんな事は……」
けれど、ジェームスを見るセイラの瞳は厳しい。
「いえ、そんな事はございません。彼に少々、病の兆候があったので……」
楽し気に自身を見つめる王子へ、セイラはカーテシーするのだが、心の中では嘆きにくれていた。
「マジでか……?」
ジェームス、中肉中背の成人過ぎて何年も経つ、彼は慌てふためき、ちゃんと診断をして欲しいのかこちらを見ている様が滑稽で、思わず涼しい顔でセイラは彼を見ていた。
「うーん、それは困っだ。後で、治療してあげてほしい」
「はい、セルジオス様のお言葉なら、容易い御用でございます」
そう礼儀正しくセイラは返した。
その受け答えに、一部の騎士の目が変わった事に気付きく。
彼女はその騎士を目ざとく見つけ、確認する。
――負けるものですか。
奥歯を悔い閉め、笑顔を作りながらそう考えた。
「それで、君はなでここにいるのかな? もしや誰かに」
セルジオス殿下、眉間に少々の皺を作り、口ごもった。
「その前に、ここはどこなのでしょうか……。自宅で、名前を呼ばれ気が付くと、馬車に揺られていました。この近くの小屋に閉じ込められていたのですが、やっと隙をみて逃げだした事しか話せる事は……」
セイラは苦々しい思いで、それを語る。
本当に、横柄で、忌々しいと思う二人だったので、自然と会話に熱がこもってきていた。
「それでは姉君は、見なかったのか?」
「フェリーネですか? 彼女はここで見つかったのですか?」
「いや、北部の辺境の地に聖女が居るという、噂があった。俺たちはその確認にやって来ただけだ」
「それが、居なくなったフェリーネだという事ですね。うーん、私は小屋に閉じ込められていましたので、誰が尋ねて来たのかまでは……。訪ねてくる者は居たかもしれませんがわかりません」
考えているセイラを何人もの騎士が取り囲んでいたが、すでに何人もの騎士が顔色を悪くしてうつむいている。
――気付くのが遅いのよ。
「では、ジェームス副団長、君が彼女をローリエへとエスコートしてくれないか? 俺は小屋の方を見て来る」
「俺が行きましょうか? それか、団長に任せてくださいよ。その方がこのお嬢ちゃんも喜ぶでしょうし……」
ジェームスは彼女を、やや覗き込む様に見て言った。
セイラも王子の前では、微笑みを浮かべるが、とんでもないわと思っていた。けれど、ジェームスは他の騎士よりはマシ程度だが……、まぁいいわ。という認識はある。
「そんな……、私は……」
手で顔を隠し、できるだけ控えめな様子で声をだす。
「俺もエスコトートしたい気持ちは山々だが、聖女の失踪については俺が仕切る事になっている。見ての通り彼は有能な男だ。俺もジェームスに任せられるどうかな?」
セルジオス殿下は十分、自身の為に折れている。これ以上は不敬に問われかねない。セイラは素早くそう判断し、彼の意見にそうよう言葉を考えなければと頭をひねり考える。
「そうなのですか? お手間をお掛けしてすみません。では、ジェームス副団長、宜しくお願い致します」
そう彼女は、彼にカーテシーをする。
「へぇー、優雅なもんだ」
――うるさい!?
そう、心の中で彼に怒りをぶつけ、笑顔でうふふと笑うのだ。
感情起伏の激しい母と、暮らして来たのだからお手のものだった。
「じゃー、前を御乗りください。お嬢さん」
そうジェームスが言った時、さすがにうっ!? と顔に出た。
「なぁーに、不心得な事はしないさ」
そうジェームスが言うので、王子が居なくなった事を確認したのち、「はぁ……、そうなの? じゃーお願い」と、彼だけに聞こえる様な声で言うのだった。
続く
気付けば6000文字だったので、半分に割りました。後編、同日の11時に投稿になってます。半端な文字なので(しかし6000文字は流石に長いかな? となりました)




