表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
3:母の故郷ローリエにて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/62

57:喧騒のローリエ城での会議

 ローリエの小暑しょうしょの喧騒で、フェリーネは途中でマルティーに連れられ退席する事になってしまった。


「私の事なのにいいんですか?」

「あぁ、いいんですよ。カリオス様の言葉、『破棄しても構わない』その言葉は男女の仲を深める際には不適当で、それでみんなの怒りを買っているんですから」


「けれど、カリオス様は私が誘拐犯になってしまった責任をとって……」


 そこまで言って、フェリーネも自信が無くなり、下を向いてしまった。


「えっ……っと、すみません。カリオスが……、ってフェリーネもわかってますよね? とにかく、僕の言える事は、おふたりは話合ってください。それくらいでしょうか……僕には口出しできません」


「そうですよね。わかりました。少しでも納得いくように、そうしてみます」


「あ……、納得じゃ……ないんだよな……、それでもお願いします。彼の事を」

 そう言うと、彼は月明りの廊下を、肩を落とし歩いていった。


 彼女は扉のノブに手をかけようとしたが、急に振り向き、窓から落ちる月明りを踏み、窓のすぐ下の壁へと手を掛けた。


 それは少しだけ冷たく、心地いい。

 暗闇の庭を照らす炎の中に、ガゼボが浮かびあがっている様子を二階から眺めている。


 ――ミリアと二人の暮らしに、カリオスが入る。


 そう考えた時、彼女はその壁を持ったまま腰を下ろした。

 目の前に見えるのは白い壁、そしてその壁を背に、足をのばして座り込む。


 きっと、今と変わらない生活になるようにな気はする。

 そう思ったところで、カリオスを受け入れいる自身に気づく。


 ――でも、カリオスは、……。

 いつもはそこで諦める思いもあった。

 けれども、今回は彼の言い出した事、『この地の女性との結構はもう……望んでいないのですか?』


 それの事についてもちゃんと聞かなくちゃ、あー……、なんで!?


 つまり、やっぱり、カリオス様のことが……? 


 こんな時に、こんな時だから?


 ――考えなきゃ……。

 フェリーネを膝を抱えるのだった。


 ――まだ、着替えてないから、汚してしまうのにな……。

 って、駄目! お風呂へ入って寝ましょう。


 明日も仕事があるのですから。


 彼女は立ちあがり、扉のノブへ手をかける。


「あぁ……、もうっ」


 フェリーネを赤い顔を片手で隠した。



 そしてゆっくり唇を、右手で拭う様に手を取り払うと……。

 曲げた指の第一関節部分に、頬紅が一直線にぼやけた線を残していた。


 そして彼女は、小さなため息をつくと、扉の中へと消えいく。



 ◇◇◇



「どういう事だ! この若造、順番というものを知らないのか!!」


 フェリーネ欠いたダイニングルームでは、彼女の祖父の罵声が響いた。


 マーク団長も、色恋沙汰の進行はせずに見ていたが、さすがに年老いたダリム卿のお体に差し障るだろうと、仲裁に入る。


「ダリム卿、御年齢を考え、それこままでにしてください。せっかくお孫さんと会えたのですから……」


「だが、あの子には、苦労はさせたくないのだ。それをこの男が……」


 憎々し気に、孫の身を案ずる祖父はカリオスを見ている。


 ――藪蛇だっただろうか? 


「私でも、遠征に参りますし、ダリム様が望む相手となると、それぞれリスクはありましょう」


「だが、カリオスはその中で、一番、重き枷につながっている。その状態で、なぜ孫娘にプロポーズをするのか? それが理解出来ぬのだ」


 優雅な、オリビア様までたいそう不機嫌な顔だ。

 なぜ、今か? カリオスと言えば、フェリーネに対し責任を負う為だろうが……。戦略がなってないというか……。 


 ――カリオスは案外、正直物のあほうなのか?


 マーク団長は腕を組み、この状況を観察している。


「だが、王室まで知れる所となった。


 そうすればローリエ卿は、卿の今まで経験則で、王と交渉し角の立たない方向でまとめるだろう。


 その方法では今までと変わらないと、俺は言っているんだ。


 今度は、セイラの結婚を気に、もっと悪い状態になるだろう。


 セオラ・ノーブルを守るため、北の境界線を守るローリエはいいだろうが、俺の領地はまだ小さい。解散されることも大いにあるだろう。


 それをフェリーネは良しとしないだろう。結局、この状態に行き着くぞ」


「そうであるからフェリーネと婚約し、カリオスが前にでると? 貴方はその場に相応しくありませんよ。貴方はイクリオンにも、王室にも良くない因縁があるじゃないですか? 一番、この場を仕切るべきは……」


 マークはオリビアを見る。

 今までカリオスを睨みつけていたオリビアは、にやりと笑う。


「そうだろうとも、だからこの場に、我がシオン様は居ないのだ」


「この状況だから言うが、シオン卿が全てを搔っ攫う簒奪者になりはしないか?」

「ローリエ卿、お言葉が過ぎますぞ!」


 そう机を叩く勢いで、オリビアが異を唱える。


「落ち着いてください、オリビア様……」


「貴女の御怒りになる気持ちはわかります。しかし、こちらも情報は手に入る。恋や愛越えてシオン様に忠誠を誓う気持ちは立派ですが、だからこそ、こちら側も勘ぐらざるおえないのです」


「何が言いたい?」

 今度はオリビアは、マークに厳しい表情を向ける。


 その時、扉を開けてマルティーは入って来た。

「はぁ……、これって話が進んでいる状態ですか?」


「進んではいるよ? まぁーその前に壊そうとしてる」

「ああ」

「この状態では、会議とは言わん」

「つるし上げだろう。こんなの」


 彼女は、吐き捨てるように言った。


「熱い場面を見逃したようですね。とりあえずマーク団長、壊すのは止めてください。壊すだけ壊し、忙しいから介入できない、ってなるじゃないですかー」


「その為の仲裁役の君じゃないか」

 マークは腕と足を組み、ご機嫌でマルティーにそう返す。


 ――彼は雰囲気を変える。それならば、なんとかなるだろう。

 そうマークは踏んでいる。


「やっ、こっも忙しいんで」

 そう言うと彼は胡散臭そうに、こちらを見て来る。


 ――カリオスは、自身の弱点を補う人物を良く見つけたものだ。

 フェリーネもたぶん、すぐカリオスの世話を焼くようになるだろう。


 ――まぁ、敵としてはやりずらいな。


「では、マルティー君の意見を取り入れよ。


 私としてはシオン卿の先見の際を気に入っているし、子どもの頃の誓いを貫きオリビア様と、結婚して貰いたいと思っています。


 まぁ、こちらのカリオスも面倒くさいくらい抜け目がないし、ローリエ卿はご子息もちゃんとしている方だ。


 それぞれの取り分を、分け合えばうまくいくはずだ。私は貧乏くじを引かされそうだが、公僕なのでそれを甘んじて受け入れよう。


 そこでだ。カリオスはやはり、今はローリエ卿の言う通り、控えていてくれ。シオン卿が舞台に立ってくれないならば、出ていい、暴れてくれ、一掃も構わない。


 フェリーネへのへたくそなプロピーズを、彼女が好めば、仕方ないんじゃないか……。と私は思う。


 これで満足してくれないだろうか?」


「この男を……」

 そうローリエ卿は言ったが、それがご自分の選択で、あった時も必ずあるはずだ。


「オリビアさん、シオン様の婚約者だったのですか?」

「昔の話だ」

「そうなのか……」


 そうマルティーは言い、オリビア様を煙に巻いているし……。


「マーク団長、今日は助かった。そしてすまなかった……」

「俺に負けて泣けばいいんですよ。では、マルティー君ー!」


 マーク団長はカリオスの話を遮るように、話を終わらせる。

 そして彼は席を立ち、フェリーネの祖父のもとへと行ったようだ。



 続く



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ