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辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
3:母の故郷ローリエにて

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51:お茶を致しましょうか? 1/2

 フェリーネとマークは、正面玄関のホールにて受付を済ませる。


「地図のこの印の場所に、係の者がおります。まわりにウェイターや、メイドが居ないようでしたらこちらへ」


 そう、きっちりと背広を着こんだ、若い家令がにっこり笑う。


「ありがとう」

「ありがとうごまします」


「マーク団長、フェリーネお嬢様、どうぞお茶会をお楽しみください」


 そう言うと、先祖代々家令を務めあげている彼は、にっこりとほほ笑むのだった。


 そして玄関を出ようとすると、「お嬢様!?」そう慌てたのよう侍女たちがやって来て、ソファへと座らされた。


 そしてフェリーネの頭に色鮮やかな鳥の羽がついた、白い帽子をかぶせ、首元に大きな白いリボンを結ぶ。


「素敵ですわ。お嬢様」

「なんてお可愛らしい……」


「本当だ。凄く可愛らしい。白いベールよりも数倍はいいよ」


 そう目の前に紅茶を置かれ、待たされていた彼が言うので、フェリーネは彼の顔を不思議そうに見た。


「あぁ……」

 手は、彼女の口もとへと無意識に動く。その手を体を滑り込ませて来た、彼に止められる。


 ――あっ、お化粧……。


「ありがとうございます……。あの……、マーク団長は私の顔をご存じだったのですね……」


 最近はベールをしていなかったので、ベールの事は失念していた彼女は聞く。


「君は木に登っていたからね」


 フェリーネは「えぇ……」と、悲鳴のような声をあげ、今度は彼に両手を掴まれた。その手は大きく、痛くない程度の力の加減。


 ◇◇◇


 ――あの……。


 魔物討伐の為の進行、血の匂いの取れない日々で、


 ――ううん、私は散歩をしていただけだった。


 空は青くとても平和そうだったから……、その日々から逃げるように歩いていた。


 安全と言われるローリエ側の、まだ僅かにある草原を歩いていた。


 そこは多分、ローリエから今なら二日目のほどの場所。

 しかし……、あの頃は、気の滅入るような……。


 そして歩いたその地には、木の実がなっていた。

 それは教会の裏庭にも植えらていて、食べれる事は知ってた。


 オレンジ色というのだろうか? そんな色、その軸のヘタは星の光る形のようになっている。林檎の様に剥けば食べられる。


 そんな果実。


 ――気晴らしで食べてみたい。


 そう思い修道着を脱いで、ベールをポケットへ入てて登っていき、鈴なりの果実その実の一つをもぎった。


「早く、降りてくるんだ!」


 そこにはお髭のマーク団長がいた。


 慌てて、ベールをかぶろうとして、ベールは飛んでいくし、最悪。


 それをマーク団長だ掴むし、最悪。


 逃げることも出来ない。そう思った。


 そして彼女は、彼の前に立つ。


「君はローリエの民なのか?」

「えぇ……、聖女様のお世話をするために来ました」


 修道院でも使っている嘘で、スルリとその言葉は出た。


「はぁ……」

 彼はそれを聞いて、明らかに気落ちしたようだった。


「女性が、一人でこんな場所に居ては駄目だ。我が隊も、ローリエの私軍の騎士も、明日とも知れない命の前で、すべての騎士が聖人君子ではいられない。わかったね?」


 フェリーネは言葉も出ずに、何度もうなずいた。

 腰が……抜ける思いだった。


 そんな彼女を、マーク団長は手を引いてあるいた。

 その途中に、「その果実は、この地方では苦いんだ。干すなどしなければ決して食べられないよ」そう気落ちするような事をいう。


 そして……、私たちのテントに着くと、「あの時、私が気付いたから良かった。けれど、もう、一人では歩いては駄目だ」何度も念押しをされた。


 自暴自棄の自分が、居なかったわけではない。

 けれど、そこまで自分がどうでもいいとは思えなかったのだろう。その日は食欲がないぐらい落ち込み。


 そしてもぎった、果実は苦くて食べれなかった。


 しばらく戒めに置いていたが、いつしかそれも知らない内にどこかへ行ってしまった。 たぶん捨てられたのだろうと思う。


 ◇◇◇


 そして、フェリーネだけが正確に知っていると思った思い出を、ちゃんと理解していたマーク団長は今、フェリーネの前で話していた。


「いつも、清廉潔白なのに、どこか危うい所がある子だと思っていたが、今度は会った事もないカリオスを頼ったのかい?」


「だって、助けは来なかったですから……」

 彼女は、彼の顔を見ず玄関の外へと歩きだす。



 足元には、煉瓦で作られた丸い地面の道が、点々と続く。そのまわりに青々とした芝生が広がっている。


 綺麗に刈り込まれた生垣と、様々趣向の花壇がそれぞれの趣向に分けた世界を隔てるようだった。


 あの荒野を思えば、夢の様な世界、あの荒野のできごとを越えて守られた世界だった。


「では、いらっしゃっている皆さんに挨拶に行こうか?」



 フェリーネは夢を見ている様に、マーク団長の顔を見た。


「いえ、まず、祖父の考えと、私の考えの違いについて話していもいいでしょうか?」


「貴女は、いつもそうやって必死なんですね」


 マーク団長は目を細め、柔らかな笑顔をする。

 それにくらべ、フェリーネの表情はかたいまま。


 ――団長の考えの底がわからない。彼は笑顔だが、彼の言葉の端々でそうであると告げているようで……。


 そしてフェリーネに対する態度は、思慮の浅い新しい騎士に向けているようで、出し抜く相手なら不都合な相手である事このうえない。


「勝手を言ってるのはわかります。すみません」

「いえ……では、あそこへ座りましょう」


 影絵の様な形状の鉄の柵、その全体に淡いピンクの薔薇と蔓が絡みつき、薔薇が咲き誇る。


 その向こうに、テーブルが隠れているのが見える。


 ――あれは……。

 薔薇の咲き誇る鉄の柵は、セリファスの庭にあったものと似ていて。心にわだかまりが渦巻いた。


「大丈夫ですか?」

「えっ? 、あ……大丈夫ですよ。ああいう場所に、自分が座れるとは、思っていなかったので」


「私もです。どうせ、これは朝起きれば覚めるようなものです。そう思い、おもいっきり楽しみましょうか」


 以前から彼女を知る彼の言葉は、自身の心を見透かしているよう。けれどで、顔なじみだから落ち着けもする。


 そしてマーク団長は、右手を前に出し彼女を誘導する。

 その時、僅かに背中に触れた。


 そしてフェリーネは少し恥ずかしいと思った。触れられて少し恥ずかしい。


 ――そんな場合ではないのに。

 そうも思った。


 続く




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