表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
3:母の故郷ローリエにて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/58

50:王国辺境騎士団のトップ

 修道院での生活のなかで、フェリーネは患者である貴族の方々に失礼のない様に、一通りの事は覚え込まされていた。


 その日、いつもと違う時間帯に、修道着ではない格好でと指定され、癒しの間へと呼び出される。


 そして出向いた彼女が扉を開けると、いつも中央に置かれているベッド、そしてまわりテーブル。


 それらが端へと追いやられ、広いスペースが作られ、いつもは、ちらっと程度の見える正方形の床板の何枚かが見えていた。


 そこにセイラともう一人、手と足がとても長く、スラっとした体形の燕尾服姿の男性が待っていた。


 ――この状況はなんでしょうか?


「よろしくお願いします」

 フェリーネの考えの結論が出る前に、セイラが挨拶をする。 


「お待たせしてしまってすみません。フェリーネと言います。よろしくお願いします」


 そう挨拶し、盗み見るように、二人を見た。


 ――これから一体、何が始まるの?


「貴女が、ダンスを踊りたい友だち?」


 先生だろうその人は、フェリーネに向かってそう言う。

 よく見ると背の高い先生の後ろ、上座の方向に腕組む継母がいて、こちらを睨んでいる。


 その表情からは、怒りしか読み取れない。


「はい……凄く習いたくて……無理を言いました」から


 ――その私は、いったい何を言ったのだろう? 


 彼女の言葉を受け、先生も気持ちや、これからのどうすべきかか、本人の気持ちを知るのが一番と言うように、私の顔をのぞき込む。


 ――なんと言われてもきっと「はい」と答えるのが正しいのでしょうね。


 そう考え先生の返事を待つ。


「まぁ、いいわ。私はフベナル。時間がない事だし始めましょう」


「はい!」

 凄く、ダンスをしたいらしいフェリーネは、元気にそうに答える。


「できたら、長いスカートであれば、足運びの練習になるのでしょうけど。いいわ、そのチュニックで。ベールは私を見るために不要よ。靴は手に入らないだろうから、こっちで用意したわ」


「…………」

 フェリーネは目を瞬かせる。男性の前でベールをとったのはいつぶりかしらと。


 だが凄くダンスをしたくて仕方ないらしいので、ベールはすぐに取り、靴を履き替えた。


 継母の方の事は、もう見る事はなかった。




 そして夢中にダンスをしていた。




 しかし、運が悪さは続くようで、その練習が終わる事がないのだ。

 試験前の付け焼き刃として、その日の内に覚えしまいたい。そう言いたいかの様で、思わず頭をひねる。


 そして休憩をとるが、いつもの治療の時間になりましても、その時間が終了する時間になっても、踊りの練習は、終わる事はなく続いたのだった。


 その間に継母はいつの間にか消えていて、食事は珍しくセイラと一緒に、軽いものを食べる。


 先生はそんな休憩の間は、ダンスの講習を行い、授業続く事になる。


 黄昏時をとうに越え、足の指が痛く、何度かのかかと靴擦れを治療と考えた時――。


 ――私は、何をやっているのかしら?


 熱意のこもっていた、先生の瞳の輝きがふと緩む。


「聖女の力は凄いわ。こんなにも練習出来なんて……」

「そうですね……。凄いわ」


 そう、ダンスがしたい友だちの立場をフェリーネは貫いた。

「でも、今日はここまでね。さすがに疲れたわ。自主学習を忘れちゃダメよ」

「そうなのですか……、残念です」

 そう、フェリーネが言った時、『調子に乗らないでよ!?』と言いたげなセイラに睨まれる。


 そしてダンスの先生は、帰って行く。

 そしてフェリーネは再び、セイラに睨まれたのだが、彼女も限界だったのだろう。よろよろしながら帰って行った。


 そして教会の空き地で、宿題を行い次に備えた。


 ――ここまでやれば、先生に褒められる事もあるのだろう。

 そう、思えるほどは、フェリーネも几帳面に頑張った。


 しかし、ワルツのマスターした加減で、採点を決めるようで、決して時々やって来る先生に褒められる事はなかった。


「アヒルの足が出てるわよ!」

「アヒル! アヒル!」


 そう『みにくいアヒルの子』のアヒルをなぞらえて、彼は注意をする。


 そして来ないと思っていた、最終日は来たようだ。

 フェリーネの踊りを一通りみると、彼は静か語りだす。


「アヒル、あんたは頭が石頭だから、誰かの手を借りなきゃ駄目よ。わかんないだろうと思うから言うけど『ちゃんと恋しなさい』相手の事を思って心を込めて踊るのよ! それが駄目ならうちに来なさい。真面目な子はよく働くから歓迎よ!」と、言って去っていった。


 そしてフェリーネ、架空のフェリーネが定めた合格ラインまで来たようだ。それで感動する事はなかった。


 しかしその踊りは、日にちを定めて、フェリーネだけで練習は続けられていた。


 ◇◇◇


 そしてやっぱりアヒルは、今日、ローリエの中庭でこっそりダンスは練習していた。


 アヒルは、やっぱりアヒル。上手く踊れないけれど、ただ、ただ一生懸命踊るのだった。


 ◇◇


 そしてローリエの御庭で、今日がお茶会が開催される日となっていた。


 今までにフェリーネのダンスパートナーである、マーク団長から承諾を得ていた。


 それから数日待って気を抜いた頃合いに、彼がフェリーネを掴まえに来る事も無かった。


 そして今回のフェリーネの衣装は、商売上手の仕立て屋のお針子たちが、フェリーネのサイズ、好みを把握してからローリエの祖父母に商売をかけ、誕生した聖女のため衣装のドレスだった。


 フェーリネは着替えると、鏡の中のひざを見ていた。


 ――膝小僧がでている。


 両手でひざを少しさすると、小さくため息をはく。


 しかしうすいベールと同じ生地がひざを覆い、そこにも刺繍がされている。

 長く見つめていれば、美しさにうっとりとしてしまうのだった。


「これってなんて読むの?」


 着替え終わったミリアは、ソファに隣に座り、本を読みフェリーネに声を掛けて来ていた。


「雄鶏よ。月は雄鶏が鳴いた時、空の彼方へ逃げていく」

「ああ、あのうるさい子ねー。でも、なんで、朝一番にあの子は鳴くの?」


 首を曲げ、ミリアは聞いてくる。


 黄色のエプロンドレスを着ている彼女を、フェリーネ見つめた。


 顔の横に編まれた三つ編みが、彼女の動きと共にぴょんぴょん跳ねあがっていく。


「雄鶏って、いつも鳴いていないかしら?」

「そうだったかな? うーん……、ところでまだ?」


「どうかしら」

「そろそろ時間ですよ」


 今日はミリアの警護に当たるという、白き騎士となったオリビアがそう答えた。


「では……、カリオス……様も、マルティー様の準備も終わった頃ね」


 マルティー、彼はローレルの私兵と組むようだ。

 そして不審者が居ないか、その視力を活かして監視するそうだ。


 ◇◇


 彼は最近、カリオスと共に、ローリエの私兵、王国側、両騎士団ともに行動をともにしている。


 そして今日の朝はその事についての愚痴を言って、ミリアに慰められていた。


 マルティーは、いいお兄さんなのだけど、貴族の末っ子として、末っ子体質が強い。


 もしかして時には、ミリアの方がしっかりしている部分も、あるのかもしれない。


「相棒が屈強過ぎて……。彼の役目は僕を監視する事ですよ、きっと! 部外者ですからね」


「では、俺と変わるか?」

「僕にカリオス ライストファー役は重すぎますよ。その属性てんこ盛りが、半分になれば考えるところですかね」


 そう言って、カリオスを落胆させていた。


 肘を机につき、そこの顔を乗せて、マルティーをただ眺める彼と、その後の自由気ままにしゃべるマルティー。


 フェリーネを珍しいものを見てしまっていた様に思うし、オリビアは笑いをこらえきれない様子。そしてミリアは嘆くマルティーの方を慰めていた。


 ◇◇


 その時、コンコンと、三人が寝泊まりする部屋に、ノックの音が響いた。


「王国騎士団、マーク団長がおいでになりました」

「はーい」と言って、鏡の前から扉へと歩きだす。

 だが、そこでオリビアで制しされる。



「ミリア行きましょう」

「はい。よろしくお願いします」


 持ち手まで、ハートの形の黄色のバック。

 レースがふんだんに使われている。そんなバックを持って、ミリアがトコトコとやってくる。


「失礼します……」


 ミリアを先に出し、その後オリビアが扉から出た。マーク団長、彼の不審な行動はないか、目に見えて牽制していく。


 その後、出て来るフェリーネと、騎士団服に勲章を金属をさせているマーク団長と同じ距離を保ち、離れて様子をみている。


 それが終わり、すぐ捕される事はないだろうと安心できた。



「……マーク団長、お久しぶりです。以前はお世話になりました」


 そう言い、彼が振り返ると、お髭がない!?

 顔の下半分が覆われていたのに! 

 ブラウンの髪は短く、襟元は刈り込まれている。


「どうされたのですか!? 凄い、綺麗になってしまって……」


「ローリエ卿からのパートナーの手紙が届いた日に、床屋へ行き髭も思いっきりよく剃って貰いました」


「そうなんですか? それのばしていたのですよね? 申し訳ない事をしました……」


「いやいや、忙しかったから剃らなかっただけです」


 そう聞くと、いきなりフェリーネは厳しい顔をして、彼の体中を探るように見る。

 それも彼のまわりを一周まわって。


「今は健康です。良かった……」

「あの時は、寝る間もありませんでしたからね」


 彼は照れる様に頭をかく。

 そう少しほりの深い顔に赤みの強いブラウンの瞳で、彼女に笑いかけた。



 優しいくまさんという印象から、彫の深い優しい顔だちくまさんという印象に変わっている。


「教会に来てくださらなかったので、心配しておりましたが本当に良かったです」


「相変わらずですね。ですが、そろそろお茶にするのはいい時間でしょう。行きましょうか」


 そう言われ、フェリーネはお茶会の事を思い出す。


「あの待ってください! 改めて仲間を紹介してもいいでしょうか?」

「是非、お願いします」

 そう言うと後ろを振り返ると、ミリアを先頭に、ふたりが彼の前へと立つ。


「ミリアです。よろしくお願いします」

「ああ、よろしくミリアちゃん。噂は兼がね。お強いとも聞きますよ」

 手を膝に、ぺこっと頭を下げる。下げた背中からイエローのリボンの結ばれた、長い猫のしっぽが顔をだす。


 ――可愛いい。


 フェリーネは、ミリアが自分の真似っこしている事に気付き、胸元で手を組み感動していた。



 その彼女の表情を見て、マークの表情が緩んだ事に気付いたのはオリビアだけ。


「ハークエル領の騎士、オリビアだ。今は、縁あってフェリーネ様とミリアの護衛をしている」


「シオン卿は、フェリーネ様の事をご存じなのですね」


「あぁ、今回の一件の真実も知っている。フェリーネ様に求婚している立場から考え、舞台が整えば、シオン様自ら王に進言なさるだろう」


 ――やはり、ここでも立場の争いが……。


「そうですか。貴方がたの立場はわかりました。ですが、本当にこのままでは遅刻してしまいますよ」


「あら、大変ですね。急がなければ……」

「ですね」

 そう相槌を打つと、彼女に向かって、手を腰に据えた。

 ――これは早いのでは?


「信頼を得るためです」


 そう言って彼は彼女に笑いかける。

 そつのない彼の事だ。フェリーネは計画に乗った。


 殿方にされる素敵なエスコート。

 しかし、彼女にとっては魔物討伐の際、手を組んだ仲間の将、出陣気分で気分が盛り上がるのも、仕方のないことないことかもしれません。


 続く



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ