48:かがり火の焚かれた中庭で 1/2
廊下でのカリオスとの話をすませ、彼女はオリビア、ミリアと暮らす部屋へと飛び込み、扉を背にする。
胸に手をやれば、心臓は早く! 早く! と、脈を刻んでいる。
そして部屋の中を見回せば、オリビアが剣の入った鞘を、膝の上に置のせ見つめていた。それを見つめる事で、フェリーネのプライベートへ立ち入らないようしているように。
けれど、彼女はフェリーネを感じ取り、こちらへと視線を合わせる。
「中庭へ行かれるのですか?」
「そうです。ミリアも馴染みのない地で不安でしょうから、できたら見てて貰う事はできますか?」
ミリアはこの地でも、剣術の訓練をしていた。
それが終われば、彼女と同じ獣人の侍女ともに、城を散策していたそうだ。
そこで、何を話しただろう? 故郷の事を話したのだろうか?
彼女が話さないので、フェリーネもそれに対し聞く事はない。
それが終われば書庫へ行き、剣術の本を読んだそうだ。
一冊を借りて来て、食事の時間以外、時には、声に出して読みあげなら読んでいる。
そして、時々彼女からの質問を、『答えられた……』と、胸を撫でおろしなが返事をし終えていた。
そうしてミリアは気づくと、寝てしまっていた。
今日、めいっぱい頑張っただろう彼女。
だから、たぶん起きる事はないだろうけど……。
「いえ、一緒に参ります」
「そうですか、では、誰かに声をかけていきましょうか」
フェリーネはいつも着ていた、着古したコートを、クローゼットから取り出し羽織る。
「何故、断らないのですか? ついて来ないでと」
「え……っと、断って欲しいですか?」
自分のすぐ後ろで、オリビアの声がした。
その声は切なげで、思いつめているようで、フェリーネの胸まで、なんだか切なくなってくる。
「いえ、そんな事はないですけど」
オリビアは自分を持て余すようにそう言うのだった。
そしてフェリーネの視線から――。
その瞳は逃げた。
「焦る必要はないですよ。貴女なりの答えをまず出すべきです」
フェリーネは、わかった風なことを言っている。
領地の中で、すべてが真実であった日々とここは違うのだろう。
場所、人の見方が変われば、思わぬ真実が出て来る。
聖女の働きと同じ、一人の殺人鬼を生かせば、他の無実な人間が多く死ぬ。
けれど、生かさないわけにいかなくなる。
それを誰かが止めなくちゃ。
まぁ、それは比喩なのだけれど、思いがけず人が見たくない真実と向き合い。
自分の進む方向を、定めねばならない時が来る。
シオンの治めるハークエル。
そのすべての正当性が保てなくて、身動きが取れなくなってしまっているのだろうか?
それもフェリーネの想像でしかない。
そんな時、聖女はわかった風な事を言って、相手の心をかき回す。
それで答えを見つけ出すのは、悩んでいる本人だし、フェリーネはいつも口にだすだけ、何にもしてない。
けれど――。
「だが……、やはり、ついて行かせてくれ。このまま見守っているだけでは、自分にも疑問が残りそうだ」
そうやって彼らは、自分の足で動き出す。不思議だ。
言葉で、誘導する技術なんてなくとも、勝手に復活して進んで行くんじゃないかしら?
そしてオリビアは自分で決め、行くと言った。
その決定は、実は、フェリーネの望む答えではなかった。
しかし、聖女という商売柄仕方ない。
二人より、三人で考えた方が良い考えが浮かぶ……のだろうか?
カリオスも、オリビアも人の生活を守る番人みたい人。
自己犠牲の方向に、行っちゃわないかなーっとフェリーネは思っている。
――仕方ない。そこは私がしっかりしなきゃ。
フェリーネは、ミリアの布団をかけ直し、オリビアと一緒に部屋を出た。
廊下から中庭を覗くと、暗闇の中に庭番が用意してくれた箱。
その中で燃え盛る炎が、ガゼボ立つ、二つの人影を照らし出している。
「カリオスはどうやら、先に行ったようですね」
「彼は、エスコートをいうもの知らないのか?!」
そう、オリビアはもう彼に向かって怒っている。
「結局、カリオス、彼もオリビアの性格をよく知っているという事でしょうか」
そう、少し意地悪く、フェリーネはオリビアに向かって言った。
「なっ、…………、すまない。行こう」
そう彼女は言った。
――二人はよく似ている。正直で安全できる。
そう心に秘めて、フェリーネは彼女の後について行く。
◇◇
ガゼボに着くと、彼は箱に入れられた火を見ていた。
炎の中に何が見えるのだろうか? 置いていったものがそこにあるかのようだ。
そういうどこか懐かしさを思い浮かべる顔、そして瞳。
「カリオス……、お待たせしました」
そう言うと、彼はオリビアに驚いた様に固まった。
――あらあらあら。
「やはり彼は、私の事は想定なしだったぞ」と、オリビアの声。
――困りましたね……。そんな事どうでもいいじゃないですか? けれど、そういうわけにはいきませんよね。
カリオスも、オリビアも実は、領地を代表してますし……。
小さな小競り合いの様な、言葉のぶつかり合いは仕方ないでしょう。
続く




