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辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
3:母の故郷ローリエにて

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48/58

48:かがり火の焚かれた中庭で 1/2

 廊下でのカリオスとの話をすませ、彼女はオリビア、ミリアと暮らす部屋へと飛び込み、扉を背にする。


 胸に手をやれば、心臓は早く! 早く! と、脈を刻んでいる。


 そして部屋の中を見回せば、オリビアが剣の入った鞘を、膝の上に置のせ見つめていた。それを見つめる事で、フェリーネのプライベートへ立ち入らないようしているように。


 けれど、彼女はフェリーネを感じ取り、こちらへと視線を合わせる。


「中庭へ行かれるのですか?」


「そうです。ミリアも馴染みのない地で不安でしょうから、できたら見てて貰う事はできますか?」 


 ミリアはこの地でも、剣術の訓練をしていた。

 それが終われば、彼女と同じ獣人の侍女ともに、城を散策していたそうだ。


 そこで、何を話しただろう? 故郷の事を話したのだろうか? 

 彼女が話さないので、フェリーネもそれに対し聞く事はない。


 それが終われば書庫へ行き、剣術の本を読んだそうだ。

 一冊を借りて来て、食事の時間以外、時には、声に出して読みあげなら読んでいる。


 そして、時々彼女からの質問を、『答えられた……』と、胸を撫でおろしなが返事をし終えていた。


 そうしてミリアは気づくと、寝てしまっていた。


 今日、めいっぱい頑張っただろう彼女。



 だから、たぶん起きる事はないだろうけど……。


「いえ、一緒に参ります」

「そうですか、では、誰かに声をかけていきましょうか」


 フェリーネはいつも着ていた、着古したコートを、クローゼットから取り出し羽織る。


「何故、断らないのですか? ついて来ないでと」

「え……っと、断って欲しいですか?」


 自分のすぐ後ろで、オリビアの声がした。


 その声は切なげで、思いつめているようで、フェリーネの胸まで、なんだか切なくなってくる。


「いえ、そんな事はないですけど」


 オリビアは自分を持て余すようにそう言うのだった。


 そしてフェリーネの視線から――。



 その瞳は逃げた。



「焦る必要はないですよ。貴女なりの答えをまず出すべきです」


 フェリーネは、わかった風なことを言っている。


 領地の中で、すべてが真実であった日々とここは違うのだろう。


 場所、人の見方が変われば、思わぬ真実が出て来る。

 聖女の働きと同じ、一人の殺人鬼を生かせば、他の無実な人間が多く死ぬ。

 けれど、生かさないわけにいかなくなる。



 それを誰かが止めなくちゃ。



 まぁ、それは比喩なのだけれど、思いがけず人が見たくない真実と向き合い。

 自分の進む方向を、定めねばならない時が来る。


 シオンの治めるハークエル。

 そのすべての正当性が保てなくて、身動きが取れなくなってしまっているのだろうか? 


 それもフェリーネの想像でしかない。


 そんな時、聖女はわかった風な事を言って、相手の心をかき回す。


 それで答えを見つけ出すのは、悩んでいる本人だし、フェリーネはいつも口にだすだけ、何にもしてない。


 けれど――。


「だが……、やはり、ついて行かせてくれ。このまま見守っているだけでは、自分にも疑問が残りそうだ」


 そうやって彼らは、自分の足で動き出す。不思議だ。

 言葉で、誘導する技術なんてなくとも、勝手に復活して進んで行くんじゃないかしら?



 そしてオリビアは自分で決め、行くと言った。


 その決定は、実は、フェリーネの望む答えではなかった。


 しかし、聖女という商売柄仕方ない。

 二人より、三人で考えた方が良い考えが浮かぶ……のだろうか?


 カリオスも、オリビアも人の生活を守る番人みたい人。


 自己犠牲の方向に、行っちゃわないかなーっとフェリーネは思っている。


 ――仕方ない。そこは私がしっかりしなきゃ。


 フェリーネは、ミリアの布団をかけ直し、オリビアと一緒に部屋を出た。


 廊下から中庭を覗くと、暗闇の中に庭番が用意してくれた箱。

 その中で燃え盛る炎が、ガゼボ立つ、二つの人影を照らし出している。


「カリオスはどうやら、先に行ったようですね」

「彼は、エスコートをいうもの知らないのか?!」


 そう、オリビアはもう彼に向かって怒っている。


「結局、カリオス、彼もオリビアの性格をよく知っているという事でしょうか」

 そう、少し意地悪く、フェリーネはオリビアに向かって言った。


「なっ、…………、すまない。行こう」

 そう彼女は言った。

 ――二人はよく似ている。正直で安全できる。


 そう心に秘めて、フェリーネは彼女の後について行く。


 ◇◇


 ガゼボに着くと、彼は箱に入れられた火を見ていた。

 炎の中に何が見えるのだろうか? 置いていったものがそこにあるかのようだ。


 そういうどこか懐かしさを思い浮かべる顔、そして瞳。


「カリオス……、お待たせしました」


 そう言うと、彼はオリビアに驚いた様に固まった。


 ――あらあらあら。


「やはり彼は、私の事は想定なしだったぞ」と、オリビアの声。


 ――困りましたね……。そんな事どうでもいいじゃないですか? けれど、そういうわけにはいきませんよね。


 カリオスも、オリビアも実は、領地を代表してますし……。

 小さな小競り合いの様な、言葉のぶつかり合いは仕方ないでしょう。


  続く


 

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