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辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
3:母の故郷ローリエにて

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43/62

43:仕立て屋めぐり 2/2

 そして今、彼女は母の実家であるローリエの辺境伯の城にいる。


 大きな扉を門番に開けて貰い、入城してから大きな硝子細工のシャンデリア、魅せるための階段、大きな窓枠から差し込む光に照らされる廊下。


 そこにはさりげなく素晴らしい肖像画や、家具が置かれていて、長年、修道院暮らしだったフェリーネの全ての常識が覆る。


 そして今、待たされている応接室に座れば、豪華そうなソファのクッションに体は沈みこんでいく。ブクブク……。


「わぁー夢みたい」と、フェリーネは思わず感嘆の声を漏らす。


 清廉(せいれん)、質素な教会で育ちで、他の領地で聖女として活動する場合も、領主の城へ行ったことも、数えられるほどはあるけれど。


 しかし今回の訪問は、今までとは別だろう。聖女の仕事は関係ないのだ。凄く賢そうなふりも必要ない


 祖父母の到着はまだのようで、そばにいるのは、辺境の英雄と、侯爵家であるハークエルの領主と行動を共にする女性の騎士、気のいいお兄さんと、可愛い妹がいる。


 そう、仲間と言って差し障りのない間柄。護衛はもちろんいない。


 フェリーネはソファから立ち上がる。

 淡いブルーのイブニングドレスの、裾がさらっと広がる。

 生地は、キラキラとした小さな輝きを零す。


 そして淑女の彼女は、応接室の中を歩き出す。


 頬に触れる髪を、後ろでまとめているリボンは、白地で百合の透かしが入り、彼女の髪で揺れている。


 ◇◇


 彼女たちは仕立て屋のよった後、獣人の為の仕立て屋へも寄っていた。

 そこでは、先に行った仕立て屋とは違い。


 大量の仕立てあがった衣服が、手に取れる高さで数多く吊り下げられていた。


「わぁー服がいっぱいー」

「いらっしゃいませ、小さなお客様。このいっぱいのお衣装、衣装づくりが趣味な私だからできることなのですよ」


 ふふんという感じで、背が高く、眼鏡と帽子をかぶった彼女が言った。


「彼女、鶴の獣人という噂があるのですよ」


 そうマルティーがこっそり言うが、髪は白と黒に明確に分かれている。ので、そうなのかもしれない。


 マルティー、オリビアの二人の護衛に囲まれ「うーん」と、ドレスを選び出したミリア。フェリーネはその様子を確認しながら、常日頃疑問だった、ズボンの尻尾の部分を確認するため見て回っていく。


 今ままでは人用の服に穴を開け、そこに布をつぎ足し、そこへ紐を通す。


 それを尻尾にクルクル巻きつけて、最後をすぐ上のボタンに、紐に作ったボタンホールを留めていたり、リボンを使い尻尾の上に蝶々結びにしたりした。中の見えない工夫をしてきた。


 ――一体どうなっているのかしら?


 そして探索の結果わかったことは――。

 ここでも、昔からあるらしい紐や、リボンで隠す、一般的な方法を使用したものもあれば、プリーツスカートの境目に来るように隠したりしていたりしているようだ。


 そして肝心のズボンは……後ろに切れ目を作り、ウエスト部分を帯で巻きつけしばる物が多くある。


 ほかにも前ボタンではなく、後ろでとめる形の物もあった。


 肝心の尻尾の所は別布を2枚、縦長で折り曲げ、重なる部分を多くゆとりもたせ、尻尾が出しても中身を見えないようにするようだ。


 ――今ままでのものと作り難さはどっちも、どっちだわ。


「おねえちゃん見てみて」


 ミリアの衣裳が決まったようだ。

 パフスリーブのブラウスに、フリルの付いたワイン色のワンピースを着ていた。


 ワンピースの形はエプロンの様で、スカートの生地を持って見せている姿はとても可愛らしい。


 ――私に、絵心があれば……。

 そう思わずにいられない。


「ミリア、可愛い」

「このドレスは尻尾はリボン式なんだよ」


 ――クッ、私が聞く影響が……。


「そのおリボンも可愛いわ」

 エプロンのように、後ろで縛るリボンも、ふわふわで可愛いのであった。


 そして居場所を無くし、窓の外の景色を見つめていたカリオスが、ズカズカとやって来てくる。


「あれを貰おう」

 その横へ、ミリアはありがとうと言いに来たようだ。


 けれどそのレジスターの置かれた場所の、後ろの壁はに多くのリボンが巻かれた状態で色とりどり。


「わぁ……」

 口をちょっとだけ開けていたミリアに、カリオスが目を止めた時から結末はわかっていた。


 そして――。

「これも貰おう」

「ありがとうございます」


 そう笑顔で、言う店員さんの前、カウンターに手のひらに乗せ、顎を乗せていたミリアが、「おねえちゃんたちの分は?」そう聞いたのだ。


「どれがいいんだ?」

 ぶっきらぼうだで、けれど王の血をひく威厳を持つ、カリオスがふりかえる。


 きっと、どの騎士団長にも負けないほどの剣技の技を持ち、端正な顔立ちの彼が次々何か、買い与えようとしてくれる。


 流石に成人に近い、彼女たちは困惑が隠せない。


「いえ、私は……」 

「いや、あの私は」

「お揃いがいい♪」


 そしてミリアの顔を見て、前を見たら、なぜか手遅れだと悟った。

 そして今、透かし入りの白いリボンがミリアと、フェリーネの髪に、オリビアは手に巻き付けている


 ◇



 辺境の魔物を今まで一手に引き受けた領主の城、その応接室は様々な王からの頂き物の数々が並んでいた。


 その一つの前に、カリオスも長い間立っていた。


 他の仲間は誰も何も言わないけれど、ミリアはカリオスのそばに行き、そっと彼の隣に立ち見ていた。


 そして帰ってきて、「表彰状だった」そう彼女は言った。

「そうなんだ」

「うん」


 それだけ言うと、ソファに座る。

 そして用意されたお菓子に手を伸ばし、赤い苺ジャムののったクッキーを食べだした。

 フェリーネもミリアの隣で食べだす。


「マルティー、オリビアもどうぞ美味しいよ」

「あの……カリオス。一緒にいただきませんか? 美味しいですよ」


 そう彼のもとへ行き、声をかけた所で、扉の前で彼女は視線が止まる。

 そしてその表情が凍りついた。


 扉は少しだけ開き、お歳を召された方が、「姫様……」と、フェリーネの方を見て涙ぐんでいたから。


「ミリア……」

 小さな肩に両手をのせる。


「私の事をご存じですか?」


 服装からして、侍女、いえ侍女長、もしかしてフェリーネの母の乳母、婆やの可能性さえあった。


「お顔は見たことはございませんでした。ここは貴女の故郷、お母様は誰からも愛された方なのに、なんてことでしょう……」


 ゆっくり歩いて来る彼女の視線は、短く切られた髪へとそそがれているよう……な気がする。


「母をご存じですか?」


「はい、はい、よく知っております。ヘレナ様の事なら、それこそ赤ちゃんの頃から……、後で、お嬢様の肖像画をお持ちしますね。本当によく似てらっしゃいます」


 そう言うと、ふたたび感極まった様に涙を流す。


 フェリーネとミリアは彼女の元へと向かい、彼女の背中をさする。


「ありがとうございます。楽しみしていますね」

「勿体ないお言葉です」


 そう言うと、彼女の目から止めどなく涙が流れる。


「フェリーネ」

 カリオスは扉から少し離れた場所に、持ってきていた椅子を置く。

 そこへ彼女を誘導している間に、オリビアの持って来てくれた椅子に、三人並び座るのだった。


 続く


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